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2章20「美しくなりたいと思うこと、それを見透かされるのは怖いこと。でも、それを乗り越えてこそ生まれ変われます亅

アリアのトレーニングが始まった。


まずは毎日の散歩から始まった。午前と午後に、アリアはエリ、ときには執事のシモンと庭を歩くようにした。


「外に出ると、お腹がすくのね。お昼ごはんがおいしくなるわ亅

「アリア様、とても顔色が良くなりましたね。ますます美しくなられました亅


運動の効果があらわれ、アリアのウエストは引き締まり、顔の輪郭もスッキリして、ぐっとあか抜けた印象になった。


「夜もすぐ眠れるのよ、というか、遅くまでは、眠くて起きていられないの亅

「カンペキです亅


エリは、アリアから「面倒だわ亅「わたしなんか亅

という言葉が聞かれなくなったのに気がついた。


体力と心の安定が熟したと判断して、エリは仕上げにかかった。シモンを相手のダンスのレッスンをはじめた。外部の講師はアリアが抵抗したので、屋敷の中で、姿勢、立ち居振る舞い、会話のマナーをごく簡単におさらいした。


仕上げには公爵の妹の、アリアの叔母君に来てもらい、検分してもらった。他家の令夫人である叔母君は首を傾げながら笑顔で言った。


「ちょっと危なっかしいけど、かわいいから大丈夫!お呼ばれには、わたしが手助けするわよ!亅


そして、アリアにとっては、数か月ぶりのパーティの予定が決まったのだった。


「パーティーにお呼ばれの当日はホリーに手伝ってもらって、髪を結い上げましょう。あの子は上手だということです」

「首やうなじが丸見えになるんでしょ?……でもわかった、エリを信じるわ」


 アリアはエリの手を握った。


「でも、少し怖いわ。いつもなら私のことを、誰も見ないからいいけれど、少し目立つような装いをするでしょう。みんな、急に私が変わって、どうしたんですかとか、変だよ、とか言ってくるかもしれない。口にしなくても、心の中ではきっと思うわ。急にあの子は、美しくなりたいと思って、頑張ってきたんだなって」

「当日は伯爵様が一緒におられるのでしょう」

「でも、エリがいないと、どういう風に話したり、ふるまったりしたらいいかわからないわ」


「アリア様これを身に着けてください」


 とエリは真珠が垂れ下がるイヤリングを差し出した。


「まあ、キレイ」

「これはただのイヤリングではありません。これを付けると私の声が聞こえます。わたしのあるじのリード様からお借りしました」

「こんなすごいものがあるのね」


と、アリアは感心した。


「そして、アリア様がイヤリングを付けている間、アリア様のお顔を向けている方の様子が私にも眼鏡を通して見えるようになっています。音も聞こえます。これで私が、こっそりと控え場所からアドバイスを差し上げます。どうぞ安心して行ってください」


「わかったわ。エリが助言してくれるなら、心配はいらないわね。私、いつまでもうじうじと勇気のないことを言っていてはだめね。がんばって、いままでとは違う自分のようにふるまってみるわ」


そして、パーティ当日。


パーティーに呼ばれたお屋敷の、メイド用のダイニングを抜け出し、キッチンの隅で、エリはアリアに指令を送っていた。


「アリア様、動作はゆっくりと、優雅に行いましょう。そのように突然さっと扇子を取り上げてはだめです。まわりの方々が、びくっとしました。一呼吸をついて、緩やかに手を延ばして、そっと指先をそろえて優しく持ちましょう、わしづかみをしてはいけません。……そう、そんな感じ。エレガントです」


「う……、いろいろむずかしいのね」

「お顔はみえませんが、今の声は、しかめっつらになっている声ですね?優しくほほ笑んでいてください」

「ほっぺの筋肉がプルプルしてきそうよ」

「それでいいのです」


今のところは大きな問題はない。というより、むしろ上々の出来栄えと言っていい。


 アリアが顔を合わせた男女は、みなアリアの美しさをほめそやし、それは決してお世辞だけで言っているようではなかった。アリアも緊張しながらも、なんとかやっている。むしろ、余計なことをしないほうが、今のアリアにはちょうど良い。


 そこにいるだけで十分すぎるアリアの美しさだった。新調のドレスは体の線を引き立て、高く結い上げた髪は、白いうなじがいかにほっそりと長いかを強調した。恥じらいにほほを染めて、ぎこちなくほほ笑むアリアは、その可愛らしい初々しさで、出席者を魅了しているようだった。

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