最終話 それでも選ぶ未来
宇宙は、静かだった。
何事もなかったかのように。
星は流れ、
光は揺れ、
時間は、ただ前へと進んでいる。
だが――
「……終わった、のか?」
トシノリがぽつりと呟く。
その声には、わずかな不安が混じっていた。
ルルは、ゆっくりと目を閉じる。
感じていた。
変わってしまった“何か”を。
「……ううん」
静かに首を振る。
「終わってない」
その言葉に、トシノリが振り向く。
「何が?」
ルルは、空を見上げた。
何もない宇宙。
だが、その奥に――
確かに“存在”している。
「選択」
小さく呟く。
「え?」
「私たち……選ばれてたんじゃない」
トシノリは目を細める。
「どういうことだ?」
ルルはゆっくりと答えた。
「試されてた」
沈黙。
その意味が、静かに広がる。
「観測されて……選ばれて……」
ルルの声が続く。
「その先で、“何を選ぶか”を見られてた」
トシノリは、思い出していた。
分岐。
選択。
収束。
衝突。
そして――
“見捨てなかった”こと。
「……じゃあさ」
トシノリが言う。
「俺たちの選択って、どうなったんだ?」
ルルは少しだけ微笑んだ。
「きっと……正解だった」
その瞬間。
宇宙が、わずかに震えた。
優しく。
まるで、応えるように。
そして――
あの“感覚”が、最後に一度だけ流れ込む。
――観測完了
――選択確認
――次段階へ
ルルの瞳が見開かれる。
「……っ!」
「ルル?」
トシノリが駆け寄る。
ルルは、少しだけ息を整えてから言った。
「終わりじゃない……」
「え?」
「始まり」
静かな言葉だった。
だが、確信があった。
「私たち……次に進んだ」
トシノリは一瞬、考えて――
そして笑った。
「そっか」
それだけだった。
だが、その一言には、すべてが詰まっていた。
恐怖も、不安も、覚悟も。
すべて受け入れた上での言葉。
「じゃあさ」
トシノリが操縦桿に手をかける。
「次はどこ行く?」
ルルは少しだけ驚き――
そして、笑った。
「……危ない方」
「だよな」
二人の距離は、もう迷いのないものだった。
宇宙は広い。
未知は無限にある。
そして――
選択もまた、終わらない。
宇宙船が、ゆっくりと進み始める。
その先に何があるのか。
誰にも分からない。
だが。
二人は進む。
選ばれるためではなく――
自分たちで選ぶために。
星々が、静かに流れる。
その光の中で。
トシノリとルルの物語は、
まだ続いていく。




