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プロローグ~娘と同級生になるらしいです。

初投稿・・・だったものをあまりにも放置していたので書き直したものです。よろしくお願いします。

――――シグナルスペル。電子魔術、電導魔術。プログラムアーツなどとも。数多の呼び名を持つその特殊な技術は、始まりの男と呼ばれた一人の男の手によって作り上げられた。魔術、錬金術などの胡乱な学問から、電子工学などの複数の学問を組み合わせ作り上げられたそれは、瞬く間に世界中に広まり、あらゆる技術の常識を覆した。

 ほぼ全ての技術の根幹がシグナルスペルに置き換わり幾年が経過したころ、遂にシグナルスペルを軍用化した国家が現れた。東の果て、始まりの男の故郷でもあるその国は、瞬く間に勢力を広げていった。しかし、その栄華は長くは続かなかったのだ。

 先進の技術を持つ国家が次々に、統一化された戦闘用シグナルスペルを使いこなす者たちを軍の高官としてかき集め始めたのだ。シグナルマギアと呼ばれた技術者達の圧倒的な力により戦況は一転、東の国は窮地に陥る。

 だが、結果として戦争はうやむやに終わった。始まりの男が再度戦況を一転させたのである。

圧倒的な力を持つ男は、雲霞の如く雪崩れ込む無数のシグナルマギア達を蹂躙し、戦争以前と同等の国土まで支配域を押し広げた。このまま世界征服すら成し遂げてしまうのではないかと思わせるほどの勢いで反撃するが、突如彼は戦場に現れなくなり、連合軍も戦い続けることは不可能なほど疲弊していたため、戦争はどちらが勝ちとも言えない状態のまま終結を迎えたのだった――――




 昔から、私からは感情というものが欠如している。

子供のころから何が起きても眉一つ動かさない。戦争では無感情に数多の人間を殺した。

物好きな妻には生涯賭けて私を笑わさせてみせると誓われた程だ。私のような人間のことを好きと言い、何と言おうと付いてきた女性。ソラと名乗る彼女と流れに任せて結婚するも、私の感情が動くことはなかった。しかし、ある日のことだ。

 我が、子。

ソラとの間に出来た子である。生まれるまでは何とも思っていなかった。あぁ、生まれるんだな、程度にしか考えていなかった。

しかし、生まれてきた我が子を見た途端そのすべてが吹き飛んだ。

この世に生れ落ちて間もない、まだ個性の乏しい姿だが、それでいて絶世の美女になることを確信させる愛らしい顔。

比較すべき対象が浮かばないほど至高のさわり心地を持つ肌。

天使の歌声など醜く感じるほどに澄んだ声。

 その全てが愛らしかった。愛おしかった。私はきっと、残りの全てをこの子に捧げるのだろうという未来予知染みた確信を得るほどだった。


 しかし、それは叶わなかった。

魔の全てを極めても避けられない一つの理。

人は、人である以上、いつか、死ぬ。

早い遅いの差異は有れど、必ずたどり着く結果である。

 我が最愛の娘が生を受け、半年の月日が流れた。

ソラからは「無表情のままデレデレに愛でるのは正直気持ち悪い」などと罵られたものだが、私に捧げられる最大の愛を注いでいた。

だが、隠居して一家を構えるには、どうやら私は恨みを買いすぎていたらしい。

 ある日、宅配便と称して襲撃者が侵入しようとした。

無論その程度の偽装など即座に見破り片づけたが、長い平和な日々で平和ボケしていたか見落としがあった。裏口から大型の輸送車両が突っ込んできていたのだ。ご丁寧に大量の爆破魔術が積まれている気配があった。

それでもソラと私だけならば、難なく回避しただろう。

しかし、そこには娘がいた。娘は無論、それを回避することなどできない。

私もソラも娘を連れて逃げるほどの余裕はない。転移魔術は一人以上を対象にできないのだ。

故に、私は最善の選択をした。ソラを逃がし、娘を転移でソラの元へ送った。

こうなれば、無論私は助からない。もう一度魔術を唱える時間はない。

確実な死を目の前に、私は自身の無力さを噛み締めるのだった。



 無力感。

それが、新たに世界に生を受けた私が最初に得た感情だった。

どうやら私は転生したようだ。なぜわかるかと言えば、前世の記憶と人格を受け継いでいたためである。赤ん坊であるため、ろくに動けないし声もまともに発声できない。

そして、すぐに絶望した。

この世界が私が元々生きていた世界かもわからない、私が死んでからどれだけの月日がたったかもわからない。

そう、最愛の娘と妻にもう会えないかもしれないと、強く実感してしまったからだった。

 しかし、それが間違いであることはすぐに判明した。カレンダーにより、なんと私が死んでからまだひと月程度しかたっていないことが分かった。暦や文字が同じならばと思い辺りを探してみると私の両親の趣味であろうか、部屋に落ちていた旅行のパンフレットからわたしのもともといた世界となんら違いないことも分かった。

ならば、いつか、探しに行けるようになってから会いに行けばいい、そう考えた。ソラならばきっと私がいなくても娘を育ててくれているはずである。

 だが、私の絶望の種はそれだけではなかったのだ。

神の気まぐれか、あるいは嫌がらせか。

男にあるべき”それ”が、無かった。

そう、私は――女性として転生していたのだった。



「シオンさん、あなたは卒業したらどうしますか?」

「魔道学園に就学し、シグナルマギアとなって活躍したいと考えています」

それから15年の月日が流れた。

15歳になった私、シオンと名付けられた少女は、小児学園の担任に進路を聞かれていた。

前世の記憶を生かしながらも、また前世の教訓として「目立ちすぎないように」立ち回り、上の下程度の立ち位置を確立していた。両親ともに美男美女で、その遺伝子を継ぐ私も見目麗しい美女となっていたが、さほど目立ってはいなかった。前世よりは少しマシだが結局薄い感情が功を奏したと言えるだろうか。

そして、とある計画を立てていた。

生まれ変わったこの体の人生を使った計画。

どうやら、記憶や人格だけではなく能力までも受け継いでいて、現在の魔力・適性は前世を上回るほどになっていた。

それを生かし、シグナルマギア―電導魔術師―となる。そして、その権限を利用し、娘と妻に会いに行く、という計画だった。

私が死んでからどこに移り住んだかなどは不明だが、シグナルマギアの権限があれば探すこともたやすいだろう。シグナルマギアの身分は私が死ぬ前と変わらず非常に高かったのだ。

そのために、私はシグナルマギアになる道を"再び"選んだ。

前世の能力があればたやすいことだろう。

要は4年間学園生活を耐えるだけである。15年も耐えてきた私には簡単なことだ。

そして試験を受け、上の下程度の成績で魔道学園に合格することに成功した私は、面倒な気持ちを抑え入学式を迎えたのだった。


入学式当日。

「迷った…。この私が…?」

私は、道に迷っていた。

地図を見ながら真っ直ぐに会場に向かったはずなのだが・・・。

気付けば、校舎の近くまで来ていた。地図が間違っていたのだろうか。

引き返すか、もうこのまま入学式に参加しないかを考えていたとき、少女が話しかけてきた。

「す、すみません、入学式の会場ってどこかわかりますか?」

どうやらこの子は迷子のようだ。だが、どうやら私とは事情が違うらしい。

「え? 会場は修練場ですが。パンフレット、見ていなかったのですか?」

「いえ、何度も見て覚えたんですが…忘れちゃって」

「ダメじゃないですか、気を付けないと」

とりあえず、迷わず校舎に来たということは道はわかるのだろう。

つまり、このまま自然な流れでついていけば会場に着くはずだ。

「ふぇぇ、すみません…。ところで、あなたは?」

これはどういう意味での問いかけだろうか。

私がどういうものかという意味か、なぜここにいるのかという意味か。

面倒なので両方纏めて答えることにした。

「私はシオン。シオン・ライズベルトです。少し早く着きすぎましたので、校舎を見ていこうと思いまして。どうでしょう、よろしければ一緒に向かいませんか?」

そう微笑みかける。まぁ道が分からないことは伝える必要はないだろう。何はともあれ、これで入学式には間に合いそうだ。

「はい!よろしくお願いします!あ、私はアリエ・ウェンズディです!」

「では、まいりましょうか、アリエさん。私のこともシオンとお呼びくださいね?」

しかし、女言葉にも慣れたものだ。最初はどうしたものかと思いもしたが、そういうものだと受け入れてしまえば慣れるまでは早かった。寧ろ、割り切ってしまえば前世では体験できなかった体験が無数に転がっているのだ。そう思えば、女性として生まれ変わったことも悪いことではなかったかもしれない。


「そうそう、聞いてるっ?私たちの同級生にSクラスのシグナルマギアがいるんだって!」

「へぇ、それはすごいですね」

歩きながら、軽い雑談をする。Sクラス、シグナルマギアの強さを表すクラスで、上位クラスということになる。入学当初でSクラスというのはかなりの才能か、或いは努力を積み重ねているだろう。

「世間では始まりの男の再来だ、転生した始まりの男だーって言われたりしてて…憧れちゃいます!」

「始まりの男…ですか」

今隣で歩いている私がその転生した始まりの男なのでそれはあり得ないのだが。

しかし、私の再来と呼ばれるほどのシグナルマギアとは。一体どのような化け物だろうかと少し期待に胸を膨らませていた。


 その後問題なく会場にたどり着き、退屈な学園長の話―この人の話が退屈なのは生前から変わっていない―を何とか眠らずに乗り切り、新入生代表のあいさつとなった。恐らく、先ほど話題に上がっていた天才とやらが出てくるのだろう。先ほどの期待はどこへやら、私は半分微睡の世界に足を踏み入れていた。

『それでは、新入生代表の挨拶です』

次の瞬間までは。

『新入生代表、ハル・ステラフォードさん、お願いします』

…ん?

待て、ハル…ステラフォード?

ステラフォードというのは私の前世のラストネームだ。

世界的に見ても、かなり珍しい名字となる。

更に、ハルという名前も妻と私で唸りながら考えた、最愛の娘の名前と一致する。

とはいえ同性同名が完全にいないと言い切ることはできない。

「ソラ…?」

しかし、その顔を見た途端、疑念は一瞬で確信へと変わった。

思わず声に出してしまうほど、妻に酷似していたのだった。

更に、生前の私の深い黒と、ソラの美しい白の髪を混ぜ合わせたかのような艶やかな灰色の髪。東国特有の漆黒の瞳。

一目で、この子が我が娘だと理解した。

(この体のこともそうだが、神はなんといたずら好きなのだろうか…!)

早い。夢にまで見た再開だが、あまりにも早すぎる。何せ彼女はまだ15歳の少女だ。

まだ心も成熟しきっていないだろう。そこに同級生の美少女が「実は私は生まれ変わったあなたの父親です」なんて言ってしまえば、軽蔑で済めば軽いほうであろう。死んだ父の転生者だと騙る者など切り捨てられても文句は言えない。

そこで私は考えた。娘、ハルに直接伝えるのが無理なら、ソラにのみ伝え陰から娘を守る。こうすれば娘と余計な軋轢を生まずに父親らしいことができるのではないだろうか。

(いや、これは言い訳だな…。要は怖いんだ。娘の父親への思いを聞いてしまうのが)

なんせ娘も妻も放っぽりだして死んでしまった父親だ。しかもそれが美少女になって生まれ変わって同級生などどんな悪夢だ。

私でもネガティブな感情を抱くとわかる。本当に前世と比べて感情が分かるようになったと思う。両親が非常に表情豊かな人だったのでその影響かもしれないが。

だが、娘に嫌われるのが怖いことなど父親としては当然の感情ではないだろうか。

よって、作戦を実行するために、ハルとはあくまで同級生のシオン・ライズベルトとして仲良くするための活動を始めるのだった。

初めまして、間問閏まとい うるうと申します。

昔に書いて放置していたものが今になって筆が進みだしたのでまた書き始めました。

その際にこのプロローグはあまりにも不細工な文章だったため書き直させていただきました。

今度こそ定期的に更新していきたいと思っています。(週2で更新できるといいな)

よろしくお願いいたします。

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