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第一話 歪み始めた宇宙

宇宙は、静かだった。




だがその静けさの奥で、何かが確かに揺れていた。




トシノリとルルを乗せた宇宙船は、既知の航路を外れ、未踏の銀河へと進んでいた。


観測データは不完全。記録も存在しない。




それでも、二人は進んでいた。




「……なあルル、この星域、やっぱり変だ」




トシノリが操縦席で眉をひそめる。


前方に広がる星々は、どこか不規則に明滅していた。




ルルはコンソールに視線を落とし、静かに分析を続ける。




「うん……時間の流れが、一定じゃない」




「時間が……ズレてる?」




「たぶん。ここ、普通の宇宙じゃない」




その瞬間――




――ピシッ




まるでガラスにヒビが入るような音が、宇宙に響いた。




「来るぞ!」




トシノリが操縦桿を引く。


宇宙船が激しく揺れた。




ルルの身体が宙に浮く。




その腕を、トシノリがとっさに掴んだ。




「ルル!」




強く、確かな手。




ルルの身体が引き寄せられる。


一瞬、二人の距離が近づく。




「……ありがとう」




小さく呟くルル。


けれど、その声は少しだけ震えていた。




外では、信じられない光景が広がっていた。




星が――逆流している。




本来、一直線に流れるはずの光が、まるで時間を巻き戻すように動いていた。




「こんなの……見たことない」




ルルの瞳が揺れる。




トシノリはその光景を見つめながら、ふっと笑った。




「すげえな」




「……怖くないの?」




ルルが思わず聞く。




「怖いよ。でも――」




トシノリは少しだけ照れくさそうに笑った。




「ルルがいるから、大丈夫な気がする」




その言葉に、ルルの心が小さく波打つ。




(どうして……)




(こんな時なのに、安心してるんだろう)




宇宙は歪んでいる。


ルールは壊れている。




それなのに――




ルルの中では、別の何かが確かに生まれ始めていた。




その時だった。




前方に、ひとつの“光”が現れる。




それは星ではない。


惑星でも、宇宙船でもない。




形を持たない、けれど確かに存在する“何か”。




ゆっくりと、こちらを見ているように――




「……トシノリ」




ルルの声が、わずかに震える。




「分かってる」




トシノリの表情が引き締まる。




だが、その瞳には恐怖だけではない光があった。




「行こう」




「え……?」




「確かめようぜ。この宇宙が、何なのか」




まっすぐな言葉だった。




ルルは一瞬、迷う。




だが――




トシノリの横顔を見たとき、


その迷いは、静かに消えていった。




「……うん」




小さく頷く。




二人の宇宙船は、ゆっくりとその光へ向かって進み始めた。




宇宙が歪む。


時間が揺らぐ。




そして――




二人の心もまた、確かに揺れていた。




それが、未来を変える始まりだとも知らずに。

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