第28話 密かに知る者
──この上葉高校にとある1人の生徒がいた。
少年の名は、飯塚政樹。どこにでも居るようなとても普通の高校生でモブの模範のような人間だった。
……だが彼には他人の持っていない力を持っていた。それは──
『霊を見る能力』である。
彼が幼少の頃にその能力が発現した。と言っても、いつも見えるわけではない。基本的に危険で強い悪霊しか見えず、ごく稀に波長の合った霊が見える程度。
他人の過去や守護霊を見るのは試しても出来たことはない。他に霊能力と呼ばれる力は使えない。
なので彼は霊管理委員会の定める基準だと一般人と何ら変わらない存在である。それ自体彼が知る由はなかったが、彼は自分で何となくそんな存在であると認識していた。
しかし実力のある霊能力者など霊力を多く持った人間がそばにいると霊が視認しやすくなる。過去に彼は何人か実力のあるお坊さん達と会ったことがあり、その時の経験から得られたものだ。しかしそんな人間と自分が関わることはない。
──と思っていたがある日を境にそれは変わった。
彼の通う上葉高校で、新学期が始まってから1ヶ月後という奇妙な時期にやってきた転校生、真神零人によって……
一目で彼は感じた、彼はただ者ではないと。
そこらにいる自称霊能力者とは比較にならないほど霊力で溢れていた。その迫力が凄まじく、初めは恐れ多くて近づくことすら出来なかった。
そして翌日、その零人に共鳴するかのように更に莫大な霊力を感じた。それがクラスメイトの優崎優人である。
彼は零人がやってきた翌日から別人のような霊力を放つようになった。
優人とは中学から同じで、仲はそこそこ良い方の関係でたまに他の何人かと一緒に遊ぶような仲だった。
学校でもまあまあ話していて、以前優人と零人のスナラン対戦で優人チームの一員にもなっていた。
そんな彼らは日が経過すると共に次第に変化していった。
ある日帰り道に優人と零人を見かけると悪霊の集団と対峙している所をしばしば見かけることがあった。容赦なく優人が悪霊を叩きのめしている映像はショッキングだった。
だが1番驚いたのは中庭で何人かと談笑しながら昼食をとっていた時に学校の上空から現れた大量の悪霊達を様々な術を使って殲滅し、巨大な髑髏の化け物を零人の操るアズで殴り倒した所を目撃したことが衝撃的であった。
最近になってからは隣のクラスの香菜と菜乃花のこともある。これまた急に霊力を感じるようになり、この間は大鎌を振り回していたのを目撃した香菜と、見た限りさほど霊力は無いが自分と同じか少しハッキリと霊が見えている様子を目撃した。菜乃花である。
先日は街の大食い大会で優勝では彼らの知り合いで尚且つ零人並の霊力がある白夜のことも確認していた。
政樹はこの学校……そしてこの街にいるトップクラスの霊能力者達を彼は全員見てきた。
怪物レベルの彼らに恐怖すら抱き始めていた。
そんな風に彼らを遠目もしくは第三者視点でいつも政樹は見ている。最近はその光景を見ることが日課になりつつある。
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ある放課後。
政樹は今日の彼らの様子を思い出していた。今日は昼に優人達が学校に迷い込んだダルマのような妖怪を捕まえていた。
(いつも大変なこったなぁ、俺には関係ないけども……)
すると政樹は突然、背後から声をかけられた。
「あれ、政樹君?」
「っ!?」
そこに立っていたのは優人だ。いつも壮絶な戦いを繰り広げている優人に話しかけられ、政樹は芸能人に会ったような感覚を覚えた。
同じ中学を卒業し、同じ高校に通って、同じクラスで今もこんなに距離が近い場所に立っていても政樹には優人がとても遠い存在に見えた。
「──今から帰り?」
「え?あ、あぁちょうどな……」
何気ない会話、政樹がこの何週間見続けてきたのが戦闘や霊能力関係だったため少しだけ違和感があった。まだ一言しか話していないがどこか懐かしい気分に戻る。
この頃は段々と日が落ちるのが速くなり、そのまま2人が話しながら帰っていると……夕日の光は見えなくなった。
──つまり奴らの活動時間だ。
政樹の前に黒髪で背の高い女性の悪霊が立っていた。顔は不気味で鋭い眼光をこちらに向けている。政樹はその恐怖のあまりに声が出せなかった。
いつも見ている恐怖の象徴がいきなり現れたのだから、対抗手段のない政樹はその時に死を覚悟した。
悪霊はゆっくり政樹に噛み付こうとする。政樹は終わりだと目を瞑る。
だが優人は様子を変えることもせず政樹と今も話しかけながらも悪霊の喉元に宝石の大棘を刺し、あっさりと悪霊はを排除した。
刺された悪霊は苦しむような動きをしてボロボロ体が消えていった。その火力に政樹は感心しつつ今までに彼が見たことないほど悪霊を倒したことに驚きが隠せない。
「ゆ、優人の技は相変わらず凄いな……」
「そう? えへへ……え?」
「あっ……」
政樹は間近で優人の技を見て思わず口に出してしまった。
「政樹君もしかして──」
「うん……見えてたよ。この際だし、話しといた方がいいか──」
政樹はこの数週間から今までのことを語る。自分の能力やできること、これまで見てきた優人達のことを全て。
(実はこっそり見てましたとか……さすがに優人でも引かれたなコレ)
政樹が全てを説明すると優人は困ったような表情で言葉を漏らした。
「は、早く言ってよぉ」
「──えっ!?」
「他に幽霊とか見える人少ないんだよぉ、中々気軽にこのこと言えるのが零人君達と僕の家族しか居なくて……言えないことがあるって大変なの」
普段の悪霊狩りなどを見られていたと知られ、引かれると思っていた政樹には少し嬉しかった。思ったより拍子抜けしたため、そこから優人はというとさっきよりも砕けた印象で今の悪霊や技について熱く語った。
このまま2人は、政樹が知らなかった零人達との話をして帰った。
(意外と普通なんだな……そんな感じだから余計怖いけどな)
先ほどの優人のスマートな排除ぶりを思い出して政樹は少し悪寒がした。
──その後の学校では優人や零人などの霊能力者グループと仲良くなりたまにそれ関係の話をしたりもするが日常会話を多くするようになった。
だが政樹は彼らの様子や行動を見ることに変わりない、と言うよりいつもたまたま遭遇しているだけだったのだが、彼らとの親交が深まると共に政樹自身が巻き込まれることが増えた……
これが幸か不幸かは本人のみぞ知る──





