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1日目 15:45

誤字修正 2017/02/05

 「お食事の場所は『朝食の間』です。朝食は朝7時、昼食は12時、夕食は夕方6時です。個室に持っていくのは構いませんが、その場合の配膳は各自でお願いします」


 石田翠(メイド)は鍵に続いて、食事の説明をする。

 俺は(ズブロッカ)を呷る。


 「お風呂は女性が夜7時から夜8時、男性が夜8時から夜9時となります。お昼でも言ってもらえれば開放しますが夜は9時で必ず閉めます」


 ディレイ・タイムなしか。8時丁度に向かえば奇跡(ワンチャンス)ありと心に刻む。


 「各部屋にはコイン用の保管庫があります。喫煙などは個室の中では自由です。冷蔵庫や冷凍庫も完備しているので、必要なものがあれば私か胃辺利己(イベリコ)豚男(ぶたお)にお申し付けください」


 これは嬉しい情報だ。寒空の下でなく葉巻(シガー)を味わえる。


 「22時には原則、男性は東館、女性は西館にいてもらいますが、合意があればその限りではありません。例えば山下のりおさんが22時までに西館に来て、私の部屋で一晩過ごすのは問題ないです。むしろばっちこいです」


 「この腐れ売女(ビッチ)が!」


 米下刻男(ビュッビュ)が吠える。


 五月蝿いので睨む。


 彼は借りてきた(チェシャ)のように静かになった。メイドさんも敢えて煽るようなことを言わないでいただきたい。(ズブロッカ)がまずくなるだろうが。

 俺は娼婦に思うところはない。その深く濃い醸成された経験は女性らしさをより引き立てる。色気の欠片もない少女とは比べるべくもない。以前、切り裂きジャックを捕まえたときに救けた高級娼婦はかなりのものだった。

 ※名探偵のりお第4話シリアルキラー参照



 「遊技場でのコインの賭けは必ず胃辺利己(イベリコ)豚男(ぶたお)を介してください。ルールの決定も勝敗の判断も彼が行います」


 この件はかなり楽しみだ。ターゲットは卯月(うづき)氏だな。彼とは冗談抜きで面白いゲームをすることができるだろう。もちろん私の勝利で幕を閉じるさ。


 「隠されているコインは基本的に1枚ずつですが、宝箱がいくつか配置されています。宝箱は3種類あり、x3と書かれた3枚入りのものと、x5と書かれた5枚入りのもの、そしてx10と書かれた10枚入りのものがあります」


 30枚集めたら終了なのに10枚入り宝箱か。三分の一だ。これはうかうかしているとチームを組んでいる連中には負けてしまうな。


 「説明は以上で終了です。では、只今15:45を持ってコイン探しゲームを開始です」


 米下刻男(スカジャン)を始め幾人かは、走り去っていった。皆サロンを後にする。



 さて、俺はどうしようか……



 ……決まっているな。



 懐からスキットルを取り出す。


 スキットルはアルコール度数の高い蒸留酒を入れるための携帯用容器のことだ。ボーリングの原型といわれている木柱を倒す遊び「スキットル」から名付けられてた。形がそっくりなんだ。

 俺のスキットルはイギリスの金属メーカーピンダーブロス社の錫合金(ピューター)イングリッシュローズ6オンス。錫合金(ピューター)は錆に強く、耐変色性に優れているため美しさが長持ちする特徴がある。


 「頼む」


 その一言で胃辺利己(イベリコ)豚男(ぶたお)はキンキンに冷えた酒をスキットルに満たしてくれる。今日ここでの出会いで、お前は俺の信頼を間違えなく得た。親友(とも)よ。



◇◇◇


 時刻は15時59分


 俺は西館の最奥にある『とんスキギャラリー』の入り口にいる。もちろん廊下側にいる。部屋の中にいたら翌日の昼まで監禁(ひきこもり)だ。


 何故ここにいるのか?


 それは扉の閉じる瞬間を見ておきたかったからだ。


 目で見える範囲に『とんスキギャラリー』に扉は存在していない。アーチ状の入り口の真下には3本の金属のラインがある。そしてアーチの右サイドは2箇所の、左サイドには1箇所の隙間がある。このことから、3重構造の自動ドアなのではないかと推定する。


 16時00分


 俺の予想通り、両サイドから金属の板がせり出してくる。各板の幅は4cmはある。ほぼ無音で静かにゆっくりと板は動いていき、やがて『とんスキギャラリー』の入り口は完全に閉じられた。


 コンコンコン…


 俺は金属板(いちまいめのとびら)をノックする。


 硬い。これはハンマー程度じゃどうしようもないな。


 確認したかったことの一つはこれで終了だ。


 俺はスキットルに口を付けると、『とんスキギャラリー』を後にした。



◇◇◇


 綺麗な絨毯の廊下を本館に向かって歩いて行く。


 『朝食の間』の扉を開く。


 14の椅子と巨大なアンティーク調のテーブルが部屋の中央に鎮座している。テーブルの上にはこれまた古風なランプが室内を灯していた。窓がないためかやや暗い。食事のときにはシャンデリアにも灯りを付けるのだろう。


 ふと入り口の花瓶を見ると、少し傾いている気がした。


 持ち上げると、下には500円玉サイズの金色のコインがあった。


 1枚目か……いや、6枚目かな。


 コインには"GOLD COIN"という文字が掘ってある。


 軽いな。


 500円玉の重さはちょうど7グラムで、体積はおおよそ1cm3だ。金の密度はおおよそ19.32g/cm3だから、このコインが金で出来ていたら19gはないとおかしい。しかし、500円玉3枚弱の重さがあるとはとても思えない。


 つまり金ではない。


 "GOLD COIN"とは金色のコインという意味だろうか。



 ……まあ、どうでもいい。



 それより俺は外に向かわないといけない。



 何故なら、車にほぼ全ての荷物を忘れてきたからだ。



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