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第七話 交錯する未来

宇宙が、軋んでいた。



静寂のはずの空間に、


確かに“ひび割れ”のようなものが広がっている。




「……来るぞ」




トシノリの声が低く響く。




前方。




光が、崩れるように広がった。




それはもう、ひとつではなかった。




無数の“未来”が、重なっている。




「こんなの……止められるの……?」




ルルの声がかすれる。




その瞳には、いくつもの結末が映っていた。




壊れる宇宙。


消える存在。


そして――




トシノリがいない未来。




「……っ」




胸が締め付けられる。




「ルル」




その声で、現実に引き戻される。




トシノリは、いつもと同じ顔で立っていた。




「大丈夫か?」




その一言に、ルルの心が揺れる。




「……うん」




本当は、大丈夫じゃない。




でも――




この人の前では、そう言いたかった。




その時。




空間が裂けた。




「来た!」




トシノリが叫ぶ。




裂け目の向こうから、“もう一つの宇宙船”が現れる。




それは、第五話で見た未来。




ルルが倒れている世界。




「……やめろよ」




トシノリの声が低くなる。




その光景を、認めたくなかった。




だが――




それは現実として、目の前にある。




「トシノリ……あれは」




「分かってる」




短く答える。




そして、前を見据える。




「でも、あれは俺たちじゃない」




その言葉に、ルルが息を呑む。




「え……?」




「違う未来の俺たちだ」




強い声だった。




「今ここにいる俺たちとは、別だ」




その言葉は、否定ではない。




選択の肯定だった。




ルルの胸に、強く響く。




(……この人は)




(ちゃんと、“今”を選んでる)




その瞬間。




“向こう側”のトシノリが、顔を上げた。




目が合う。




時間が止まる。




「……っ!?」




ルルが息を呑む。




あちらのトシノリが、何かを言った。




声は届かない。




だが、分かった。




「助けてくれ」




「……トシノリ!」




ルルが叫ぶ。




「分かってる!」




即答だった。




迷いはない。




「助ける」




「でも、それって――」




ルルの言葉が止まる。




理解してしまったから。




別の未来に干渉するということは――




今の未来が揺らぐ可能性。




「それでもだ」




トシノリが言い切る。




「見捨てる理由にはならない」




その言葉に、ルルの心が大きく揺れる。




(……この人は)




(やっぱり、そうなんだ)




怖い。




でも――




誇らしい。




「……うん」




ルルは、静かに頷いた。




「一緒にやろう」




その言葉に、トシノリが笑う。




「最初からそのつもりだ」




宇宙が、大きく歪む。




二つの未来が、重なり始める。




境界が崩れる。




存在が混ざる。




「行くぞ!」




トシノリが操縦桿を握る。




ルルがその隣に立つ。




二人の距離は、もう迷いのないものだった。




宇宙船は、裂け目へと突入する。




それは――




選択を超えた選択。




未来を繋ぐ、危険な一歩。




その先に何があるのか。




誰にも分からない。




だが。




二人は進む。




それが、自分たちの選んだ未来だから。

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