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3章33「愛には試練があるということ亅

「僕の家には、ここからかなり離れた国境近くの山岳地帯に領地をもっているのです。近頃、そのあたりに、盗賊団が出没するようになりました。

奴らは夜間に国境を越えてきて、あたりの鉱物を荒らしたり、倉庫を破って作物を盗んだりをしていたのですが、ついに、領民の家を襲って納屋に火をつけ、けが人を出したのです」


 テリーは静かにそこで口を閉じた。アリアはただうなずいて、ハンカチを握っていた。


「……我が家は領民を守らなくてはいけない、そこで僕が現地を調べに行くことになったのです。もちろん信頼できる従者や、武器の扱いに慣れたものを一緒に連れていきますが、しばらくは戻れないでしょう……」

「テリー様」


アリアは小さな声で尋ねた。


「危なくはないのですか」

「……少しは危険があるでしょう。ただ、僕は誰かの報告を聞いて判断するより、直接、その領地に行って調べて、早く手を打ちたい。

こうしている間にも、また犠牲者が出るのかもしれない、そう思うと自分が行くのが一番だと考えたのです。両親も心配をしていましたが、僕は馬も銃も慣れているし、僕以上の適任はいないと思っています……」


 アリアは驚いて目を開いたまま、物が言えなくなってしまった。エリはアリアのそばに寄り添って、背中を支えた。


「驚かせてしまって申し訳ありません。僕は、毎日あなたのそばにいることができて、今まで生きてきてこんなに楽しい日々はなかった。改めてお礼を申し上げます……。しばらくはお会いできませんが、どうぞお元気でいてください」

「……テリー様、いつ出発なさいますの」

「明日の早朝に発ちます」

「明日……!」


 アリアはショックを受けたように繰り返した。


「もう、私はテリー様にお会いできませんの?」

「そんなことはありません!」


 テリーはアリアの座るベンチの近くにを片膝をついた。

「僕はかならず帰ってきます。一か月か、二か月か、あるいはもっとかかるかもしれませんが、かならず無事に戻ると約束します。

僕は、アリア嬢、あなたが僕を待っていてくれると思わせていてほしいんです。僕の勝手な思い込みだとしても……」


 テリーはエリの方を見た。


「エリ、僕から頼むようなことではないのかもしれないが、どうか今まで通り、アリア嬢のことをそばで守っていてほしい。そして、いつも思い出させてあげてもらいたいんだ、

『この僕の真心はアリア嬢にすべて捧げたもので、決して変わることはない』

と……。エリ、どうか君には僕の誓いの証人になってほしい」


そして、改めて涙ぐんでいるアリアの方を向き直った。


「アリア嬢、僕の心はあなたのものです。あなたは美しい方だが、それ以上に心が美しい方だ。

僕は初めて会った日にすぐそれがわかりました。あなたはあんなに、みんなからほめそやされるように美しかったのに、決して高ぶった態度を見せず、会場の使用人たちにも優しくほほ笑んでいたし、高齢の婦人がそばを通る時には、さりげなく手を添えて自然に助けていました。僕はそれに心を打たれたのです」


 アリアは、思いがけない言葉に驚いて、テリーの顔を見た。テリーはうなずいて言葉を続けた。


「ただ美しいだけの方なら、僕はこんなに心を惹かれなかったでしょう。アリア嬢、僕は心からの愛と誠をあなたに捧げます。

たとえ、あなたが僕のことを嫌っていたとしても、僕の気持ちは変わりません。誰に聞かれても、僕はこの気持ちを堂々と言うことができます。だから、エリ、君にも聞いてもらってよかった……」


 アリアは突然の別れに耐えられないように肩を震わせていた。


「アリア様……」


 エリはアリアに寄り添い、耳元でささやいた。


「テリー様の旅立ちを祝福して差し上げましょう。お辛いでしょうが、どうか力を出して、笑顔で見送って差し上げてください」

「エリ……、私」

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