第6話 私、華麗に起こして差し上げますわー!
「起こしてどうするのさ!」
目玉ちゃんはパタパタと飛び回りながら元伯爵令嬢へ尋ねた。
「だから、説教するんですわ。――っと。そろそろ来ますわよ。」
そう言うと、ラファエラは巨体の頭の方へ向かって走り出した。
バシーン
巨体がまた寝返りを打つ。
ここの主は寝返りで攻撃してくるようだ。
元伯爵令嬢は華麗にスライディングをして、なんとか下敷きになるのを免れた。
「オーホッホッホッホ」
そして高笑い。
「私にかかればこの程度、なんてことないですわー。」
「一回つぶされてたじゃん。」
目玉の突っ込みを無視して、ラファエラは肩から下げたポシェットから何やら取り出した。
「じゃじゃーん!拡張☆マイクですわー!」
明らかにポシェットのサイズを超えたものが、取り出された。
「それ、亜空間とつながってるの?」
目玉ちゃんが質問すると、
「異次元ポシェットですわ!私が作りましたの。」
「君、魔術が使えないんじゃ?」
ふふん
とラファエラは不敵に笑った。
「魔術理論は完璧なんですのよ。なんせ、私は才色兼備で頭脳明晰、豪華絢爛で…」
「あーあー、わかった。理論構築して作ったってことね。」
ラファエラのグダグダと長い自画自賛を遮って、目玉は結論付けた。
元伯爵令嬢は満足そうだ。
「それで、そのマイクでどうするの?」
目玉の質問に答えずに、元伯爵令嬢はマイクを持って巨体の頭に近づいた。
(あら、この方。
意外とチャーミングなお顔立ちなんですのね。
ちょっとふくよかすぎますけど。
それに、ハートも10個ありますわ。元気なんですわ!)
そんなことを思いながら、彼女は巨体の耳に近づく。
マイクを構えて――
「朝ですわよ――――――――――――――――――」
目玉はない耳を羽でふさいだ。
が、
パシーン
巨体はうっとうしそうに身じろぎして、耳元の元伯爵令嬢を手で払った。
ラファエラは吹っ飛ばされ、壁にバシンとぶつかった。
「エラ!」
(いっ、ったーーー。
体が、また、粉々ですわ)
巨体はむにゃむにゃと口を動かした。
まだ、眠っているようだ。
「大丈夫?」
すっとんできた目玉が元伯爵令嬢に尋ねる。
「うーーん…」
(どうしましょう…
これで絶対に起きると思ってましたのに…)
ラファエラはポシェットの中をごそごそと探った。
そして、にやりと笑うと立ち上がり
「オーホッホッホッホ」
復活した。
ポージングもばっちりだ。
「大丈夫そうだね。心配して損した…」
「目玉ちゃん!完璧な私が、見事にあのふくよかなる方を起こして差し上げますからね!」
「いや、倒さないとなんだってば。」
目玉の突っ込みを無視して、元伯爵令嬢は巨体に再び近づいた。
(先ほど寝返りをしてから、結構経ってますわね。
まずはーー)
ドシーンッ
(寝返りをスライディングで回避ですわ!
完璧ですわー。
そうしたら、時間がありますわね。
今のうちに…)
元伯爵令嬢は再び巨体によじ登る。
彼女は巨体の上をあちこち移動しながら、蛍光色の何かを置いている。
巨体はもぞもぞと、居心地悪そうに身じろぎを始めた。
(おっと、危ないですわ。
ふふ…やっぱり、これは気持ち悪いですわよねー。
寝心地悪いですわよねー。
ふふふ…まだまだありますわよー。
きれいに着飾って差し上げますわ!
あと、3分。そろそろ、危ないですわね)
元伯爵令嬢は、滑り落ちるように体から降りると、走って巨体から離れていった。
目玉ちゃんは、巨体を上から眺めた。
すると、やたら蛍光色の何かがヌメヌメと動いていた。
そして、巨体は眉間に皺を寄せて、体をもぞもぞと動かしている。
そのたびに地面が振動した。
「何したの?エラ。」
巨体から離れて様子をうかがっている元伯爵令嬢に、目玉が尋ねる。
「ふふふ…これですわ!」
そう言って、ラファエラは手に持っていた、やたら蛍光の
「スライム?」
「そうですわ!これ、ヌメヌメで体にくっつくと気持ち悪いんですの。これで、あの方も起きますわー。」
「というか、なんでそんなもの持ってるのさ。」
やがて
バンッ
ドシーン
地面が大きく振動した。
「ふふふふ……。起きましたわね。」
ゆっくりと、眠っていた巨体が目を覚ました。




