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夢×喰 ホワイトナイツ  作者: わた雨
第壱話 夢と現実の狭間
11/15

ボーナス=トラック #1


――one night――


 風呂上がり。

 ベッドに腰掛けて漫画を読みながらくつろいでいると、扉からノックの音が聞こえた──

「やっほ~」

 軽いが、感情がまったく見えない美声が部屋に吸い込まれた。

 予想はしていた。お待ちかね、レイちゃんのご登場だ──!?


「ぶっっっ!!??」


 俺は、目の前のあまりにショッキングな光景に、思わず噴き出した。

なんと、レイの格好は……!


 バスタオル1枚だった。


 濡れた純白の髪は蛍光灯の光を乱射させ、きらびやかに輝いている。

 湯上がりの肌は艶々として潤いに満ち溢れ、薄い唇は赤みを増しており白い肌とは対象的で魅惑的な雰囲気を放っていた。

 色っぽい……眞白 レイ……! 真っ白なはずなのに、色っぽいぞおい……!

 ……いやぁ、しかもバスタオルも真っ白ときたもんだ。そそられる……非常に。

 その格好で誘惑する言葉を言ったりけしからんポーズをとったりしてみろ……! 俺は理性を失って飛び掛かりかねないぞ。

 ……なんて考えている場合かっっっ!!

 はっとした俺は一気に顔に熱が昇ってくるのを感じ、当惑した。

「な、おおお前! なんつーかか格好で、あ歩き回ってんだたよ!!」

 ドキドキオロオロする俺の声は、裏返り震えていた。言葉をはっきりと発することが困難になっていた。

 レイはというと、全く恥ずかしがる様子もなく、ぱちくりと瞬きを繰り返していた。首を傾げながら、やんわりとした口調で言う。

「どうしたの? 食った豆が鳩鉄砲みたいな顔をして」

「うろ覚えにも程があるだろ。めっちゃくちゃになってんぞ」

 相変わらず、ツッコミだけは冷静に入れることが出来る自分におののいてしまった。しかし、幸いにもそのまま惰性で落ち着きを取り戻すことができた。

「お前……俺は男なんだぞ? そんな格好で男の前に出てくんなよ。変な気を起こしたりしたらどうするんだ」

「おおっ! 変な気とは?」

「なんでそこに興味津々なんだよっ!」

「私は変態でエロエロだもの」

「有り体に言うな」

 だから、そんな言葉を放つなら無表情をやめろ! 少しはにやつけ!

 ちなみに、俺の部屋は二階で防音性も高い。一階の居間の母には声は届くまい。

 レイは、そのままの格好で部屋に入ってきた。

 やはり、こいつは羞恥心が欠落しているようだ。

「ここは私のお家で清は家族だから、別に好きな格好でいても何も問題はないでしょう?」

「それはそうだけど、線引きってものは必要だろうが」

「私は今……一線を超える!!」

「格好良く言い直しても最低な台詞だな」

 しかも、ポーズまで決めてるし。クラーク博士みたいな。

「あ、タオル落ちそう」

「だから早く服を着てこい!」

 頼むからこれ以上俺の本能を刺激しないでくれっ!


──────


 レイはパジャマに袖を通し、また俺の部屋に戻ってきた。のだが……。

「……だから、お前は俺に何を求めてるんだよ!」

 今度は落ち着いて言葉を発することが出来たが、顔が熱くなるのは止められない。

 レイは確かに、パジャマに袖を通してはきたものの、それは言葉通り、袖を通して上着のみ着てきたのだ。つまり、下は下着の状態だった。裾で隠れてちらちらとしか見えないが、これはこれで困る。チラリズム恐るべし。

 というか、上も……胸元がはだけている。女性って、パジャマの下って着ないのか?それとも、レイだけか?

「…………?」

 レイは不思議そうに、澄まして首を傾けた。あれ? もしかして、今回は本当に自覚していないのか……? レイは今の格好が、恥ずかしいものだとは思っていないのか。

「え……清の恥ずかしがる顔が見たいだけだけれど……?」

「俺が、当たり前なことを訊いた馬鹿みたいになってる!?」

 ってか、自覚してるなこりゃ。こいつ、明らかに見せびらかしに来てる。

 俺は深く細くため息をついた。さすがに疲れてきた。しかし、折れたら負けだ。余裕を作り、気力を温存させる作戦に替えよう。

「結局、お前は何がしたいんだよ。昨日の今日で俺は疲れてるんだ」

 俺がそう言うと、レイは、こちらに近づいてきた。

 そしてあろうことか、その格好のままベッドに腰かけている俺の隣にくっついてきた。

「お礼のつもり……だけれど。頑張った清にいい思いさせてあげようと思って」

「なっ……!」

 ちょ、ちょっと待った……! 俺はまだ、そこまでしてもらう程のことなどしていないぞ!?

 隣に座ったレイが俺の目を見つめてくる。澄んだ空の色のような水色の瞳に吸い込まれそうになる。

 何やら甘い香りが漂ってきた気がした。いや、本当に香っている。これはきっと、母がレイの為に買ったシャンプーの匂いだ。

 緊張で身体が硬直し、思わず息を呑んだ。心臓が早鐘を打っている。

 すると突然、レイは自らの腕を俺の腕に組ませ、肩にすり寄ってきた。

「…………!?」

 はだけた胸元が。

 艶やかな肩が。

 絹糸のような髪が。

 シャンプーの甘美な匂いが。

 色づいた唇が。

 俺を誘惑する……!

 そしてレイが一言。



「清は、こういうの……お好き?」



 ふっ……ざけんな! そんなの……!



「……大好きですっっっ!!」



 俺の完敗だった。


――― 只今 〇勝一敗 ―――

 

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