第6話 去る脅威
現れたのは細身で顔の存在しない異様な怪人。怪人は長い2本と背中から生えている大量の触手を伸ばし、アンラマンユに飛びかかる。
「あれは我の片割れであり一部、本来は我にあったあの頭に我の人格を分け、自立させることであやつを取り込んだ」
「取り込んだ、か。ルシファーさんもおもしれぇこと考えるな」
宿儺は優人と共に攻撃を与えたながらも、己の半身を使役する。
「海の向こうの悪神とやら。何処ぞの神か知らぬが、ここは我の國。よそ者にしては礼儀がなっておらぬわ」
スレンダーマンは無数の触手を一斉に伸ばし、アンラマンユの体に差し込んだ。触手はアンラマンユの蛇のような腕や骨の胴体に突き刺さり、やつの体を取り込もうと試みていた。
スレンダーマンのしなる腕が悪神の肉体の内部へと侵入していった。
『──ォォッ!』
その時、アンラマンユは突然叫び出した。次の瞬間、優人は謎の不快感に襲われた。
「零人君、なんかちょっと気分が……」
優人は三半規管が狂い、吐き気を催していた。貧血も併発しているようで次第に意識が遠のいていく。
優人はそのままふらっと倒れそうになったが零人が支え、そのまま優人を退かせた。
「『邪気』のせいだな。汚染された霊力で、こいつを受けると肉体と精神に悪影響受けんだ」
体重を零人に預けながら、優人は残った霊力でナイフ程度の幻想刀を作ると手刀も混じえながらその場で振り、アンラマンユの腕を攻撃した。
攻撃自体、威力は少なかった。しかしアンラマンユは何故か叫び出した。
『ギュアアァァァァ!!』
ガチガチと歯を鳴らし、奇声を上げてアンラマンユはもがくように抵抗していた。
しかしその間も宿儺とスレンダーマンは決して攻撃を緩めない。邪気が辺りに散るよりも速く攻撃を繰り出していった。
「もうすぐオーバーロードする、だから──」
その時に突然、何か弾けたような音が響き一同は呆然とした。
アンラマンユは破裂音と共に忽然と姿を消した。
視界が突如広がり、邪気が失われたことで優人は感じていた体の不調や不快感が消えて無くなった。
「た、倒したの?」
「……いや、逃げられた」
零人は舌打ちをして苛立ちを見せていた。
(──あっけ無さ過ぎる。こいつは一杯食わされたな)
零人は取り逃したことを悔しがったが、今はその気持ちを沈めて悪神が去ったことに安堵した。
「ひとまず、奴は去った。しばらくはこの街には来ねぇと思うが、警戒しとかねぇとな」
釈然としない結果だった。しかし全員が不完全燃焼でいる中、優人は拳を握りながら小さく呟いていた。
「次に会ったら、絶対に倒す」
重い雰囲気でいると、最初に両面宿儺が話を切り出した。
「悪神についてはなんとも腹立たしいが、まず我の役はここで終わりか?」
「あぁ、すまなかった」
「良い。何か厄介があれば、また我を呼べ」
宿儺は朗らかに笑うと、今度は優人の方を向いて声をかける。
「それと小僧!」
「は、はい!」
「次に会う時は貴様が、我の全てを掌握するほどの武を手に付けておれ」
「はいっ! ありがとうございます」
2人に微笑んだ宿儺は己の半身を連れ、光となって消えていった。
そして静寂と平穏が再び訪れた。
「じゃあ帰ろうぜ。なんか疲れたし俺は外食するつもりだが、優人もファミレス行くか?」
「うん、行きたい!」
そう言って2人は店に向かって歩き出した。
優人は零人と会話をしながら今回の件でより一層、強くなるのだと意気込んでいた。
戦いで散らした霊力を残しながら、2人はその場を後にした。





