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第8話 私、休みを満喫しますわ!


(ふふ。いい朝ですわー。

仕事をやり遂げた後の休日は、最高ですわね)


「エラ、君、聞いてるの?」

「聞いていますわ。ダンジョンに行くならちゃんと調べてから行けって話でしょう?私が調べる係なんですもの。先入観を持たず、ありのままを報告する。これが、プロというものですわ。」


元伯爵令嬢―ラファエラ・ヴァルディエは優美にお茶を楽しんでした。


目玉ちゃんはない口からため息を吐いた。

普通、ダンジョンはコアを壊せば自動で閉じられて、入り口あたりに戻される。

なのに、この元伯爵令嬢は、コアを壊せない。

なので、もと来た道を逆走するしかないのだ。

上層階から下層階に落ちるのは簡単。だが、登って戻るのは難関なのである。

それがこれからも続くなんて、たまったものじゃない、と目玉ちゃんは思っていた。


「やっぱり、コアは壊せないと。少なくとも、コアを壊せる道具を作るとか。君理論は完璧なんでしょ?」

「もちろんですわ!」

「じゃあ、」

「でも作れませんわ。そういう、武器になるようなものは、きちんと国の許可を得ませんと。それに、魔術省からコアは壊すなって言われてるんですのよ?私は、何事も完璧にこなすタイプ。壊すなと言われているものを壊して楽をするなんて、そんなの三流のすることですわ。」

この元伯爵令嬢は、大罪人として処刑さたんじゃないのか、と目玉ちゃんは思った。

なぜ、こんなに国の規則に従って、国のために働いているのか…。


「そうカリカリしないで、休日を満喫すべきですわよ。ほら、目玉ちゃんも。日光浴、気持ちいですわよ。」

「日光浴って…めちゃくちゃ曇天だよ。それに、こんなとこで…」

「何を仰いますの。国王陛下から賜った私の城に。部屋だって、お客様をお迎えできるほどに十分ありますし、なにより、ダンスホールもあるんですのよ!」

「お客さんって、こんなところに客なんて来るわけないでしょ。」


リンゴーン


「あら、お客様ですわ!」

「え?」


元伯爵令嬢は「はーい」と庶民的に言って、玄関に向かった。

目玉はばれない様に遠目から、様子をうかがった。

こんなところまでラファエラを訪ねてくるなんて、ろくな奴じゃないし、ろくな用事じゃないはずだ。


「ラファエラお嬢様!」


目玉ちゃんは、とんでもない大声に耳を塞ぎたくなった。


「あら、ミカじゃありませんの。」

「お、お嬢様!こんなところで…嘆かわしい。ごふっ…ま、誠に、も、申し訳ございませんでしたー。」

そう言って、客人は勢いよく土下座した。

ラファエラに「ミカ」と呼ばれた青年は、こげ茶の髪にグリーンの瞳をした、ガタイの良い美青年だった。

彼は、はぁーはぁーと肩で息をしているようだった。

「ミカ、汚いですわよ。スタンダップ。」

「はっ!」

「とにかく、入りなさいな。」

「は、…ぐぅぅ」

よく見ると、彼の顔色は土色のようだった。

「す、すみません、お嬢様…。ここは、ちょっと…瘴気が、ごほっ」

「ちょっと、大丈夫ですの?おあがりなさい。看病して差し上げ…」

「いえ…す、すみませんが…で、でなおし…ごほっ、ます…」

そう言って、血を吐きながら彼はよろよろと去っていった。

「ちょっと、ミカ―」


(大丈夫なんですの?あれ?

頭の上のハートが7個もピンクになってましたわ…)


「君は魔力が全然ないから平気なんだろうけど…普通の人間じゃ1日もいられないんだよ、こんなところ。」

目玉ちゃんはパタパタと元伯爵令嬢に近づいて、話しかけた。


そう、ここは、魔力が溜まって瘴気が濃くなりすぎた不毛の地。

屋敷の庭には、薄気味悪い真っ黒な木が生えている。

地面にもひびが入っているような、そんな場所なのだ。

とりあえず死んでくれないラファエラを追いやるのに、国はこの不毛の地に残った屋敷をラファエラの住居にしたのである。

国は正直、これでラファエラが勝手にまいってくれると思っていた。

なんせ人が生きられない程の瘴気なのだ。

しかも、きったいない、雨漏りもしている、ぼろっぼろの屋敷である。


だが、彼女はへっちゃらだった。

「オーホッホッホッホ。素晴らしい屋敷をいただきましたわー。私の城ですのよ!」

と言って、自分でなんやかんやと屋敷を修繕し、ド派手なバラの刺繍が施されたカーテンやらベッドカバーやらを自作し、なんやかんやで生活できるように屋敷を整えてしまったのである。


「ていうか、さっきの知り合い?」

「えぇ、あれは、元ヴァルディエ家の騎士ですわ。何年か前に国の騎士団に引き抜かれてしまいましたけれど。」

「ふーん。」


そんな話をしていると、突然――


ビクンっと目玉が大きく跳ねた。


「め、目玉ちゃん!」


そのまま、目玉ちゃんの瞼はゆっくりと閉じられた。

それまでせわしなく動いていた羽が、動きを止めた。


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