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高校生とランドセル  作者: 湊つぐむ
2/13

探し求めた椿

サイコパス幼稚園児

゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁




「ねぇアラタ、デートしよぉよ」


「……そうですね、ウルウさん」



公園で遊んでいると高校生のカップルが入って来た。

(…子どもの遊び場に来るなよリア充が)




「あ…蟻の巣みっけ♪」


手に持ってきたものを蟻の巣に”そそぐ”


「ヤダ!なにあの子!!気持ち悪い!」


(………?)


さっきのカップルの女の方が私を指差して喚く。

…初対面の人を指差して罵倒するなんて

まったく、最近の若者はできてないな。


…という私もあの高校生のカップルより

10歳は確実に下なんだがな。


つまり、私はこんな大人びてるが幼稚園児だ。

歳相応に子供らしく蟻さん”で”遊んでるだけなのに

見ず知らずの赤の他人に、

気持ち悪いと言われる筋合いなどない。



「……君、本当に『ウルウさん』ですか?」


「え、私は潤だけど?どうしたのアラタ?」


「アレを見てどう思いましたか?」



あ、男の方もこっち指差してきた。

その指、折ってやりたい。



「えーと、蟻が可哀想だから

やめてあげて欲しいな〜って」


うわ、つまんな。

てか、絶対思ってないでしょ。

あの目は気持ち悪いから

関わりたくないって思ってるよ絶対。

でも彼氏の前だから、優しいふりしなきゃって、


あーあ、あんなのと付き合うなんてたかが知れて…


「別れましょう。」


「………はぁ?!」


私は背中で話しを聞くのをやめて

蟻からも目を離して

手に持っていたヤカンを砂場に置いて

カップルの方を振り向いた。


お も し ろ く な っ て き た ★


つーか、女の方、化粧濃っ!

男の方はめっちゃイケメンだ…

……本当、見る目ないなあの男。



「なんで急に!」


「前々から思っていたのですが、

君、ウルウさんじゃないでしょう?」


「はぁ?私は潤よ!」


「失礼、言い方を間違えました。

僕が探している『閏さん』ではないでしょう?」


「それは……」


「本当の閏さんなら蟻が可哀想なんて言いませんし

むしろあの光景を見たら『愉しそう』とか、

『子どもの無邪気さって残酷だね』

と、嘲笑いながら愉しげに言います。絶対。」



うわぁ、

その『ウルウ』って人と一回話してみたい。

めっちゃ、私と考えてること一緒じゃん。

あと絶対、性格悪い。

性格が悪いと言うか歪んでる。



「なにそれ、意味わかんない!!

第一、なによ『ウルウ』って

子なら誰でもいいんでしょ!」


「違いますよ。

『閏さん』じゃないと駄目なんです。

だから閏さんじゃない君とはこれ以上、

付き合う意味がありませんので別れてください。」


「〜〜ッ、最低っ!!」


バシンッ)


女の方が男にビンタしてコッチに来た。


「こんなもんっ!!」



そう泣き叫びながら

蟻を踏み潰して立ち去って行った。



「なにあれ、こっわ。」


せっかく、日曜日の陽だまりの中、

気持ちよく遊んでたのに…


「あーあ、カワイソ


何もしてないのに人間の勝手で殺されて

本当に(ムゴ)いね、人間って。ねぇ蟻さん♪」


また元の位置に戻って蟻に話しかけるが

返事が来るわけもなくただただ逃げ惑う蟻の群れ…



「君のソレは惨くないのかな?」


さっきの男の人が話しかけてきた。


「私はいいの。みんな平等に殺すから。」


右頬がうっすら赤くなってる。

バックから熱中症予防にスーパーから持ってきた

無料の保冷剤を出して男の人に渡す。


(あ、でも…)


「まだ人間”は”殺したことないな。」


ボソッと呟いた独り言が

聞こえたのか目を見開く男の人。


別に問題ない。

私の歳じゃほーりつでは

責任能力が無いと見なされて問題にならない。

…ただその責任を保護者が

見合わなければならないから

やる時はバレないように殺るだけ。


(あの男はどうでもいいけど、

お母さんには迷惑かけたくない…)



「…君、もしかして名前『シキ ウルウ』だったりする?」


「……?全然違うけど?」


「……そうか。じゃあ……

『ツバキ』とか『アワ』だったりしない?」


「………全然違うよ。私の名前は山田花子だもん!」


歳相応な子どものフリをする。


赤の他人だからと素でいたのがいけなかった。

子どもだからと油断させて

おかなきゃいけない相手だ、この人は…。



「……ある意味、珍しい名前だね花子ちゃん。」


「花子って呼ばれるのヤダ!花って呼んで!!」


「わかったよ花ちゃん。

……ところで、花ちゃんの知り合いに

『シキ』とか『ウルウ』とか『ツバキ』とか

『アワ』って名前の人いないかな?」


「んー、椿ちゃんとかは幼稚園に

いるかもしれないけど他の名前はわかんない!」


「じゃあ、探しといてくれないかい?

来週の日曜日、ここで待っているから。」


「うん!わかった!!」


「じゃあ、お兄さんはもう帰るからよろしくね。

花ちゃんも気をつけて帰るんだよ?」



お兄さんの歩く姿を見つめながら手を大きく振る。



「うん!お兄さんっバイバぁーイっ!







…………………フゥー」





(……もうこの公園で遊べないな…)


もちろん、来週の日曜日も来るつもりは無い。


「……なんであのお兄さん

私の名前、知ってたんだろう…」



山田花子は咄嗟に言った偽名。

私の本名は











椿木(ツバキ) (アワ)】だ。







゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁





家に帰ると、また荒れてる。


アレはどうせ、パチンコだろう。


「……お母さん。」


台所に立ってコチラを振り返らない母。


「沫ちゃん、大丈夫。」


そう言って私を抱きしめる母の頬は湿っていた。

美しく慈愛に満ちた母の

唯一の汚点はきっと男運の無さだ。






『まだ人間”は”殺したことないな。』


殺すとしたら間違いなく





あの男を殺すだろうな……




この小さなアパートの荒れた部屋は

私に人の醜さと美しさを教えてくれる。



醜いアレは自分より弱いものに手を挙げ

美しい母は子に手を出させないため、

幼稚園のない休日は公園へ行かせるのだ。



歳相応じゃない私にはわかってしまう。

ごめんなさい。お母さん。

いつも助けてくれてありがとう、

なにもできなくてごめんなさい。


でも、お母さんが助けを求めるなら




いつでも殺れるよ。




普通の子どもじゃなくてごめんなさい、



「まだいんのか気味の悪いガキだな、テメェーは」


ごめんなさい、


「あなた!自分の子どもになんてことを!!」


庇わないで、逆上させないで、


「うるせぇ、こんな気持ち悪いのが俺の子って言いてぇのか!どうせテメェが他所の男とデキたガキだろっ!!」



殴られて、蹴られて、酷いことを言われて

たくさんたくさんやられて慣れて、

痛みに疎くなっていく。


もう、傷つかない。

傷つく必要などない。







コレは私の人生に不要だ。





゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁



またアレは酒を飲んで寝ていたので

私は母が処方されている薬を

だらしなく開いた口に放り込み

鼻をビニール袋を付けた手で抑え

アレの大好きなビールで流し込む。




ガハゴホ呻く、




(うぇえ、汚いなぁ…)



あ、動かなくなった。

つまんないの…ガハゴホ、面白かったのに……



「沫ちゃん?お父さん寝てるからこっちおいで。

幼稚園のお仕度して……ってもう終わってるの?

偉いね沫ちゃん!」


「うん!」


そっと静かにビニール袋を外した。



”誤って”妻の精神安定剤を大量摂取し

死んでしまった薬物依存の男、



……完成。




(……死体は……いっか、そのままでも。)



このストーリーなら部屋で死んでても問題ない。

あ、でも発覚が遅れて腐ったらヤダな、臭いが…


もし、これが殺しだとわかっても問題ない。

一番に疑われるのは母だけど、

そうなれば全て話せばいいだけ。


法では私のような幼子は罰せないし

もしそれで母に捨てられても悔いはない。



私は母を”救った”のだから。



゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁゜・*:.。❁




母は私を幼稚園に預けてパートへ行った。


もう母は解放される。

働かない夫の代わりに働くことも、

いつくるかわからない借金取りも、

アレからの暴力も、……子どもの面倒からも…




「君、なんでいつも怪我してるのです?」


「…転んじゃって、」


「ドジなのですね。もう少し気をつけてみては?」


「あはは、そーだね。」


同じく年長クラスの子どもが話しかけてきた。

大詰め、教諭達が話していた

”虐待”の話しでも聞いてたのだろう。

子どもの純粋な好奇心は

相手に配慮することなど無い。


この子どもは周りに比べたら大人びているが

大人びているだけの子どもだ。


相手の気持ちなど考えず、ただ自分の疑問を払う。



それでも私は

普通の子どもを演じなければならない。



『知ってる椿木さんとこの娘さん猫を殺したそうよ』

『普通じゃないわね』

『まるで悪魔の子よ!』

『あんな子と遊んじゃいけません!』

『気持ち悪いガキがっ』



普通なら傷つかない。

傷つけられないで済む…



(嗚呼、心が黒くなっていくーー)



生まれた意味を探してるーー


誰かに必要とされたいー


その他大勢じゃない私をーー見てーー



「冬夜!迎えに来たぞ。」


「…!雪夜にいさん!!」



どうやらさっきの子どもの親…にしては若い?

制服を来てるから学生か…中学生か高校生…

兄らしき人が友人らしき人達と共に迎えに来た。



何やら話しているかと

思いきや、(オモム)ろにこちらへ駆けてきた。


(………?)



「にいさんのご学友がつばきさんに会いたいって。」


「………私に?」


「うん!友達なんだって行ったら挨拶したいって!」


(……いつお前と私は友達になったんだ?)


「うん!わかった!」


断る理由も無いので付いて行く。

昇降玄関には背の高い学生が二人いた。


一人はこの子ども…冬夜くんに似ている。

彼が『雪夜にいさん』なのだろう。


そして問題はもう一人、

恐らく私を呼んだ彼だ……



「…へぇー、花ちゃんって『ツバキ アワ』

っていう名前なんですか…素敵な名前ですね?」





そこには昨日の男がいたーー









「…僕の勘は間違ってなかったんですね!

一目見たときから閏さんだと思っていたのです…

やっと、やっと会えた…

もう二度と離しません…僕の愛しい人…」



「……せんせぇっ!たすけてぇええ!!」



思わず助けを求めてしまった。

珍しく大声をあげた私に

驚く先生…私は悪くない。

目の前の変質者(ロリコン)が悪い。






その後、友人と先生に連れ去られた昨日の男の人。

…なんだったんだろう。





彼らが去った後、母が迎えに来た。

家に帰るとアレが無くなってた。


「お母さん、」


お父さん(アレ)は何処に行ったの?

そう聞く前に母が答えた。


「大丈夫。お父さんはもう帰ってこないの。」


「そっか。じゃあ、今日お母さんと一緒に寝たい!」


「一緒に寝るの久しぶりだね」


「うん!あ、くーちゃんも一緒に寝る!」



クマのぬいぐるみのくーちゃんを抱えた。

お友達のなっちゃんがくれた宝物。




お母さんとくーちゃんと一緒に眠った。

いつもの幸せな夢をみた。


理不尽な暴力に怯える中で

眠りだけが私の幸せ、

夢の中の優しい世界だけが私の幸福ーー




とても素敵な恋人と私たちは

植物の茂る庭園のような場所で

幸せな時間を過ごしてた。


『ーーーさん。』


彼は私の名前じゃない

私の名前を呼ぶーー


『ーーー、』


私も彼の名前を呼ぶ。

目が覚めるとその名前は忘れてしまう


大切な(アナタ)の名前ーー



(ウルウ)さん。』



(アラタ)、』











作中で沫は父親を殺しました。

理由は自分が暴力を振るわれるから

…ではなく弱い母親を”守るために致し方なく”

沫は殺しちゃいけない理由が分かりません。

ただ、自分が普通じゃないということは

周りの反応を見て気づきました。


それから彼女はなるべく

普通であるように心掛けています。


サイコパスでエゴイストな主人公(幼稚園児)

彼女は普通を求めているのに反し、

自分と同じくサイコパスで

それを受け入れてくれる同類を探していた

高校生に目をつけられてしまったのです…


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