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第1話 プロローグ


広間には群衆が押し寄せている。

――ドシャン

と音が鳴るたびに、歓声が上がる。

彼らは、悪名高いヴァルディエ伯爵一家の処刑を見に来ていた。


そして、残された罪人はあと一人――

ヴァルディエ伯爵家の長女、ラファエラ・ヴァルディエは処刑台に上がっていく。

処刑台の中央に位置するギロチンの台座へ跪かされた彼女は、優美に微笑んだ。

それを見た群衆の多くは、言いようのない気味悪さを感じた。


(ふふ。

みなさま、私の晴れ舞台を見に、こんなに集まってくださって。

さすが、私。愛されてますわー)


――ドシャン


群衆の歓声が響いた。これですべての処刑が完了した…

はずだった。


(いっっったぁーーー

痛い、痛いですわーーー

流石の私も美しい顔が歪んでしまいそう…

え?というか…)


確かに自分の首が落ちた感覚がある。

なのに、なぜ自分は意識を保っているのか。

少女は、状況を確認しようと頭を動かした。

すると…


ぎゃあああ

きゃー


群衆が悲鳴を上げて、散り散りになっていく。


(な、なんですの?

まるで舞台の主役が登壇したみたいじゃありませんの。

まったく、みなさま私が素晴らしいからって…)


気づけば、処刑台の周辺には誰もいなくなっていた。


処刑されたはずの元伯爵令嬢は、なんとか落とされた頭を胴体に戻した。

だが、彼女は自分に何が起こっているのかわからなかった。

唯一わかっていることは、彼女が処刑されたにもかかわらず、生きているということである。

彼女にとって、これは逃亡のチャンスだった。

なんせ、広間に集まっていた役人も大臣も逃げ出したのである。

それなのに、彼女は律儀に魔術省へ状況確認に向かった。


処刑されたはずの元伯爵令嬢がやって来て、魔術省は阿鼻叫喚となった。

そんななか、彼女は事情をかくかくしかじかで説明した。

すると、魔術省の代表者が言った。


「不死の呪いにかかっているのでは?」


検証のために、様々な方法が試された。

火炙り、心臓を剣で貫く、水攻め――

だが、彼女は死ななかった。

痛がるし、燃えはする。だが、しばらくすると元通り。

元気に鬱陶しく自画自賛をはじめるのである。

「まぁ!私ほどの完璧さになると、やっぱりいなくなるのは国の、いえ、世界の、いえ、宇宙の損失なんですわー。神も受け入れることができなかったのですわね。」

元伯爵令嬢は謎のポーズを決め、

「オーホッホッホッホ」

と高笑いをした。


「ところで、ずっと気になってたんですけれど、あなた、その頭の上のハートは、どうしたんですの?」

元伯爵令嬢は対面している魔術省代表の、少し薄くなった頭の上あたりを示していた。

「はぁ。」

「見えませんの?ほら、あなたの上にも。透明なクリスタルのハートが10個。」

示された男性職員は、頭の上を手で確認して首を傾げた。

「おそらく…不死の呪いの影響でしょう。」

魔術省代表は、とりあえずそういうことで結末づけた。


「まぁ。呪いって…確かに、神が私の死を拒んでいらっしゃるのは、呪いともいえるかもしれませんわ。けれど、これは、そう!ある意味、神の寵愛!祝福ですわ!あまりにも完璧すぎるがゆえに!」

「あ、もう大丈夫です…。一応伝えておくと、その呪い――」

「祝福ですわ!」

「えー、祝福の理由はわかっていませんので。なので、あなたのいうハートというのはなんだかわからない。それで、せっかくあなたは死なないので、ちょうどいいお仕事をお任せしたいと…」


元伯爵令嬢は、別のポージングをして言った。

「良い判断ですわ!この私に、仕事を頼むなんて。なんの仕事ですの?モデル?それとも、舞台女優。それとも――」


「ダンジョンの事前調査です。」


――これは、自分大好きな元伯爵令嬢が、ダンジョンを調査しながら、恋心なるものを知るまでの物語である。


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