短編
「杏奈、あの人たちはなぜ笑っている」
そう訊いたのは、クラスでも変わり者と呼ばれている綺羅星響。わたしの幼馴染だ。
「あー、今流行りの『月宮まんじゅう』って言うユーチューバー知らない? YouTubeで今バズってて」
響は不思議そうに首を傾げて、わたしを見た。
「知っている。だが、なぜ、笑っているのか私にはわからないんだ」
「……」
「あれが『普通』なのか?」
「どうだろう、響はさ、テレビや動画……漫画とか本でもいいけど。見ててクスッって笑ったり、面白いなぁとか思わない」
「私は『それが』わからないんだ。杏奈は、どういう時に笑うんだ」
そうきますか……。
綺羅星響は『変わり者』である。
わたしたちが思う『普通』のこと。ごく当たり前に思うこと。何気ない日常生活の中で、それが『当たり前』だと思ってやっていること。みんながやっているから『当たり前』だと思うこと。
なぜ? と聞かれたら、
「みんながやっているから」と答えるくらいしか、わたしには思いつかない。
そこに、誰も疑問を抱かないし、それが『当たり前』だと思って過ごしているから、日常生活の一部となっている。
わたしたちが思っている『普通』のことは、響の中では『普通』のことではない。
そういう感情の部分が理解できないようだ。
だから、わたしは、
「感情で心が動いたとき、自然と笑顔になるんだよ」
と、答えておいた。
響は目をぱちくりさせて、首をかしげる。
ただ一言、
「理解した」
と、だけ言って前を向いた。




