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レーザー兄妹

第四話のあかねちゃんは、弱い敵相手に力で恫喝するある意味本当のワル風です。

 この世界に来てから、俺たち二人はこの武器を手に、すでに幾多の戦いを潜り抜けてきている。

 しかも、俺は元々剣道をやっていたので、この手の武器で斬る、突くは得意だ。

 そして、なぜだかあかねも抜群の戦いを演じてくれている。

 下手をしたら、俺より強いかも。


 なんで?

 元々剣道をやっていた訳でもないのに。と言う気持ちはぐっと押さえている。


 そんな二人だけに、すでに有名人になってしまっている。

 世間は俺たちの事を「レーザー兄妹」と呼び、一目置かれているのだ。

 実際のところこれはレーザーではないのだが、イメージ的にはそうなんだろう。



「ま、ま、まさか、お前たちがあのレーザー兄妹だったのか」



 司祭の声が上ずっている。



「そうだよ。

 こんな武器、他に持ってる奴はいねぇし」

「や、や、やってしまえ」



 司祭は男たちにその言葉を言い放つと、ドアを目指して駆けだして行った。

 男たちが襲い掛かって来る。


 とは言え、力だけの男なんて、敵じゃない。

 武器を持たずに襲い掛かってくる者を相手にするのは気はひけるが、敵である以上、情けは無用。

 あかねソードで男たちをぶった斬る。


 一言で言ってしまえば、強烈なエネルギーで焼き切っているようなものなので、普通の刀に比べ、浴びる返り血は少ないし、何かで防ごうとしても、その物ごとぶった斬る事ができる反面、ちょっと肉が焦げる臭いに鼻を塞ぎたくなる事もある。


 男たちを倒すのに時間はかからなかった。はっきり言って、瞬殺である。

 命を落とさずにすんだ男たちも五体満足ではなく、戦意も失い、俺たちに背を向けて震えながら、逃げようとしている。



「終わったね」



 あかねがあかねソードをポケットにしまい、にっこりとした表情で俺に言った。



「だな。

 だが、逃げたあいつも捕まえるか。

 どうせ、ドアは一つしかないんだしな」

「あの人、使えないのに」



 あかねの言葉を司祭が聞いたら、助かったと喜ぶだろうか?

 それとも、使えない奴と言われて泣くだろうか?

 微妙なところだが、まあ俺的にはどっちでもいい。



「どっちにしても、行くか」



 そう言った時、ドアが開いた。

 司祭が戻って来たのか、はたまた新たな敵か?


 ちょっと身構えた俺の視界に入ったのは、俺たちと同じ年頃に見える黒髪ツインテールの一人の少女だった。


 誰なのか分からないが、教会側の人間と言うのは確実なはず。だと言うのに、自分たちの味方の男たちの惨状を目の前にして、表情一つ変えずに近寄って来る。


 危ない奴かも知れない。

 俺の本能がそう訴える。


 ポケットに一度しまったあかねソードに、ポケットの中で手をかける。


 近づいてきていた少女の足が止まった。

 視線はテーブルの上に向かっている。


 さっき、あかねが取り出した俺の父親と凛が写っている写真が置かれたままだった。



「この写真は?」



 少女が聞いてきた。



「私の大切な人たちの写真。この人たちを探しているの」



 あかねが答えた。

 少女は少し考え込んでいるように見える。もしかしたら、何か知っているのかも知れない。



「知っているのか?」

「いいえ」



 俺に視線を向け、きっぱりと少女が言ってのけた時、ドアの向こう側が一気に騒がしくなった。



「司祭様が殺されているぞ」



 どうやら、ドアの向こう側で司祭が殺されているらしい。

 この建物の造り、司祭が出て行ってから、目の前の少女がここに入って来た事などから言って、この少女は司祭が殺されているのを目にしている可能性が高い。

 だと言うのに、そんな素振りも見せていなかった。


 司祭を殺ったのはこの少女なのか?


 そんな疑いの目を向けた時、ドアが開いて信者たちがなだれ込んで来た。



「司祭様を殺ったのはお前たちか」



 違うと言って、信じてもらえる訳もない。

 話して分かる相手でも無さげ。

 としたら、力で突破しかないかと思った瞬間、あかねはあかねソードを構えていた。


 早っ! ていうか、力で突破、即決かよ。

 なんて、驚きの視線を向けて、遅ればせながら、俺もあかねソードを構えた。



「こ、こ、こいつら、レーザー兄妹だ」



 一人の信者の声に、信者たちの間に動揺が走った。



「そうよ。

 あなたたちじゃあ、私たちには勝てないんだから」



 そう言って、あかねは冷たい笑みを浮かべている。

 そんな危ない女の子の姿にぞくぞくしてしまう。

 って、妹にぞくぞくしてどうする。



「そうだぞ。

 死にたくなかったら、そこを開けろ」



 気を取り直して、俺も一喝する。

 信者たちは一歩引き下がったが、そこで踏ん張り堪えている。


 やっぱ、強行突破しかないか。

 そう思った時、あかねが動いた。


 信者たちに向けた切っ先をぐるぐる小さく回しながら、近づいていく。

 その表情は、「おらおら、死にたいのはどいつだ」的な笑みに見える。


 信者たちは逃げ始めた。

 一度崩れ始めると、もう止める事はできやしない。



「お兄ちゃん、道開けてくれたよ」



 にこりと俺に言った。

 妹がワルになってしまう。

 でも、そんな風に思いながらも、ぞくぞくしてしまう。

 って、妹にぞくぞくしてどうする!

めっきり冷酷なあかねちゃん。

でいて、かわいい妹って、いかがですか?

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