表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

第八話 重なる存在

宇宙が、裂けた。




トシノリとルルの宇宙船は、


その歪みの中へと突入する。




光でも闇でもない空間。




すべてが曖昧で、


境界が存在しない世界。




「……ここが……」




トシノリが息を呑む。




「境界の内側……」




ルルが静かに答えた。




そこは、可能性と現実が混ざり合う場所。




すべての未来が、


まだ“分かれていない”領域。




その中心に――




もう一つの宇宙船。




「いた……!」




トシノリが叫ぶ。




あちらのトシノリが、こちらを見る。




同じ顔。


同じ目。




だが、その表情には絶望があった。




「ルル!」




こちらのトシノリが叫ぶ。




倒れているルルへと駆け寄る。




その姿を見て、胸が締め付けられる。




「……助けるぞ」




低い声。




それは決意だった。




宇宙船を寄せる。




距離が、ゼロに近づく。




その瞬間――




空間が激しく揺れた。




「まずい!」




ルルが叫ぶ。




「近づきすぎると……融合する!」




「融合?」




「存在が……ひとつになる!」




トシノリは一瞬、言葉を失う。




それはつまり――




どちらかが消えるかもしれない。




いや。




両方とも、元の形ではいられない。




「……でも」




トシノリは、前を見た。




「やるしかないだろ」




迷いはなかった。




ルルが、その横顔を見る。




(……この人は)




(本当に……変わらない)




どんな状況でも、


選ぶのは“誰かを救う道”。




「……うん」




ルルも覚悟を決める。




二つの宇宙船が、重なる。




空間が崩れる。




光が弾ける。




そして――




トシノリとトシノリが、向き合った。




「……お前」




向こうのトシノリが、呟く。




「助けに来た」




こちらのトシノリが答える。




短い会話。




だが、それで十分だった。




言葉はいらない。




同じ人間だからこそ、分かる。




「ルルを……頼む」




向こうのトシノリが言う。




その腕の中で、ルルは動かない。




「まだ、間に合う」




こちらのトシノリが言い切る。




「絶対に助ける」




その言葉に、わずかな光が戻る。




その瞬間。




空間が限界を迎えた。




「来る!」




ルルが叫ぶ。




融合が始まる。




二つの存在が、ひとつになろうとする。




記憶が流れ込む。




感情が混ざる。




別の未来の痛み。


絶望。


後悔。




すべてが、押し寄せる。




「……っ!!」




トシノリが歯を食いしばる。




「負けるかよ……!」




その時。




ルルの中にも、別の記憶が流れ込む。




倒れる自分。


消えていく意識。




そして――




トシノリの叫び。




(……こんな未来)




(絶対に嫌)




強く、思う。




その瞬間。




何かが弾けた。




光が、収束する。




そして――




すべてが、止まった。




静寂。




ゆっくりと、目を開ける。




そこには――




ひとつの宇宙船。




ひとつの未来。




そして。




トシノリとルルが、立っていた。




「……成功、したのか?」




トシノリが呟く。




ルルは、静かに周囲を見る。




「……うん」




小さく頷く。




「でも……」




その言葉に、トシノリが振り向く。




ルルは、まっすぐ前を見ていた。




「何かが……変わった」




宇宙は静かだ。




だがその奥で――




確実に、新しい“ルール”が生まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ