4 竜の炎でお菓子が焼けた
朝から呼び出され、任務を言い渡される。
「今日は殺し屋のルゼとグエナを殺してきてちょうだい」
たぶん二人組ははじめてだ。
「ルゼとグエナは兄妹で自分を捨てた両親を殺害したそうです~そして5の魔女に監禁された後、逃げ出した二人はフリーの殺し屋をしていましたがつい先日グレムに入ってました~」
いつものようにオルティナから詳細を言われる。
グレムとは元はメルヒエドの傘下であったが一年前に抜けた敵対組織だそうだ。
「前から腕がいいところに目ェつけてたけど、一個人なら捨て置くとこが、敵対組織に入ったなら話は別ってわけよ」
つまり彼等は無所属のままでいれば、私たちに殺されることはなかった。
「彼らがアタシの参加に下るなら、話はベツだけど」
――――平民の暮らす下街へいく。聞くところによればこのあたりに兄妹の住居があるようだ。
「だれか助けて!」
辺りを見渡していると、向こうで助けを求める女がいた。
見た感じでは世間話の好きそうな感じがする田舎娘なので取り合えず助けて話を聞こう。
「助けてくれてありがとうございます!」
「いいえ……」
「あんまりお金はないんですけど……お礼になにかご馳走します!家にきてください!!」
「……」
食べられないのだが、腕を掴まれてしかたなくついていくことにした。
それに往来で騒ぎはおこしたくない。
「……狭いですけど座ってください」
「せっかくのお誘いで悪いけど私お腹はすいてないの」
「そうですか……私こそ強引につれてきてしまってごめんなさい!」
しかしこのテーブルは四人がけにできるのに椅子が二つだ。
つまりこの女の旦那か、片親とみて妥当だろう。
「この家椅子が二つしかないのね」
「兄と二人暮らしなんですついこの前両親をなくして……」
―――こいつは思わぬ収穫物だわ。
「それは悪いことを聞いてしまったわね」
「いいえ、兄がいれば寂しくないですから気にしないでください」
こいつは間違いなくターゲットの妹グエナだろう。偶然あった私をこの家に連れてきたのは作戦とみていい。
「さっき絡まれていたけどお兄さんはお仕事に言っているんでしょう。最近物騒なんだから一人で歩いていたら危ないわよ」
「ですね……ちょっと調味料が足りなくて買い物にいったらあんなことに……」
あのまま私が通らなかったら、逆にあのチンピラたちが死んでいたかもね。
「そうだお食事がダメなら……」
「ただいま」
どうやら兄が帰宅したようだ。
「丁度よかった。兄さん、ついさっき私絡まれていたんだけど、彼女が助けてくれたの」
「そうなんですか?こんな美しいお嬢さんが、なんて勇敢なことをなさるんだろう」
女好きのする端正な顔をした男は、私の手をとって感謝をしめした。
「お礼をしたいのだけど、食欲がないそうなの」
「それなら別のお礼をしないとだね」
妹にそう言うと兄がこちらをみた。
「なにかほしいものはありますか?」
「いいえ、見返りほしさで助けたわけではないの。物なんていらないわ」
この二人がターゲットならば命をもらう。
「グレイナ、ちょっと外に出ていて」
「わかったわ」
―――――来る!!
「あーれー」
私は倒れるフリをして、グレイナという女にタックルした。
「だ大丈夫ですか?」
―――痛くないが、気絶しないとはやはりただの村娘ではないらしい。
どちらかを外に出すのは得策ではない。二人まとめてあの世におくってやる。
「そういえば私は、ある人に雇われた私立探偵なのだけど、ルゼとグエナという女性二人を探しているんだけど、知らない?」
本当は兄妹だが名前が女でも通用するものなので、カマをかけてみると二人の空気が変わる。
「ルゼとグエナを知らないかって?さ、さあ……」
兄のほうは顔にでるタイプなのか目をそらした。
「ほら、兄さん。探し人はともかく何かお礼をしないと」
「そうだね……」
男がネクタイを外して、私の背後にまわろうとした。
「そうはいくか……」
私は二人を瞬時に気絶させ、拘束した。
「お前たち、ゼルとグエナね」
「へ?」
「違いますけど」
「は、とぼけてもムダよ」
「僕はヘル」
「私はグレイナ」
「それ偽名でしょ」
「だって貴女は女性二人といってましたよ」
「あんたらの反応みるためカマかけたの。兄妹なんていったらピンポイントすぎるからね。同様してたみたいだけど」
「だってグレイナとグエナってちょっと似てるなーと思いましたから」
「うん」
「さっき貴方、私の首閉めようとネクタイはずしたでしょ」
「それは首じゃなくて手首を……」
「お兄ちゃん……!」
「お礼といいつつ拷問する気だった?」
「……その、僕は整体師なのでお礼に骨をバキバキと……」
「は、はあ……」
まさか人違い?
「おーいまだかー」
粗野な男が家に入ってきた。
「あ……おいバカ!」
「今くんなよ!!」
二人が男をにらみつけた。グレイナの声が信じられないほど太かった。
「この二人ルゼとグエナね」
「おう、で、アンタはなんだ。それ新しいプレイか?」
あら認めちゃった。
「見りゃわかるだろーが……」
「敵の送りこんだ女に捕まってんだよ!!」
「はい、おやすみ」
もう聞いたのでこの意味わからない男は気絶させた。
「さて、二人とも洗いざらいやったことを話してね」
「……わかったよ。僕たちはルゼとグエナ。絡まれたフリをしたグエナを助けた男を家に連れてきて殺してた」
「女がきたらルゼが洗脳して言うこときかせてた」
「貴方たちは死ぬかメルヒエドの傘下にくだるかのどちらかしかないわ」
「メルヒエド……創立者メルヒェン・ファザーの大組織!?」
「アンタ、ただの探偵じゃなかったのか」
「どうするの、傘下になるか死ぬのか」
「……そんなの決まってる」
「なるに決まってるじゃん!」
「ご苦労様」
「はい」
「で、二人が件のルゼとグエナ兄妹ね。妹がつり上げた獲物を兄が始末する巧みな連携」
「あ、一つ間違えてることがあるよ」
ゼルに皆が注目した。
「私達は兄妹でも姉妹でもない」
グエナが上を脱ぐと、まな板だった。
「兄弟だよ」
―――あのときグエナが私を楽に受け止められた理由がわかった。
「どうしますキャラがかぶってませんか~」
オルティナがなにやらクイン・ディテに声をかけた。
「ふん、違うだろ一緒にするんじゃないよ」
クイン・ディテは苦虫を噛み潰したような顔になる。
いったいあの二人は何を話ているんだろう。
「あの二人が気になるのか?」
「博士」
彼女はニヤニヤと私を観察ている。するとクイン・ディテが間にわってはいってきた。
「サツキ、一緒に街にいかないか?」
「はい」
私は差し出されたその手を取る。
「さっきグエン…グエナに聞いたんだが、二人とお楽しみだったそうだじゃないか」
「拘束のことなら抵抗される前に縛りあげて傘下にくだらせただけです」
どんな風に思われようと構わないが彼の人から妙な言い方をされるのは心外だ。
「思考力はあれど感情はないと亜衣博士は言っていたが、やはり気にするのかい」
「いいえ貴方だからです」
「それは良かった。配下に慕われるのは嬉しいものだねぇ」
―――クイン・ディテは黒い店に入るとなにかを買う。
それはアンクレットで、私の足首に着けた。
「さ、用も済んだし帰ろうじゃないか」
「はい」
結局なにしに外へ出たのかわからない。
「殺子なにそれ」
「クイン・ディテが着けた」
「首輪でも指輪でもないとは、コアなやつだね~」
「あらまあぐふふふふ……」
オルティナや博士はケラケラと笑っているが、私には言葉の意味がわからなかった。