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遺誡2
その書状には、
祖父は何を考えていたのだろう。何も考えていなかったのだろうか。何も考えていないふりをして何かを考えていたのだろうか。何かを考えているふりをして何も考えていなかったのだろうか。真実は分からない。誰にも。祖父自身も分からなかったのかもしれない。私にも、分からない。なぜだか泣きたくなって、それで家に誰もいないのを思い出す。泣いても誰にも見られないのだから泣いても良いはずなのに私の涙腺はちっとも緩まなかった。祖父も泣いていい時に泣かなかった。祖母が死んでも、ただ冷たい廊下の隅で、立ち尽くしたままだった。その代わりに母が泣いていた。
色々、あったと母は言った。父も、言った。
祖父。
その世界を覗き見するような、感覚。
十人の、名前。
これから私が会いに行かなければならない十人の。行かなければ。
行かなければ、ならない。
唯一、祖父の血を残す者として。
私は、行かなければ。
私は、ぐしゃりとなった紙の横で空を眺めた。
楽しく書いているのに暗い話です。