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第六話 収束する未来

宇宙は、ひとつになった。



無数に分岐していた未来は、


たった一つの可能性へと収束した。




それは、確かに“選ばれた現実”。




だが――




「……静かすぎるな」




トシノリの声が、わずかに低い。




安心とは違う。




すべてが決まりきった後のような、


不自然な静寂。




「うん……」




ルルも同じ違和感を感じていた。




周囲の宇宙は変わらない。




星は流れ、光は揺れる。




だが、そのすべてが――


どこか“固定されている”ように感じる。




「ルル、何か分かるか?」




「……うまく言えないけど」




ルルはゆっくりと目を閉じた。




そして、確かめるように呟く。




「もう……選べない」




その言葉に、トシノリは息を止めた。




「選べないって……」




「さっきまであった“分岐”が……見えない」




ルルは目を開く。




その瞳には、確かな現実が映っていた。




「未来が、一つに決まってる」




沈黙。




それは、安定ではない。




可能性の消失。




「……じゃあさ」




トシノリがぽつりと呟く。




「もし間違ってたら、どうなる?」




ルルは答えなかった。




答えられなかった。




その時だった。




宇宙の一点が、わずかに歪む。




「……っ!」




トシノリが構える。




だがそれは、攻撃ではなかった。




空間の中に、光がにじむ。




ゆらゆらと、不安定に揺れる光。




「……あれ」




ルルの声が震える。




「消えたはずの……」




光の中に、映像が浮かび上がる。




それは――




選ばれなかった未来。




別のトシノリ。


別のルル。




そして。




ルルが倒れ、動かない世界。




「……っ!」




トシノリが思わず拳を握る。




「なんで……残ってるんだよ……!」




ルルは首を振る。




「違う……」




「え?」




「消えてない」




その声は、静かだった。




だが、確信に満ちていた。




「全部……残ってる」




「は?」




「可能性は消えない」




ルルの瞳が、まっすぐ前を見つめる。




「ただ……私たちが行けなくなっただけ」




その言葉に、トシノリは理解する。




選ばれなかった未来は、消えたのではない。




切り離されただけ。




その瞬間。




光が、大きく揺れた。




「来るぞ!」




トシノリが叫ぶ。




宇宙船が激しく振動する。




「これは……!」




ルルが目を見開く。




「侵食してる……!」




選ばれなかった未来が、


現実に“重なろう”としていた。




ありえない現象。




だが、確かに起きている。




「なんでこんなことが……!」




トシノリが操縦桿を握る。




ルルは必死に考える。




そして――




ひとつの答えに辿り着いた。




「……バランス」




「え?」




「未来が一つに固定されたことで……」




言葉が震える。




「宇宙の均衡が、崩れた」




沈黙。




宇宙は常に、多くの可能性を内包している。




だが今は違う。




ひとつに絞られたことで、


他の未来が“押し戻されている”。




その反動が――




今、現れている。




「トシノリ!」




ルルが叫ぶ。




「このままだと……ぶつかる!」




「何が!?」




「未来同士が!」




その言葉の意味を、トシノリは直感で理解した。




もし衝突すれば――




何が起きるか分からない。




だが、無事では済まない。




「……じゃあ、やることは一つだな」




トシノリが低く言う。




ルルが振り向く。




「止める」




短い言葉。




だが、迷いはなかった。




ルルは一瞬だけ驚き――




すぐに頷いた。




「うん」




その瞬間。




二人の意志が重なる。




不思議と、恐怖はなかった。




ただ――




信じていた。




互いを。




そして。




自分たちの選んだ未来を。




宇宙が、大きく歪む。




収束したはずの未来が、


再び揺らぎ始める。




それは崩壊ではない。




再構築の前兆。




新たな選択が、


すぐそこまで迫っていた。

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