第23話 候補生試験Ⅲ
巨大な獣を前に優人は笑った。
その思考を少しでも強者の、憧れる最強の思考へと近づけるために、彼の言いそうな言葉を吐いてみた。
慣れない言葉を放ったその顔は凛々しく、勇ましかった。
しかし他の3人は目の前に立ちはだかる鳥獣、グリフィンを前にして怖気付いていた。
だが彼らはその自分の恐怖を押し殺しながらお互いを鼓舞して戦闘態勢へと切り替える。
「良し、みんな! こいつを倒さなきゃ意味がない!!」
「……そうだね、私は除霊と霊力を促進させる魔術でサポートするからその間にお願い!」
「俺が式神を使ってるうちに発動させてくれ!」
シャーマン男はグリフィンから中距離地点で魔法陣を展開させる。
漢字の紋章が浮かび上がった魔法陣は発光すると共に、犬程のサイズのネズミの式神が陣から飛び出し、そのままグリフィンの足元へ行かせて体をよじ登らせた。
前足からメインに登らせて齧らせてはいるが、さほど攻撃の効果は出ていない様子であった。
「じゃあその隙に……」
格闘男はグリフィンがネズミの式神に気を取られている間に奴の元へと駆けて行き、文字通りの『燃える拳』を鳥に叩き込んだ。
こちらも効果はあまり顕著には現れてはいなかった。しかし優人は一瞬も見逃すことはなかった。格闘男の拳で一瞬だけ羽毛の中から見えた肌に、軽い焦げ目が付いていたことを。
「あの魔獣は……炎が弱点だね」
「え?」
優人がそう呟くと突然の考察に横で魔術を発動させていた女は驚いていた。
優人は独り言を呟くようにあのグリフィンの弱点を推測することにした。
「口から吹雪を出してるってのもあるけど、さっきの男の人の攻撃の所……式神の攻撃よりも傷が焦げて目立ってたから──」
(え、それはアドバイス? それとも引っ掛け問題? いずれにしても、仕込み側がわざわざ戦闘に干渉してくるなんて……あっ!!)
「ねぇ君! 鬼火が使えるんだっけ?」
「え? うん、そうだよ」
「じゃあ今お願い! 君が良いと思うタイミングで!!」
「「!?」」
攻撃が上手くいかずに付近でグリフィンを観察していた2人がその一言に驚き振り返った。
女は自分のその推察をテレパシーを用いて2人に打ち明けた。
『さっきみんなで言ってたでしょ? 「仲間と協力して倒す」って。これはそういう試験なんだって! これはつまり、この子を最大限に活用できた者が評価されるの』
『そうか、そういうことか! ただ守るじゃあなくあの子を無駄なく攻撃もさせる、それがこの試験の隠し要素……つまり援護射撃に回したのはむしろ正解なのかッ!』
『状況は把握した。それならこちらは俺らが対処しているから、その子を上手い具合いに誘導してくれ』
『了解!』
男2人は優人の事を女に任せてグリフィンに突っ込んでいった。グリフィンも近づいてくる2人に注意が向いた。
「じゃあ君、お願いするね!」
「……じゃあお姉さん、ちょっと屈める?」
「え? うん──」
女は優人に言われた通り、体を丸めるように体勢を低くして横へとズレた。
そして真正面にグリフィンの姿を捉えた優人は右手右脚を引き、深く息を吸う。遠距離から狙う攻撃はスピードよりも正確性が肝要である。
この時の優人のイメージは一時的にシフトチェンジし、大妖怪と謳われる両面宿儺を想像した。
アンラマンユ戦で目の当たりにした宿儺の『武』を意識した拳撃、一挙一動にキレとフォームの美しさは霊力の強さに顕著に現れていた。
──霊力を拳から一点集中で一直線上に放つイメージを持ち、イメージが完全に浮かんだ一瞬の内に引いていた右半身を捻り、脚を地に叩きつけると同時に優人の右拳が彼の視界にあるグリフィンの顎を遮るように前へ突き出す。
「────鬼火!!」
集中状態にて繰り出された霊力は速さを帯び、蒼の炎を纏って攻撃が飛んでいく。
その龍の如き火炎は軸がブレることなく真っ直ぐにグリフィンの顎部目掛けて向かっていき、爆風を巻き起こしながら鳥獣の身体に衝突する。
悪霊狩りの際は優人が呪いや錬金術の次に使用するほど熟練度の高い鬼火は今の集中と前日のパンクアップによりさらに強力な矛となっていた。さらに敵は魔獣……優人の性質上、実体干渉能力の高い高火力な攻撃は奴にとってかなり有効。
グリフィンは着弾し情け容赦なく襲いかかってくる炎の熱さと肉を焼き焦がしていく痛みから、まるで馬のように前足を振り上げ悲痛の叫びを上げていた。
『クシャアァァァ!!』
「「「ッ!?」」」
──優人の渾身の一撃に他の3人は声すらでないほどに驚愕していた。受験者といえども霊管理委員会所属の霊能力者達、今の攻撃の強さと異常性に唖然としていたのだ。
格上なんてレベルでは話にならない、立っている世界すらすでに違うと感じるほどに優人の攻撃は彼らの攻撃の何百倍もの威力を放出していた。
「嘘……でしょ」
「霊力も除霊能力もないのに、あの火力を……」
「魔人族か何かか!?」
(でも、おかしい……あれは確かに『鬼火』だった。もし魔人族でも霊力がない限りは術は使えないはず──)
『カルルルゥゥ……』
「……えっ?」
その光景に全員が衝撃を受けた。
優人の凄まじい炎にて焼かれたはずのグリフィンには、焦げ目どころか一切の傷跡が残っていなかった。だが先程より一層その目を鋭くして辺りを見回している。
皆が驚いていたその一瞬でグリフィンは吹雪のブレスを足元にいる2人の男に牽制も兼ねて吐きかける。
シャーマン男は間一髪で氷結の息吹を避ける。
「なっ、まさかさっきの攻撃は見掛け倒しだったってのか──」
「う、あああぁぁぁ!?」
「ッ! おいおい、マジか!!」
その悲鳴を上げたのはもう1人の格闘家の男だった。
彼は逃げきれずにブレスの餌食となり、両足が完全に地面へ固定されてしまったのだ。
直接触れたのは足先から脛にかけてだったが、そこからゆっくりと冷気が接触部から這い上がり、彼の下半身が全て凍らされてしまっていた。体をよじろうとしても、足は動く気配すらない様子であった。
「はぁ、はぁ……」
涙目になりつつも男は必死になって動く。即効性のある火炎系やテレポート系の術はすぐに使えないらしく、無理矢理にもがいて脱出しようとしていた。
だがグリフィンはそんな事など気にすることも無く、今の攻撃を放った張本人である優人に注意の対象が移る。なのですぐさま攻撃を繰り出すべくその鋭い爪付きの巨大な脚を男の方へと振り下ろす。
「うわあぁぁぁ、嫌だぁぁぁ!!」
「ダメだ、間に合わない!!」
女は攻撃の詠唱をやめ、代わりに炎系統の魔術を男の付近に発動させる。だが距離が開きすぎているがために火力は焚き火の炎程度、当然間に合うような速度でもなく、仮に間に合っても彼があそこから脱することはできない状況に変わりはなかった。
「間に合って!!」
2人は絶望し、巨脚が目の前まで迫ってきた男は死をも覚悟した。
彼は自分はこのまま無力に死ぬのだと悟り、もう死の恐怖心と確信で悲鳴すら枯渇していた。
しかし────
「僕が間に合うっ!」
優人は言わさずに彼を助ける選択肢を選び、その脳をフル稼働させて救出策を作り上げた。
それは単純なこと、『踏まれる前に急いで助ける』という作戦だった。
優人の先のサンドバッグに放った蹴りの際と同等の強さの霊動術を発動。強化されたその脚は「実際に人を助ける」という場面に遭遇した優人に芽生えた正義感、そして精神力の飛躍的上昇により軽々と限界を超えて加速した。
その脚は踏み込んだだけで残像を残し、優人は瞬間移動でもしたかのように格闘家の目の前にまで接近した。
そばにいた女とシャーマン男はその時に何が起きたのかを全く理解できずに、口を上げて驚いていた。
「安心して、来れたよっ!」
「────あぁ」
男は彼らよりももっと理解できなかった。
しかし理解を求める思考よりも先に、優人がやって来たことによる安堵感の方が勝った。涙目で赤くなっていた顔は一転して明るく変化した。
すると突然、優人の後方から衝撃波と共に爆風が追いかけてきた。その理由は非常にシンプル、優人が音の速さを超えてここまで飛んできたのだ。
「うわっ、ソニックブームだ」
そう軽々しく驚いた優人は自分で起こした風を受けて目を瞑る。
その表情は緊張や張り詰めた雰囲気は無く、かと言って油断や余裕の表情でもない。感じる爽快感と興奮に似た奮い立つ喜びの感情、それらを含んだその笑顔はヒーローのそれであった。
この間にも頭上からはグリフィンの爪が迫っていた。
「2人とも押しつぶされるぞ!!」
優人のそのスピードであれば格闘家の男と共にそこから脱することが出来ただろう。しかし優人はポルターガイストを発動して勢いを殺し、その場で急停止した。
優人は知っている、攻撃を避ける方法は逃走と反撃であることを。
「あぁぁぁ、潰れるぅぅ──」
「そうはさせないよっ! 錬金術ッ!!」
小さく幼い拳を真下に叩きつける。指が足元に触れる寸前、拳から流れる霊力が地を這い半径3メートルほどに拡散される。
拡散と同時に錬金術が発動し、ガラスが割れた際のヒビ割れのように宝石の根が広がっていく。
脚が男の顔スレスレまでに達した瞬間、宝石は成長し熟れる。
透き通るように輝くクリスタルの樹は瞬く間に伸びていき、グリフィンの脚を押し返した。
枝や葉に至る隅々までが宝石によって作られた樹は押し上げても尚成長し、グリフィンの胴をかすめて奴の体勢を崩した。
「大丈夫? いま切り離すね」
優人はすぐさま凍ったままでいる男の救助にかかる。手を平たくし霊動術にて強化、指先からは呪いの拳の爪を僅かに突出させる。
そして風切り音が聞こえる速度で手刀を振る。
彼の体を傷つけないよう僅かに地面ごと抉り、切り離した後に彼の体を押す。ポルターガイストで誘導させつつも見守っていた2人の元へツルツルと滑らせて運送した。
その3人はグリフィンの横にたたずむ優人に釘付けになっていた。
幼い見た目からは想像出来ないほどの強さと、戦闘において異様とも言えるその『ピュアさ』に。
「なんなんだ!? あの子は……」
シャーマン男は驚きつつ2人の方を振り向く。すると2人は顔を真っ青にしてガタガタと震えていた。
「さ……さっきまで私、霊力の探知が全くできなかったの。あの子が来てから──」
「そう言えば俺も──」
「たしかに……違和感があったな」
女はもうグリフィンではなく優人に対して激しい恐怖心を抱いていた。そしてようやく、自分達がしていた最初の誤解に辿り着いたのであった。
「でも……あの子がいま、離れてから気がついたの。もしかして、私たちがあの子の霊力にすっぽり入っていたんじゃなかったのかって」
「「ハッ!!」」
「ハハ、いや……おいおいおい、今それを言われたから分かったがそれって相当ヤバくないか!? 近くだと分からなくなるほどって、じゃああの霊力量は下手したら大罪──いや、大罪の能力者を凌いでる可能性があるかも……」
「除霊能力がないってのは……嘘じゃなかったみたいだ」
「……へ?」
「俺は間近で見て分かった。あの異常な霊力量と普通じゃありえない程の除霊能力のなさ! あの子は一切、除霊をしていなかった」
「じゃあさ、原理でいったらよぉ……大罪と同じ理屈で戦ってるのか!? しかも大罪を持つ前の状態で! あの子が!!」
「みんなぁ、大変だよ!!」
「「「ヒッ!?」」」
3人は優人の声を聞いた途端、恐怖で肩を竦めた。
彼らには優人の挙動も技もその幼い顔も、全てが恐怖として感じ始めてきたのだ。
味方であるのは重々承知、しかし彼らの目には彼が魔王のように見えていた。
「あの魔獣、再生能力があるみたい!」
「「「えええっ!?」」」
「さっ、再生能力とか規格外すぎるよ!」
「そんなのどうやって倒すんだ!?」
「それは変わらないよ、炎が弱点みたいで再生速度が遅いの。さっきの僕の錬金術でやった時に傷が治るのが見えた!」
(もう怖えよ、この子)
「ん?どうしたの?」
「いいぃ、いやいや。なんでもないよっ!?」
「あ、あのさ! 援護射撃を交代するから、君が攻撃してくれないかな?」
「俺たちは……その、補助に回るからさ! はは……」
ただ彼らは怖かった。
あの攻撃に巻き添えにされた時のことを想定して、完全に後方支援をすることを決めたのだ。試験の事など忘れかけ、身の安全を確保するために行動する。
ぎこちなく焦った表情の3人は愛想笑いでどうにかやり過ごす。
しかし、優人はそれを自分が同期に認めてもらえたと微妙な勘違いをして喜んでいた。優人の表情がパァっと明るくなると比例して彼らに悪寒が走った。
「うん、ありがとう。じゃあ頑張るね!」
「ハハハー、お願いします〜」
優人は再びグリフィンに近づいていった。離れていくにつれて安心したかのように彼らは息を吐いた。
(お、おっかねぇよあの子……大罪の能力者とかと雰囲気の系統同じじゃん)
(私大丈夫? 「さっきはよくも舐めてくれたな」って後々に潰されないよね、笑顔のまま殴りかかってこないよね!?)
(あれが素なのか、それとも腹黒なのか……考えたくもない)
一旦、思考が冷静(それでもまだ麻痺中)になったところでまたしても彼らの思考はシンクロする。
『『『──さっきの宝石のヤツ、錬金術だったの!?』』』
とにかく彼らは混乱の中、優人に抱く恐れで気持ちが一つになっていた。後方支援とはいっても、優人の邪魔にならないようにただ見守っているだけだった。
そして優人は口角を無理に上げてグリフィンまで走っていき、走った勢いのまま屈伸運動のように脚を折り曲げる。
踏み込んだ脚は身体強化と彼の全身に霊力が行き渡ったことにより、脚を伸ばすと同時に吹き飛ぶ。あっという間にその速度でグリフィンの頭の上へ飛び上がり、辺りには暴風が吹き荒れた。
優人のいる高さ80メートルまでに達していた。
遠くで見ている3人は改めて見たこの跳躍に口をあんぐりとさせて絶句していた。
優人は胸の高鳴りが増した時、その自信が確信へと変わった。この日の優人は過去最高に仕上がっていた。
「今ならいけそう! 多分1回しかできないけど……」
虚空を舞う最中、景色はスローモーションに感じ、高揚感とは裏腹に冷静さも優人の中にあった。右手をこちらを睨みつけているグリフィンの背後に向けてその獣の名を精一杯に叫ぶ。
子供のような高い叫び声がこの空間に轟いた。
「イフリートォォォォッ!!」
──少年の呼びかけにソレは即座に答えてくれた。
グリフィンの翼の上位置には目を遮りたくなるほどに熱く赫い炎が点火された。炎は文字や紋章を描いて行き、1つの円を作り出した。血より紅く勇志より熱い、その描かれた魔法陣から徐々に火炎の化身が地獄よりやって来る。
炎を司る紅蓮の獣、イフリートが立ち現れる。
「やったぁ成功だぁー!!」
このイフリートは以前に召喚した際のイフリートではなかった。聖獣とは完全支配が出来て初めて召喚が可能、優人が1度成功した時は完全支配状態が続かずにものの数秒で消滅してしまっていた。
しかし今回の炎の聖獣は完全無欠、最高の状態で召喚できたイフリートは超完全支配状態下にあった。そして聖獣は自我ある召喚獣、イフリート自身もこの事を喜ばしく感じていた。
闘争心に溢れた獣であるイフリートは優人を1人の戦士として心の中で迎え入れていた。
イフリートのその凛々しさと戦士の気高さは真の意味での百獣の王という名に相応しい存在感であった。
『グオオォォォォォ!!』
イフリートは空気が揺れ鼓膜を破る叫びを高々と上げ、握り締めた鉄拳をグリフィンの背に放った。圧倒的な重力と超高密度な霊力が生み出した会心の一撃がグリフィンの体内にまで突き刺さり、鳥獣は白目を剥いて叫び苦しんでいた。
『ギシャァァァァエイィァアゥゥ!!』
イフリートは深々と肉を貫いた己の拳から追撃の炎を燃え上がらせる。
炎は魔獣の胴体の中心で5つに分岐する。拳から直進して突き進む炎と分かれて四方向へ向かい進む炎。その炎は槍のように肉を裂いて貫通し、ついにはグリフィンの腹から飛び出した。
それらの槍は地面へと刺さり、杭を打ったように魔獣をその場に固定した。
内部から弱点である炎の攻撃、グリフィンの自己治癒能力は完封。そして炎の槍と焼かれる痛みのせいで身動きもろくに出来ず、背中に生えた自慢の翼も意味をなしていなかった。
炎はますます燃え盛り、自己治癒能力の速度を超えて焼いていく。ここまで召喚から時間は5秒と経過していた所であった。
その間、およそ80メートルの高さから優人は落下を続けていた。
空中で力を溜め、イフリートの炎で敵を拘束、全てが整った。
優人が持つ最強の能力──『呪術式』の力が解き放たれる。心臓から放出されるように呪いが湧き出し、背から飛び出る瞬間に黒のエネルギーは拳の形となり出現する。
呪いの拳は出現と共に表面から宝石の欠片がまぶされ、蒼く燃える炎を纏って呪錬拳へと進化する。
──焼かれる苦しみの中、グリフィンはおぞましいその凶器と本能的に判断された強者の出現を感じ取り優人と目を合わせた。
意識が正常に保たれていた時に奴が見た、最後の光景がそれだった。
「うおぁぁぉりゃぃやあぁぁ!!」
優人の背後から無数の呪錬拳が発射され、拳は硬く握りしめられる。
呪錬拳が豪雨の如くグリフィンに降り注いで直撃していく中で優人自身も身体強化と手に纏わせた呪いの拳で殴りかかっていった。
漆黒の拳は獣の体を捉える度に宝石の鮮やかさを煌めかせ、鬼火の炎は辺りを照らしながらグリフィンの頭部を凹ませていく。
グリフィンは攻撃をされるがまま、5本の炎柱が刺さっていたことによって倒れることもできずに失神する。
──拳が炸裂する音が響き渡る中、優人は虚空からエメラルドの美しい翠が光る刀を取り出す。鋭く透き通る刃の半身は殴られていくグリフィンの姿を映していた。
幻想刀を両手で強く握り締め、右から背にかけて大きく振りかぶった優人は鳥獣にトドメの斬撃を放った。
グリフィンの頭の横を落雷の速度で通り過ぎ地に降りる。
『ォォォ────』
グリフィンはそのまま絶命した。
実体は確かにあったが、グリフィンの死体は残ることなく光となって宙に消えていった。おそらく試験という場であるため仕様が違ったのであろう。
──全てを目の当たりにしていた3人は息をするのもままならない程に仰天し、頭が真っ白になっていた。
彼らの瞳には翠に光る刀を握っている──怪物のような少年がスっとした表情を浮かべている顔が映っていた。





