愛した君へ
ずっと別れが怖かった。あんなに遊んだ友達でも、愛を伝え合った大切な人でさえいつかは過去のものになってしまう。それがひどく寂しくて、悲しかった。
教室からでると、いちょうの木が見事なまでに色づいていて秋も深まってきたことを知らせてくれる。少し澄んでいるその匂いはどこか懐かしさを連れてきた。ちょうど君との別れから一年がたっていた。
かつて一緒に歩いた道を辿ってみる。
パラソルの下で一緒に課題をしたこと、あの時は確か夏でお互いもう課題なんてそっちのけで駄弁ってたっけ。落ち葉に覆われたテーブルを見ながらそう呟く。
もう少し歩けば君と一緒に探検した裏道が出てきた。確か乗ってた自転車がパンクして家まで引きずっていったっけな。
歩くほどに思い出のかけらが降り積もって涙があふれそうになる。でも---この涙は痛みじゃない。これはきっと少しの寂しさとどこか満たされるような気持ちだから――
あの日々は決していいことばかりじゃなかったけれど、とても大切で、確かにあった、かけがえのないものだった。僕は決して忘れないだろう。
さて、最後の思い出の場所だ。最初で最後の恋が始まった場所、あの日は雨上がりの夕焼けがとても綺麗だったのを憶えている。
少し濡れたアスファルトに自転車を引く彼女と僕。僕は言った、
「あなたのことがずっと好きだった」と。少し声が震えていた気がする。君と付き合えたあの日以上に幸せな日が来ることはもうないんじゃないかって今でも本気で思っている。だからね、僕ももうそろそろいくよ
ありがとう、僕に幸せな時間をくれて
ありがとう、好きじゃ足りないくらいに愛してた
じゃあ、ばいばい