木曜日はイケメンを殺そう
俺はモテる男が嫌いだ。
初詣ではいつもイケメンを殺してくれとお願いしてきたし、お賽銭も偶然を装ってイケメンにぶつけた。テレビにイケメンアイドルが映ればすぐにチャンネルを変えた。どのチャンネルでも映ってるもんだからテレビを見るのをやめた。
そんな俺が力に目覚めた。
それはイケメンを不幸にする能力を持つ右眼。
俺がイケメンを右眼だけで見ると、そのイケメンは不幸になる。石につまづいたり、財布無くしたりする。
俺は歓喜した。
これでこの世のイケメンを全員不幸にしてやろう。
でもやるのは一週に一人にしよう。
じわじわと一人ずつ消してやるのだ。
それも毎週木曜日。
ゴミ出しの日だ。
〜〜第一週〜〜
「中里くん、お疲れ様!はいこれスポドリ!」
「ああ、西野さん。ありがとう」
「あとゼッケンの洗濯ちょ〜大変でぇ〜。中里くん、手伝って!」
「いいよ、それくらい」
あいつはサッカー部のエース、中里。美人マネージャーと仲良くしやがって。はい、イケメン発見しました。はい一人目〜。
俺は左眼を閉じ、右眼だけで中里をじっと見つめる。
「うわっ!?」
へっ、やったぜ。
中里の肩に鳥の糞が落ちやがった。
お前が女子と交わるなんて許せねぇ。鳥の糞と混り合ってろ。
「ゴメン西野さん。ちょっと着替えてくる!」
「え……」
あーあー。
女子を置いてけぼりたぁ、イケメンが廃るねぇ。
「どうしよう……」
「俺が手伝ってやるぜ」
「え?あ、ありがとう(誰だろう?)」
気分が良いので手伝ってやった。
〜〜第二週〜〜
「伊藤く〜ん、ここ教えて!」
「ああ、そこはね……」
次のイケメンは秀才の伊藤。ちょっと頭がいいからって女子と交流しやがる不届き者だ。
裁きの眼、開・眼!
「ぐわっ!?」
いきなり椅子から転げ落ちやがった!
椅子と床の摩擦の計算が出来てねえんじゃねえの?保健室行って、ついでに足し算教えてもらってこい!
「ゴメン、ちょっと保健室行ってくるよ」
「え……」
おーおー。
女の子ほったらかしで傷の手当たあ、秀才はちがうねぇ。
「ここわかんないのに……」
「俺が教えてやるよ」
「え?ど、どうも(何?急に)」
気分がいいので教えてやった。
〜〜第三週〜〜
今日は学園祭だ。
『みんなノッてるか〜!!』
「「「イエーーー!!」」」
ステージ上のあいつは軽音部の佐藤だ。黄色い歓声を独り占めしやがって、許せん。
はい右眼。
『ぶふぉっ!?』
っしゃあ!!
マイクのコードにつまづいてやんの!
鼻血だしてやがらぁ。
『ゴ、ゴメンみんな。ちょっと保健室行ってくる』
「「「え……」」」
あらあら。
ライブ放り出して、観客のこともギターかアンプくらいにしか思ってねえのか?鼻血も滴るいい男は格が違うぜ。
俺は意気揚々とステージに駆け上がる。
『こっからは俺の時間だ!今夜は寝かさねぇぜ!』
「うおーー!!(誰?)」
「キャーー!!(誰?)」
「イエーー!!(誰?)」
気分がいいのでライブを乗っ取った。
〜〜第四週〜〜
今日は体育祭。
「リレーのアンカー頑張ってね!」
「任せろ」
あいつは陸上部キャプテンの吉田。
ちょっと細マッチョだからって、女子からボディタッチされやがって。奴を生かしてはおけん。
さあ、リレーが始まる。
ーーバンッ!
「うっ!?」
「ああっ、吉田がスタートの合図の音で気絶したぞ!」
ざまぁみやがれ。
筋肉鍛え過ぎて耳の方が疎かになっていませんかぁ?今のテメーはシッポを鍛えてないサイ○人といっしょだ!
「どうしよう、代わりの選手がいない……」
「俺が走るぜ」
「え?助かるよ(誰?)」
気分がいいので代走してやった。
〜〜第五週〜〜
あいつは山田。イケメン。
はい右眼。
「ぎゃあ!?」
〜〜第六週〜〜
あいつは田中。イケメン。
右眼。
「ひぃっ!?」
〜〜第七週〜〜
あいつは、右眼。
「ぬわっ!?」
〜〜第八週〜〜
「あうっ!?」
〜〜第九週〜〜
「!?」
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いやあ、いいことしたなぁ。
最近はすこぶる調子がいいんだよ。サッカー部のマネージャーとは仲良くなったし、女子には勉強教えて欲しいって言われるし、歌ってくれとも言われたな。体触らせてなんて、照れちまうぜ。
さて、今週は誰を不幸にしようかな。
清々しい朝。
そんなことを考えながら顔を洗う。
おっと左眼に水が入った。
顔を上げ、鏡を見た瞬間、トラックが家に突っ込んできた。