階層外 着ぐるみの大逆襲! にゃんダインここに見参! その2
続きの部分なので、先にこっちを開いた方はその1の方に
ヒロちゃん率いる戦隊チームは、悪の組織の囮作戦にまんまと引っ掛かり、一区画向こうへ飛んで行ってしまった。まあ、向こうにも被害が出ないように駆けつける必要があるから、完璧な判断ミスってわけではないんだけど、できれば人員を分けるとかして欲しかった。
残されたのは、着ぐるみに入った僕とイベントショーの観客と数名のスタッフさんたちだけ。
一方でミノタウロス風改造怪人はさっき僕が『改造怪人、死ねぇ!』の音声が流れる五番のボタンを押してしまったため、絶賛お冠だ。もうマジでトサカに来てる。
「身の程を知らない着ぐるみめ。まずは貴様から血祭りにあげてくれるわ! ウシシシシシシ!」
改造怪人さんちょうやる気。むしろ殺る気。殺気なる形而上概念が指向性を持って僕にビシビシ伝わってくる。どの程度の殺気かって? スクレールや師匠のそれと比べると可哀そうになるのでその辺は割愛させていただきたい。僕が普通に動けてる時点でお察しだ。
怪人が部下の戦闘員たちに命令したせいで、僕はあっという間に取り囲まれてしまった。
でも、まあ大丈夫でしょ。着ぐるみ来ていて不便だけど――こんなのこの前の迷宮深度18【水没都市】での師匠の修行に比べれば全然マシだもん。空から海から地上から、動けない状態で全方位をモンスターに囲まれた絶体絶命の状況からなんとか生還した僕に、いまの状況なんてヌルいヌルい。周りに被害が及ばないよう細心の注意を払っていれば、決して切り抜けられないわけじゃないのだ。
「もしかしてにゃんダインが戦うつもりか!?」
「にゃんダインすげーへっぴり腰だぞ! あれで戦えるのか!」
「ヒーローのみんな早くこっちに! 前みたいににゃんダインがボロ雑巾にされちゃう!」
「ダメだ! にゃんダインの中の人はただのバイトなんだぞ!」
逃げ遅れた観客たちは不安そうだ。あとへっぴり腰は余計だ。自分でもわかってるんだからそこは指摘しないで欲しい切実に。
……っていうかこいつらさ、ほんとに逃げる気あるんだろうか。さっさと逃げてくれれば僕だって逃げられるのに、野次馬ってほんと害悪ムーブ過ぎるのがよくわかるよ。警察や消防、救急隊員の邪魔をするのがデフォ。あとメディアのヘリも同類ね。
「キー、キーキキー(笑)」
「キー、キーキキー(笑)」
戦闘員は……なんか僕を見て笑ってやがる。ひどい。前のポーション発表会場前でのトラウマが蘇ってくるようだよ。悲しくなってくる。
「にゃんダイン無理すんな! うぷぷ……」
「腰の角度スゲー。着ぐるみの中どうなってんだ?」
「まってまってあの恰好おもしろい。動画に取らなきゃ」
「にゃんダインくねくね動かないで! おかしくて動けないから! ファー!」
「これはイ〇スタ映え間違いなし」
お願いだから逃げてよほんと。こいつらマジでおかしくない? 危機感なさ過ぎてヤバいんですけど。あと動画に取らないで記録に残さないでお願いだから。悲しみのせいでオートで目じりが熱くなるから。あと僕の情けない姿をネットの海に永久に刻みこもうとするのは本当にやめて欲しい。
僕のマリアナ海溝よりも深いかなしみを余所に、戦闘員が襲い掛かってくる。
なので――平時モードから迷宮モードにスイッチを切り替えた。
戦闘員の一人がまるで掴みかかろうとするように正面から迫ってくる。
……不用意な動きだ。異世界の人型モンスだってもっと用心して動くのに、脳みそ入って知能があるはずの人間が何も考えずに攻めてくるなんてなんて皮肉だろう。
不用意に攻めかかる全身タイツの戦闘員に、勁術の流露波をぶちかますと膝からがくんと崩れ落ちた。戦闘員もスーツを着ているけど、これ、そこまで意味のあるものではないらしい。性能の良いプロテクターでもつければいいのにといつも思うけど、まあそこまで頭が回らないのだろう。だからこうして僕なんかにも負けるのだ。
次に抵抗を宣言するため、ボタンを押す。
…………ん? あれ? どれが何番なんだったっけ?
『ぼく、にゃんダイン! みんなと仲良くなれたらうれしいな!』
「キー!」
「キー!」
あ、間違った。また違うボタン押しちゃったよ。なんか戦闘員たち怒ってるみたい。
『ゆるさないぞ改造怪人!』
そう、こっちこっち。どれがどのセリフかきちんと見えるように書いてて欲しいよ。セリフ一つで命運が変わることもあるのだ。こんな不備、さっきみたいなヒヤリハット案件だってマジで。
「ふん。へっぴり腰のクセにやるではないか! だが、それまでだ。貴様らまとめてかかれ!」
「キーキー!」
「キーキーキー!」
へっぴり腰は余計だよ余計。いい加減に注目する部分を僕の腰部から離して欲しいよ。
戦闘員は改造怪人の命令で、そんなお約束のセリフを発しながら、僕を取り囲んで袋叩きにする。無論そんなことをしても意味はない。確かに着ぐるみのガワはボロボロになるかもだけど、僕は痛くもかゆくもないのだ。この前のポーション発表会場の前でゴロツキ連中に絡まれたときのように、レベル制という理不尽が僕の身体を守ってくれる。
「ウシシシシシシ! 我らの恐ろしさを思い知るがいい!」
改造怪人さん、滅茶苦茶機嫌良さそう。たかが着ぐるみ相手にそんなに喜んでくれるなんてなんかすんごく情けない。やるならヒーローたちにしようよ。
……まあそんなことはどうでもいいや、そろそろ僕も動こう。
そんな感じで僕はうずくまった状態から、全身を広げるようにして軽くジャンプした。
すると、鬱陶しくまとわりついていた戦闘員たちが弾き飛ばされる。僕はすぐに背中にマウントしていたプラカードを引き抜くと、近場にいた戦闘員をプラカードの角で殴りつけた。戦闘員は物凄い叫び声を上げてアスファルトの上をのたうち回ってるけど、よくわからん全身タイツ着てるし死ぬことはないだろう。悪いことしてるヤツの安否など一考の余地もない。これで二人目。
もちろん僕は間を置かず、続けて攻撃する。
着ぐるみきっくでぶっ飛ばす。三人目。
着ぐるみぱんちでぶん殴る。四人目。
両手に持ってダブルプラカードスラッシュをかます。五人目。
ぐるぐるパンチで特攻。六人目。七人目。八人目。
戦闘員たちは簡単に、しかも派手にぶっ飛んでいく。
にしてもみんな物凄く痛そうにしてるね。死ななきゃいいな(適当)。
「にゃんダインが戦ってる!」
「今日のにゃんダインはどうなってるんだ!? いつもは一方的にやられてるのに!?」
「もしかしてプロのバイトなのか!? いやでもへっぴり腰だったのはなぜ……?」
「すごいぞ! 頑張れにゃんダイン! あとできればへっぴり腰面白過ぎるからやめて!」
「頑張れー! へっぴり腰だけど!」
驚きや応援が。っていうかすごいね応援って。マジで頑張る気になるもん。特に子供の声援の威力がヤバい。僕にもヒーローパワーが湧いてきそうっていうか僕には魔力しか湧かないわけだけども。へっぴり腰? それはもう諦めたからいいよ。
あと、こうして応援してくれるのが野次馬じゃなけりゃ尚いいんだけどさ。なーんでまだ逃げないのかねあの人たちは。
ともあれ、湧いてきた魔力を使ってエソテリカフォースを使用する。
この前、ポーション品評会の会場前で使ったときよりも強力な一発だ。容赦なんてしてたら僕がやられちゃうことになりかねないもんね……ということにしておく。建前大事。ちょう大事。
僕が魔力を解き放つと、戦闘員たちはそれはもうものすんごい勢いでぶっ飛ばされた。
道路とか壁面とかビターンって効果音が付くくらいに叩きつけられた。安否? 知らないよそんなの。悪い奴らはことごとく滅べばいいのだ。ぶっころでぐちゃぐちゃである。
……よし、戦闘員たちはこれで全滅だね。
一通り倒した所感は、なんていうか……うん、弱い。まあ異世界の凶悪モンスターや凶悪あくまに比べたらどうしようもないよね。この前なんて久しぶりに『屎泥の泥浴場』の怪獣フルコースセットと戦ったし。いやあんなの引き合いに出す方が頭おかしいんだろうけどさ。
そんな光景を見ていた改造怪人と言えば、狼狽えている。
「な、なんだ貴様は! どうして着ぐるみが戦闘員を倒せるのだ! 一体何者だ!?」
『ぼく、にゃんダイン! みんなと仲良くなれたらうれしいな!』
「仲良くだと!? バカにしているのか!」
『ぼく、にゃんダイン! みんなと仲良くなれたらうれしいな!』
……問いかけられるけど、着ぐるみに入っているため定型文の音声でしか返答できない。だってしかたないじゃん。完璧に合致したセリフっていうものがないのだ。自己紹介のセリフとフレンドリーなセリフが一緒になってるのが悪いのであってぼくのチョイスが悪いわけではない。これははっきりと訴え続けていきたい所存である。
「ふん。こうなったら俺がやるしかないようだな!」
ミノタウロス風改造怪人はやる気らしい。
いやー、まさか僕が改造怪人と戦うことになるなんてね。人生わからないもんだよ。
僕は改造怪人にプラカードスラッシュをするけど、逆に蹄で殴り返して破壊された。
着ぐるみぱんちもしてみたけど、あまり効果はないみたい。
「ウシシシシシシ! 戦闘員どもは倒せたようだが。この牛モツ怪人センマイタウロス様が同じようにいくと思うなよ!」
あ、やっぱりこいつも食材由来の名前なのね。センマイとか言ってるしこの手の怪人他に三人くらいいそう。和牛関係なかったわ。
そんな中も、僕を蹄の連打が襲う。
僕はそれをよく見て回避。
こいつ、攻撃も速いね。僕は高レベル冒険者の持つ動体視力のおかげでかわせるけど、普通はこんなんヒーローじゃなけりゃかわせないかも。
僕は距離を取って構え直す。
……うむ、この改造怪人なんか普通に強いぞ。採掘場の醜面悪鬼と戦ってるときみたいだ。攻撃速いしお顔もちょっぴりお怖い。僕をへっぴり腰にさせる要素が揃っている。
でも、反撃開始である。いまの攻撃がダメなら、もっと強い攻撃をすればいい。さっきよりも早く、さらに強く打ち込むのだ。
素早く懐に踏み込み、掌底(肉球)を打ち込む。
すると、パァンッ! とかなり大きくて軽快な音が響いた。
手ごたえありだ。
直後、怪人の身体がぐらつく。
だけど、怪人はすぐに体勢を立て直した。その顔には、確かな焦りが浮かんでいる。
「っ、どういうことだ!? 着ぐるみはただのバイトの一般人ではなかったのか!?」
(あ、やっぱそっちでもそういう認識なんですねー)
まあそうだよね。着ぐるみに専属の人員を割いてるのって二、三チームくらいしかないし。困惑する気持ちもわかるよ。
ともあれ、攻撃に効果があることがわかれば、あとは攻めるのみだ。せめてこいつに特殊な能力の一つでもあれば苦戦するかもだけど、こいつにはそんなのないらしい。ポパ〇みたいなでっかい腕があるだけだ。迷宮深度7【霧浮く丘陵】の『岩塊腕』の方がまだやり口が姑息で頭がいい。
ヒロちゃん曰くのセオリー通り、デカい片腕とは反対方向に回り込んだあと、すり抜けるように懐へ。そこから、スクレに教えられた勁術の技を連続で叩き込んでいく。
流露波。まずはお馴染みのスクレールの得意技。内臓破壊攻撃。
「ゴフぅッ!?」
裏小雷。雷みたいな轟音を出す(たぶん他にも効果はある)人間をドライブシュートで吹っ飛ばす強力な裏拳。
「ぐえっ!?」
偃月脚。鋭い足刀。スクレールは前にこれでモンスターを切り裂いてた。着ぐるみの足なので難しいその一。
「ぎゃぴっ!」
爆抉掌。猫の手みたいにした掌底をえぐるように捻じり込み、勁力を爆発させるえぐい技。着ぐるみなので難しいその二。
「ぶへろっ!?」
天山靠。背中での体当たり。鉄山靠を下から上に向かって使うような感じで、相手をふわっと(当社比)浮かせる。某3D対戦格闘ゲームの鉄○靠が一番近い。
「ごぼはぁ!?」
奉天抜擊。浮き上がった相手に対して、双手を食らわせさらに打ち上げる技。バレーのトスを攻撃技に転化したようなものだ。威力は比にならないけどね。
「ほぢゅわっ!?」
中踉崩排拳。敵が落ちて来るまで、ゆっくりろした動きで十分に勁力を練ったあと、中段の縦拳突き。
「ぐげろばぁああああああああああああああああああああああ!?」
どれもが強力な攻撃を一通りぶちかましていく。
そんな中でも、最後の中踉崩排拳はなんていうか強烈だった。これ単発で使うと威力がそうでもないんだけど、連続技の最後に決めるとまあヤベー威力。多分、一連の動きで体内に勁力を溜め込みながら、周囲にも勁力を滞留させつつ、それらをぐるぐるこねくり回して捻じくり回して突き込みと同時に一気に爆発させるって感じなんだろうけど、なんていうかインパクトの瞬間、拳を中心点に小規模な爆発が起こったみたいに竜巻的な衝撃波が巻き起こって、アスファルトにクレーターができた。
それをモロに食らった改造怪人さんはと言えば、ものすごい勢いで吹っ飛んで建物に人型にめり込んだ。すげー。もう完全にギャグ漫画だこれー。
…………うーん、これスクレールがガチで使ったらどうなるんだろう。どんなモンスでも消し飛ぶんじゃなかろうか。むしろ周りへの被害が甚大まである。マジで『四腕二足の牡山羊』もぶち抜けそう。武力ってやっぱこわい。
「す、すげー。にゃんダインがめちゃくちゃ強いなんてどうなってんだ……」
「今日の中の人、もしかして拳法の達人なんじゃね?」
「え? でもさっきへっぴり腰だったよ?」
「俺さ、この前のアンケートににゃんダインの着ぐるみ強化してやってって書いたんだよね」
「いやそれにしても強くなりすぎだろ。えぐいって」
「これ動画映えハンパない……視聴数……いいねの数……うへへ」
観客たちは驚いていたり、涎を垂らしていたり、それぞれ忙しい。
一方でミノタウロス風の改造怪人さんと言えば、めり込んだ場所から落ちてきた。
道路に両手と膝を突く。そして、その状態で頭を上げて、僕を睨みつけた。
「ぐ、き、貴様は、一体……?」
『ぼく、にゃんダイン。みんなと仲良くなれたらうれしいな!』
僕はすかさず一番のボタンを押した。どれが適切かわかんないからここは勢いで押し通そう。もはやTPOなど知らん知らん。
改造怪人は気合で立ち上がるけど、よろよろしている。まあこれだけダメージ受けたらそりゃあ無事じゃ済まないよね。もうまともに動けなさそう。というか動けだけでもすごい。コイツって普通に強いんじゃなかろうか。少なくともレベル20~25相当。
まあでもよし。これで準備は整ったからね。
ポチッ。
『改造怪人! 死ねぇ!』
……うん。やっぱりこのセリフはこういうときに使うべきだろう。
某サイボーグ系マグネットヒーローばりに、改造怪人、全滅だ☆である。
「魔法階梯第三位格、雷迅軌道……」
呪文を唱えた直後、僕の足元から稲妻が立ち上る。
そんな稲妻を迸らせる可愛らしい着ぐるみという謎の構図のまま、僕はトドメを差しにかかった。
……うむ。ヒーローと言えばこれ。僕の必殺技、雷迅軌道からのイナズマキックである。
僕は後ろ飛びで、後方へ大きく離脱。雷速の起動から稲妻を描くジグザグ走行をして飛び上がり、斜め上から靴裏を差し込むように蹴り付ける。
「一体なんなんだお前はぁあああああああああああ!?」
改造怪人はそんな締まりのない絶叫を上げながら、僕のヒーローキックをもろに浴びて後方へ大きく吹っ飛び、一度直立しておかしな挙動で藻掻いたあと爆発した。
そんで空中で宙返りをした僕はスーパーヒーロー着地を決める。まる。
ポチッ。
『ぼく、にゃんダイン! みんなと仲良くなれたらうれしいな!』
右腕を振り上げた状態で爆発を背後に、セリフボタンを押しておしまいだ。
なんとも物騒極まりないにゃんダインが今日ここに爆誕したのだった。
●
……うん。僕はいま、観客たちに囲まれていた。
一般市民が一般市民に囲まれてるとかどんな構図か。僕はただのバイトなのに。
まあなにはともあれ、みんな無事でよかったよ。
「にゃんダイン! すごかったよ! ありがとう!」
「へっぴり腰の拳法はともかくだけど、最後の必殺技すごくかっこよかった!」
「プロが入ったにゃんダインってこんなに強かったんだね! これからもよろしく!」
「ありがとう! 本当にありがとう! 主に動画的な意味でだけど!」
一部ひどいのがいたけど、ほんと一部なので気にしないことにした。あとへっぴり腰の件まだ引っ張るか。いい加減温厚な僕でもキレるぞ。
そんな風にもみくちゃにされていた折、ヒーローたちが遅れて飛んでくる。
「アキ――いや、にゃんダイン!」
ヒロちゃんが心配そうに駆け寄ってくる。
声が外に漏れないので、僕は片腕を上げて応えた。
すると、
「うん! さすが私の幼馴染みだな! 信じていたぞ!」
誇らしそうに腕を組んで胸を張るヒロちゃん。
その幼馴染みってところになんの根拠があるのかお聞きしたいよ。
もちろん、他のメンバーはこの惨状を見て困惑しているわけで。
「なんかこの辺滅茶苦茶壊れてるんだけど、一体何があったのよ……」
「爆発したあとがありますね。これもしかして、九藤さ――にゃんダインが?」
ピンクとイエローが困惑した視線を向けてくる。
「お前が全部やったのか?」
訊ねてくるグリーンに、僕は頷いて答える。
「なるほどな。実力を隠してたってわけか。英雄魂もないのによくやるぜ」
そう言って不敵な笑みを見せるグリーン。
いや別に積極的に隠してたわけじゃないけどね。英雄魂はないけど、僕にはレベルの暴力と魔力と魔法があるから。
「どうだブルー。にゃんダインは大丈夫だっただろう?」
「……ふん。たまたま運よく倒せたというだけだろ。それに、別にお前の手柄というわけでもない。勝ったような顔をしないでもらおう」
「まったく……」
ヒロちゃんとブルーはそんなやり取りだ。水と油みたいに相容れない。
一方で、イエローはまだ困惑している様子。
「でも、英雄魂もないのに一体どうやって倒せたんでしょう?」
「わからんが、アキだからな。大丈夫さ」
「リーダー、それはさすがに無茶苦茶な理由だと思うけど?」
「そんなことはないぞ? アキはこれまで私のお願いを叶えられなかったことはない。だから大丈夫だったんだ」
「なにそれ」
「なんでしょう……」
ホントだよ。ヒロちゃんよくわからん論法やめいと言いたい。なぜそんなに満足げにできるのか不思議である。
まあ、そんなこんなで後片付けをして、撤収となった。
…………あとで録画された映像を見たけど、まあホラーだよね。爆発を背負って、改造怪人や戦闘員たちに、『仲良くなれたら……』って言いながら迫っているのだ。着ぐるみだから表情とかないし、赤い塗料が部分部分にかかってるせいか、もうなんか抜群に怖い。友達にならないと生きて帰さないっていう感じの圧が強いもの。もはや新しい都市伝説の側面すら垣間見えるよ。我ながら調子に乗ってやり過ぎた感が強すぎる。
あとあの映像だけど、しばらく動画サイトでネタにされた。
もちろんホラー系のマッドに使われまくってるのは言うまでもない。
あと、稲妻キックにも名前が付いた。『ヴァイオレットストライク』だそうだ。
…………うん。次ににゃんダインの中に入る人、本当にゴメン。あらかじめ心の中で謝っておくよ。




