第25話 混合する化け物
「このモンスター、なんか見た目が変だよ!体の色がおかしいー!!」
優人はキメラに吊られて飛ぶことで何とか水面に足が着かぬよう必死である。零人は水面から数十M上空で飛んでくるソレラを、魔術で容赦なく焼いていく。
白夜は自身の能力で水を切り裂くように水中に空間を作って突き進む。近づいてくるたびに振動でその化け物共を駆逐していった……
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────この状況が起きる約20分前。今日の最後の授業が終わると同時に零人は優人にとんでもないことを告げた。
「優崎、海行くぞ!」
優人は正気を疑った。なぜなら今の時期は梅雨であり、現在この街は台風の被害を受けているからである。大雨はもちろん近い海は大荒れでとても行けたものではない。地域によっては落雷警報も発令されている。
「さっき委員会から連絡があったんだ。モンスターって言われる部類の魔獣の大群が現れた。今日はシロも来るから、お前の力を見せてやれ」
「うん、分かった!」
優人は奮起した。しかし優人はさっきの疑問がまた頭をよぎる。
「海ってどこの海に行くの?」
「あぁ────大西洋」
「…………ふぇあ?」
行先が分かった途端、魔法陣が現れ転送されるお決まりのパターンだ。
「嘘でしょ!?」
零人は不気味にニヤリと笑った。
「俺がこういう時……嘘言うと思うか?」
「びゃああぁぁ!?」
──気が付けばそこは文字通りの海の上だった。周りは海と地平線しかない。そんな海面の上にいきなり落とされた。海のど真ん中に、不自然な小舟が浮かんでいた。その上には白夜が乗っていた。
「ひゃああぁ!!」
「おおっと、危ない」
「わっ!」
白夜の能力の凶星によって優人達の体がフワッ浮き、ゆっくりとその小舟の上に降ろされる。
「優人さん、零人さん来ましたね……もうすぐやつらの群れが到着します」
「先に言っておくが、モンスターは魔物や魔獣の別称だが方言みたいに少しだけ違う部分がある。日本と違って奴らはデカくて霊力が多い。その代わり妙な術は使わないから安心しろ。今回の標的は──」
「……っ!?」
説明が終わらないまま、どうやら例のモンスターの集団がやってきた様子だ。一体は黒く、恐ろしい程大きな影が船を取り囲んでいる。
背びれを見てチラつかせると何頭かが水中からその巨体を飛び出させた。
「──ゴーストジョーズだ!!」
「…………え?ごーす、え?」
──そして時は現在に戻る。
優人はゴーストジョーズ達のその不気味なフォルムとボディにビビって呪いの力が強まってきた。
「この鮫さん達怖い顔だし、なんか体の色が変だよ〜!なんかCGみたい出し」
「なんか、B級映画みたいっスね。よっと!」
白夜は凶星を発動して空中を殴ることでその軌道上のゴーストジョーズを一掃していく。
優人はその奇妙で不気味な姿に怯えながらも恐怖心により強化された呪錬挙で鮫が口を大きく開いた時に放ち、容赦なく倒していく。
魔獣や悪霊の体は霊力で構成されているため、攻撃しても血や臓物が露になることはない。
だがモンスターは消える瞬間に霊力が過度な出血をするように解放されるという悪趣味な演出があるためかなりグロテスクだ。
「うぷ……」
この手の映画が苦手な優人にとって中々厳しいものがある。その吐き気を我慢しながら次々にゴーストジョーズを倒していく。
「神とかもそうだが、悪魔や魔物は人間の恐怖心や信じる心から来てるからな……B級映画が怖いやつらの思念から具現化したんだろう。ま、俺としちゃあ金稼ぎの永久機関だし文句はねぇよ」
「そんなの──うぷっ、ダメ…………喋ったら出ちゃう……」
優人は嗚咽しながらも鮫共を倒していくが、その度にグロテスクなものを見せられるという地獄にいる。だが白夜はそんな優人の見た目と戦闘のギャップに驚いた。
(──結構ガチ目で怖がってるみたいだけど、ちゃんと冷静な判断ができてる上に霊力の多さを武器にして豪快な攻撃をめっちゃしてる……やっぱ優人さんはすげぇ〜、かっけえ!!)
白夜はそんな優人の姿を見て自分も負けじとゴーストジョーズ達を殴り倒していく。この2人の共通点としては、拳で戦うようなゴリ押しスタイルだということだ。
──ここでゴーストジョーズ達に異変が起きる。飛び跳ねる鮫を上空から斬霊刀で一刀両断していた零人は伝え忘れてた情報を開示した。
「そうだ、2人共!こいつらポルターガイスト使うぞー!!」
驚いた2人だがすぐさま理解し 注意を払った。
そして最初に優人がポルターガイストの餌食になる。1頭の鮫がポルターガイストを発動し、優人を近くまで引き寄せる。
しかし、それは優人が先に予測していた。この鮫付近にいるゴーストジョーズ達が恐らく最後。しかしそれでもある程度の数がいる。
そうと目星がついた優人は錬金術を発動し、大量に己の霊力を流し込んで辺りの海の水を激しく燃ゆる炎へと変え、紅蓮の業火でゴーストジョーズを燃やし尽くしていく。
この一撃で一帯のゴーストジョーズ達は葬られた……
だが3人とも油断はしなかった。
なぜならここからが本番、リーダー格の鮫がいることをこの霊能者達は初めから知っている。
そして待ってましたと言わんばかりにその親玉が海の深くから上昇してきた。
影と霊力の動きから3人はその場所を予測し避けながら、攻撃の準備を整える。
そしてその化け物が水面から現れる。だがそいつはゴーストジョーズではなかった。
「待て、こいつは──」
さっきの大群のどの鮫よりも巨大な姿、しかしそのフォルムは明らかに殲滅した鮫達と異なる姿。胴体は黒い縦のしま模様が刻まれ、鮫にはある筈のない体毛で覆われた4本の爪を備えた脚がある。
牙は上の歯に長い犬歯が2本生えている、とても異質でこの世のある2つの存在が融合した化け物であった。
そのモンスターの名は──
『ゴーストシャータイガーだ!!』
「もう訳わかんないよ〜!!」
白夜と零人が呼んだその化け物はこちらを見て、いきなり食いちぎろうと近づいてくる。
──だがどうやらこの鮫は図体の割りには知能が低いようだ。なぜなら、この3人の強者達を相手にただ飛びかかってきただけなのだから。
『おああぁぁぁぁ!!』
3人はそれぞれの位置から攻撃を繰り出す。
零人は雷と炎の魔術を別の魔法陣をくぐらせ強化した術を鮫にぶつけ、白夜は『大魔の篭手』を装備して空気を斬るように手刀を振り下ろし、優人は呪錬挙を10対作り出してタコ殴りにした。
ゴーストシャータイガーは強烈な攻撃を3方向同時かつ連続的に食らった鮫はすぐに白目を剥いて動けなくなる。高火力の攻撃によってついにゴーストシャータイガーの体がニキビが潰れるように爆散した。
実際の血や臓物ではないから本当に良いのだが、あまりにもグロテスク。ピュア過ぎるがゆえに、そういった耐性のない優人はとうとう海のど真ん中で嘔吐した。
「おろろろろろ……」
「はぁ、まだ実体化してなくて良かったぜ……」
「えっ、そんなのいるの? じゃあその時は──おろろろろ……」
「ま、脚があってもここは海……しかも俺ら相手じゃ意味ねぇっつう」
「──みんなやっぱりスゴいね」
「そういう優人さんこそスゴいっスよ。最後の拳の連撃は痺れたっス!」
勝利の余韻を楽しみ爽やかな気分の2人だった。──のだがこの気分は零人の一言で崩壊した。
「──じゃ、残り行くぞ」
「……え?」
2人は声を揃え、思考がフリーズした。目を白黒させパチパチと瞬きさせた。
「今、ニューヨークでデカいモンスターのワニが暴れてるんだと。そこ行くぞ!」
「ウソぉぉぉ!?」
そして零人が転送術を展開して2人を強制的に連れていかれる。
「「もう勘弁して〜!!」」
一つ良い点があったとすれば……優人と白夜が仲良くなるのに良い機会となったことだろう。だが、それだけだ。
──この後、ニューヨークで巨大なワニとタコの2つのモンスターを倒す羽目になった。





