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第7話 私、ダンジョン004を丸裸にしてやりましたわ!


巨体は上半身をゆっくりと動かした。


「これから、どうするのさ…」


目玉ちゃんは危険だと感じていた。

奴が起きた。

魔力がからっきしのラファエラにはわからないだろうが、この圧倒的な魔力――

あれは《怠惰》の魔王――スロースの化身。

それが、今、目覚めたのだ。


バンッ

ドシーンッ


強い地響きとともに、巨体が立ち上がった。


すると、地面が――――


抜けた。


うぉぉぁぁーーー


という叫び声をあげながら、巨体は奈落に落ちていく。


「え?」

「あら?」


抜けた地面はどんどんと広がっていく。

ラファエラのいるところまで、暗い底が迫ってきた。


「きゃーー」

「エラ!」


(私ったら、落ちる時も華麗でないと…

って落ちてない?あら?)


気づくと、ラファエラは落ちていなかった。

目玉ちゃんが片方の羽でパタパタ、もう片方の羽でラファエラを支えていた。

目玉ちゃんの羽は普段より大きく広がっていた。


「お、重い…」

「重くないですわ。私、体重は羽ほどしかありませんもの。」

「いや、それどころじゃ…」


(このままでは、目玉ちゃんも落ちちゃいますわ…。

えーっと…

何かいいもの、何かいいもの。

これですわ!)


「じゃじゃーん!フライヤー!ですわ!」


取り出した謎の道具を背負うと、元伯爵令嬢はふわっと浮いた。

「はーはー。重かったーーー。」

「失礼ですわねぇ。でも、助かりましたわ。ありがとう。」

そう言って、ラファエラはパタパタしている目玉をむんずとつかむ。

そして、チュッと目玉にキスを落とした。


「え?」

「あら?目玉ちゃんの上にもハートが見えますわ!さっきまでなかったのに。」

一瞬、目玉ちゃんは動きを止めた。

次の瞬間、バタバタと必死で元伯爵令嬢から離れた。

そのまま、スーッと残っている地面の方へ飛んで行ってしまった。


(あら?恥ずかしがり屋さんですのね。

でも…目玉ちゃん、ハートの一つが半分ピンクでしたわね。

元気じゃないってことなんですの?)


ちなみに、元伯爵令嬢が開発したフライヤーは、扇風機みたいなものを背負うことで浮くことができる。

が、浮いているだけなので、厳密には飛べないのだ。


「ちょっと、目玉ちゃん。私も連れてってくださいましー。」


返事はない。


やがて、崩れた底が、時間が巻き戻るように戻っていく――

部屋は元通り。ラファエラも元の部屋に戻ってきていた。

これまでと違うのは、中央に巨体がいないこと。

かわりに、きらきらと輝く、水色のダイヤ型の水晶が浮いていた。


「まぁ、きれいですわー。」


元伯爵令嬢は、その水晶に近づいた。


「それが、ダンジョンコアだよ。」


少し遠くから、目玉ちゃんの声がした。

目玉ちゃんはだいぶ上空を飛んでいた。


「これが?きれいですわね。」

「それを壊せば、このダンジョンは閉じる。君がダンジョンの主を倒したから、出てきたんだよ。」


(倒した?

はて?いつの間に?

というか、私、あの方にきちんと説教できてませんわ。)


「まさか接触応力を利用して、あいつを倒すなんて思わなかったよ。起こすなんて言い出した時は、頭がおかしいんじゃないかと思ったけど。」

「え?」

「え?狙ってたんじゃないの?あいつが立ち上がれば、地面に相当な負荷がかかるって。このダンジョンは普通に重力がかかってるし。」


ラファエラは華麗にポーズを決めた。


「も、もちろんですわ!頭脳明晰な私のさすがの作戦ですわ!そう、圧力は接触する面の大きさによって――」

「あーー。説明しなくてもわかってるよ。」

「オーホッホッホッホ」

本当に作戦通りだったのか、目玉ちゃんは怪しんだ。


「では、帰りますわ。」

「え?」

「心配しなくても、目玉ちゃんも連れてってあげますわよ。」

「いや、そうじゃなくて…コアを壊さないと。」

「魔術省の方に言われてますの。これ、魔術じゃないと壊せないんでしょう?私の仕事は、ダンジョンの内部調査、トラップや出現するモンスターを確認することですもの。これで、お仕事完了!ですわ。」

「確かに、魔術じゃないとだけど…それじゃこのダンジョンは?」

「後から私の情報をもとに、ちゃんとパーティーがダンジョンの攻略に来ますわよ?」

「でも、主を倒したのは君でしょ?それでいいの?」

「何の問題がありますの?私は、完璧に、やるべきことを、いえ、やるべき以上のことをやったのですもの。」


ラファエラは、きょとんと小首を傾けた。

ダンジョンにやってきて、最深部に到達して主まで倒した――

それで、ダンジョンを攻略しないで帰るなんて。

たかが仕事のために、ここまでやる――ラファエラの精神が目玉には理解できなかった。


「とにかく、帰りますわよ。一緒に来ませんの?」

「……行く。」


小さくそう言うと、それまでだいぶ上空を飛んでいた目玉ちゃんは、スーッとラファエラの下に近づいた。


「あら、やっぱり目玉ちゃん。上にハートが見えますわね。一個の全部がピンクになってますわ。」

ラファエラは目玉ちゃんをまじまじ見てそう言った。


「え?」

「疲れてるんじゃありませんの?ゆっくり、休みましょうね。」


目玉は自分の上を必死に見ようと瞳孔を上に向ける。


「で、どうやって帰りますの?」

「は?」


第一章ダンジョン004≪怠惰≫完


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