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コントロールルーム

第六話のあかねちゃんは、他の女の子にでれでれするお兄ちゃんに妬いた風を装う小悪魔です。

 司祭が偽りの神の力を示すために使っていた元ホールらしき建築物。


 全ての信者たちが本当にこのコロニーから出て行ったかどうかは分からないが、少なくとも俺たちがいるこの建物には近づいては来ない。

 いや、はっきり言って、誰も近づいてこない。 

 そんな建物の中を探して、俺たちは人の記憶を読み出す装置のコントロールルームを見つけた。


 10畳ほどの部屋に並べられたモニター。

 いくつかはカメラの映像で、いくつかはコンピュータ画面になっている。

 カメラ映像の一つはあの司祭がインチキをやっていたステージである。

 ここから操作していたことはほぼ間違いない。


 俺は人のコピーを製造したり、記憶を転送する装置を父親が開発していると言うのは聞いてはいたが、それだけであって、俺にもあかねにも操作する知識は無い。

 目の前にあるのは、今の俺たちにとって役に立つ代物ではない。


 いや、それ以上にこんなもの存在自身が許されるのだろうか?

 たとえ、父親が開発した装置だとしてもだ。



「で、どうしますか?

 俺的には破壊した方がよいかと思うんだけど」

「いや、それは止めておこう。

 外の世界にいる軍にでも引き渡した方がいいだろう」

「軍がこの世界に来るのか?

 いや、それ以上に、存在自身が問題だと思うんだけど」

「颯太くん。君は君のお父さんが開発したシステムを勝手に破壊できるのか?」

「そ、そ、それは」



 確かにそう言われてしまうと、勝手に破壊する気はひけてしまう。



「あかねちゃんはどう思う?」



 大久保はあかねにたずねた。



「私はお兄ちゃんに任せます。ねっ」



 そう言って、にこりとした笑みを浮かべて小首を傾げるあかね。

 か、か、かわいい。

 偽りのかわいさと知りつつも、胸がきゅんとなってしまう。



「ああ」



 あかねにはそう言って、大久保に向き直る。



「大久保さんが言うのも確かだ。

 この装置はこのままにしておこう。

 まずは教会の奴らの手に渡らないよう、軍がやってくるのなら、管理を任せよう」



 ちょっと、兄貴っぽく、言ってみた。

 あかねが尊敬のまなざしっぽい視線を俺に向けている。



「親子でもなかったんだね」



 なずなの声がした。

 振り返ると、「へぇぇぇ」的な表情で立っていた。



「待ってろって言ったじゃないか」



 そう。この装置の事とは関係の無い者を巻き込むべきじゃないと言う考えから、なずなは連れてこない事にしていたのだ。

 だと言うのに、勝手についてきていたらしい。



「だって、一人じゃ心細くて。

 ごめんなさい」



 しょんぼり的な雰囲気で、そう言われると庇わずにいられなくなる。



「俺の方こそごめん。

 だよな。一人じゃ心配だよな」

「許してくれるんですかぁ?」



 俺の言葉になずなの表情がぱぁーっと明るくなったのを感じた。



「もちろんだよ。

 許すも許さないも無いよ」

「よかったぁ」



 女の子のうれしそうな笑顔はこんなに輝くんだ。そう思わずにいられないほど、かわいいじゃないか。

 こっちは妹と違い、きっと本当のかわいい系に違いない。

 そう一人、俺が頷いた時、あかねに脇腹辺りを軽くつねられた。



「お兄ちゃんのばか。

 なに、デレデレしてるのよ」



 あかねは口先を尖らしたふくれっ面だ。

 お兄ちゃんが別の女の子とデレデレしている事に妬いたと言うシチュエーションに、100点満点の対応。


 司祭を恫喝するあかねとは全くの別人だ。

 一体全体、どれが本当のあかねなんだ?


 いや、この全てがあかねなんだ。

 そう、これこそが小悪魔なんだ。

 いよいよ妹の小悪魔ぶりに磨きがかかってきたんじゃないのか?

 でも、いい。許す。

 その表情、俺の胸に突き刺さってしまうから。

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