あーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 1話 シャクシャクシャキシャキジョイでファー
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「ふえぇチカレタ……。」
1人の少女が千鳥足で部室に入り、風に舞う木の葉のような身のこなしでパイプ椅子に着席すると、そのまま机に上半身を横たえた。
「おお、なんか鮮やかだ……ッ!?」
「ふはは、きはだちゃんの品性に震えろ。」
この水揚げされたエイの如く机で脱力している少女こそ、あーかい部1年、『黄山きはだ』である。
「品性言うならシャキッとしなよ。」
「どんなぁ?」
「え?『どんな』って?」
「例えだよぉ。立てば芍薬座れば牡丹……みたいな。」
「じゃあキャベツでいいか。」
「確かにシャキッとしてるけどさぁ……。あさぎちゃんはキャベツに品性感じるのかい?」
「感じないなあ。」
そしてこの、もたれかかったパイプ椅子に悲鳴をあげさせ、鎖骨のあたりまである特徴的な襟足を携えた少女もまたあーかい部1年、『青野あさぎ』である。
「あらあさぎちゃん、おパイプ椅子が可愛く鳴いておりましてよ?」
「……きはだも可愛く鳴いてみる?」
「品性は捨てても命は惜しいもんだねぇ。」
「……そもそもなんで品性の話になったんだっけ。」
「立てばシャクシャクキャベツはシャキシャキ……?」
「品性どっかいっちゃったよ……。」
「お嬢様は立ち食いしないもんねぇ。」
「きはだの中で上品な人ってお嬢様なの?」
「うむ。自分の頸動脈にチョップしながら高笑いするとことか……ねぇ?」
「悪役令嬢がよくやってるやつかあ。」
「あさぎちゃんはもうやらないの?」
「昔やってたみたいに言わないの。」
「やってたよね?」
「…………黙秘。」
「逃げよったな。」
「口数が多いのは上品じゃないでしょ?ほら、言わぬが花って言うし。」
「ぐぬぬ、シャクシャクの癖に……!」
「シャキッとしてない人に言われてもね。」
「……よぉしわかった!シャキシャキのカツど…………、
「きはだ?」
「ダメだぁ!シャキシャキのカツ丼は認められない……ッ!!」
きはだは台パンした。
「そこ葛藤するとこ……?」
「あさぎちゃんはカツ丼がシャキシャキしててもいいわけ!?」
「いや、良いよ。カツの衣とかバリ立ちの方が好きだし。」
「 」
「きはだ?」
「信じられない……、カツ丼にキャベツだなんて……!?」
「きはだが言ったんだよね?」
「あさぎちゃんはさぁ?『私全然可愛くないし〜、』って言われたら『そうだね』って返すのぉ!?」
「うわぁめんどくさ。否定して欲しいやつじゃん。」
「……夜はにゃんこの癖に。」
「私きはだと寝たことないんだけど。」
「そこはにゃんこの方を否定しておく所じゃない?」
「!?///」
あさぎはきはだのほっぺを強めにつまみ、いつもより多めに引っ張った。
「じうんおはうぇ……いひゃい。」
「ふんっ!」
あさぎはきはだのほっぺを解放するとそっぽを向いた。
「……。」
「……。」
・・・・・・。
「だいたいカツ丼にキャベツ抜きとかありえないし。」
「かまって欲しくてねをあげよったなあさぎちゃん。」
「……ッ!///」
「いひゃいんあへろ(痛いんだけど)。」
「ふんっ!カツ丼なのにカツの良さ殺すとか意味わかんないっ!」
「悪役令嬢からツンデレお嬢様にジョブチェンしよったな?」
「……ッ!///」
「ほっへろうぃひゃう(ほっぺのびちゃう)。」
「きはだなんて、こぶとりじいさんみたいになっちゃえばいいんだ……!」
「誰が小太りじゃあッ!!」
「そこで区切る……?」
「……ああ、『ボクの顔をお食べ?』する方かぁ。」
「違うけどあってる……!?」
「そもそもこぶとりじいさんってどんなお話だっけぇ?」
「え?顔に瘤があるお爺さんの……あれ?あのお爺さん何したんだっけ。」
「鬼退治かねぇ。」
「桃の人だなぁ。」
「亀を助けて
「お爺さん開けたら死なない?」
「大きくなあれ
「とりたいんだよね、瘤。」
「……やべえ、あの爺さんなにしたのか全然わかんねぇ!?」
「聞くかぁ。」
あさぎはトークアプリ『PINE』を起動し、あーかい部のグループでこぶとりじいさんについて情報を募った。
「じゃあわたし検索てみる〜。」
数分後。
「既読つかないなぁ……。」
「薄情者めぇ。ええっと……鬼の宴会にジョインしてエンジョイした1爺が鬼に瘤をもがれて、羨ましがった2爺が鬼の宴会にジョインしたら1爺の瘤をジョイントされたと。」
「そんなジョイジョイうるさい話だったのか……。」
「う〜ん、これはジョイフル。」
「ジョイに満ちてるなぁ……。」
「あさぎちゃんだっておジョイ様じゃあないか。」
「色々捻じ曲がってるなぁ。」
「将来の夢は常勤医?」
「惜しいの来たけどなりたくはないなぁ。」
「なんでぇ?」
「我らがあーかい部の顧問を見てごらんよ。」
あさぎときはだが所属する『あーかい部』の顧問は養護教諭である。
「う〜ん納得。」
「白ちゃんかわいそ。」
名前は白ちゃん……ではなく白久澄河。
「かわいそうだからお胸に瘤つけてもらうか。」
「嫌だよほっぺに巨乳ぶら下げてるの……。」
「こぶとり爺さん巨乳説だとぉ……!?」
・・・・・・。
「「きっつ……。」」
夜、あさぎの部屋。
「さて、と。こんなもんかな?」
あさぎはスマホの文字を打ち終え、伸びをした。
あーかい部は、小説投稿サイトに作った部のアカウントから、日常をケータイ小説として投稿しており、これが活動実績になる。
「さ〜てと、報告報告……うわ、まだ既読1じゃん。」
あーかい部!(4)
あさぎ:投稿完了
きはだ:品が足りませんわよ
あさぎ:オーーッホッホッホ!投稿完了しましたわ♪
きはだ:やればできるじゃありませんの
あさぎ:ここまで既読が1しかつきませんわ
きはだ:みなさんスマホがお逝きになったのかしら
あさぎ:さっさと読んでこいざます
きはだ:ざますは違くない……?
あさぎ:急に素を出すじゃん
きはだ:きはだちゃんにお上品なのは似合わぬよ
あさぎ:確かに
きはだ:そこも否定する所だよぉ!?
きはだ:読んできた
きはだ:なんだいあのIQゼロのタイトルは
あさぎ:フィーリング
あさぎ:みんな失踪してるさなか活動続けてるだけ私たち偉くない?
きはだ:否定。
あさぎ:そこは肯定しようよ
きはだ:肯定するとあさぎちゃんと良い雰囲気になっちゃうじゃないかぁ
あさぎ:きはだは私のストライクゾーン通り越してファー!だから大丈夫
きはだ:そんな、私のキャディさんだなんて……あさぎちゃん大胆///
あさぎ:OBだよ……
きはだ:もう一回遊べるドン!
あさぎ:届かないフラグに一生クラブ振り続けてろ
きはだ:フハハ……わたしが場外に飛ばし続ければ他のプレーヤーもゴールできまい!
あさぎ:タチ悪っ!?
きはだ:にゃんこだもんね……
あさぎ:衣はバリ立ち派だが!?
きはだ:そう言うと思ったぜ……!
きはだ:[画像を投稿しました]
あさぎ:手作りカツ丼……しかも卵でバッチリとじられているだと……!?
きはだ:ふにゃふにゃだよぉ?
あさぎ:ぐああ……!?
きはだ:野菜もしっかり食べよう
きはだ:[画像を投稿しました]
きはだ:シャキシャキだぜ……?
あさぎ:しかもちゃっかり品性の千切り添えてやがる!?
きはだ:どうして負けたか明日までに考えておいてください
きはだ:ほな、いただきます
きはだ:ごちそうさまでした
きはだ: [画像を投稿しました]
あさぎ:明日コンビニでカツ丼買うから良いもん
きはだ:ふにゃふにゃのヤツをかい?
あさぎ:ぐあああ……!?
初めましての方は初めまして、前シリーズから読んでくださっている方はお久しぶりです……
1ヶ月ぶりの新シリーズでございます。
初見さんでも支障なく楽しめるように書き連ねていく所存ですので、面白かったらこっからだけでもご愛読いただけると作者さんはのたうち回って喜びます。