1章17「キラッキラのイケメンで練習をしておけば 普通の男性は怖くなくなるのではないでしょうか亅
毎日投稿しますよ〜。
「恰好の練習台がいましたよ」
「え?」
「いえ、ちょうど私の主人がこちらに向かっています。初めての練習台には、もってこいの男性ですね。私からアリア様の事情を説明できますし、人当たりのいい、腹黒……いえ、さっぱりとした気性ですから、アリア様もリラックスして応対できるでしょう」
アリアはおじけづいた。
「いきなり練習なの、困るわ!それに、知らない殿方に、美しく見られるための練習をしているだなんて、知られるのは恥ずかしい……、無理よ、エリ!」
「大丈夫です。そんな、気を遣う必要のあるかたではありませんから」
まだもじもじしているアリアに、
「それとも、よそのお屋敷でのパーティーにお招きされたとき、事情を知らない男性相手に、自分だけで練習ができますか?私は会場にははいれないのでアリア様のそばに控えているのは無理ですよ……」
と、耳打ちした。
「心配はいりません。それに、わたしのあるじは家柄も良いですが、顔もかなりのハイレベルです。それだけ上等のお相手で度胸試しができたら、普通の男性を相手にするのがぐっと気楽になりますよ、きっと」
答える間もなく、二人のそばにリードは到着してしまった。アリアに恭しく一礼すると、
「アリア嬢、サキューマ家のリードと申します。こうしてお目にかかれて大変うれしく思います」
輝きがこぼれるような満面の笑みを炸裂させた。
「エリ……、もう無理だわ。まぶしくて見てられない……!」
顔をそむけて、悲鳴のようにアリアはささやいた。
「しっかりなさってください、たとえなにか失敗しても、気にかけるような方ではありませんから」
エリは請け負った。
「アリア嬢、ご機嫌はいかがですか」
エリの耳に口を寄せて、
「……ねえ、私どうしたらいいの?頭が真っ白になって何も言えないわ」
「ただ挨拶しているだけでしょう、なにも特別なことはいらないですよ。普通になさってください、そして、頑張って笑顔をつくりましょう」
「笑顔……」
エリは励ますように、強くうなずいた。
「ええ、大丈夫です、ありがとう」
そして、長くたれた前髪をかきわけると、おずおずと口の端をあげて、まだぎこちないながらも笑顔を浮かべて見せた。やわらかいほほにえくぼが刻まれるのを見て、エリは、じんと胸にこみあげるものを感じた。
(なんて可愛らしい)
「それはよかった、あなたの素晴らしい笑顔は、春の花が一度に開いたようですね!」
輝く歯並びをみせてリードはうなずいた。
「はい、大成功です!」
と、エリは拍手をした。
「これでいいの?エリ」
「上出来です。私も感激しました」
ニコニコと二人を見比べて、
「なにか楽しいことをしているんだね」と、上機嫌のリードが口を開いた。
そしてエリの耳元に顔を近づけた。
「元気だったかい?会いたかったよ亅
小声でささやくリードに、
「それはどうも亅
エリも小声で淡々と返した。
「冷たいなあ。こうして春の庭の中で見る君も素敵だね亅
「顔がブスに見える特製秘密メガネをかけさせておいて、そういうことを言うのね亅
「大丈夫 僕の心の目にはちゃんと君の可愛らしさが見えてるから亅
「私の心の目にはあなたの腹黒さがよく見えてますよ亅
リードはなぜか嬉しそうに微笑むとアリアに向き直った。
「アリア嬢、このエリはときどき手厳しいですが、根性のある、忠実なメイドです。どうぞお手元でかわいがってやってください」
どぎまぎしているアリアに、
「はい、そこで難しい、立派なことを言おうとするから緊張してしまうのです。聞く方は、特別に珍しい返事は期待していません。簡単に答えてください。そして、笑顔です」
「わかりましたわ、リード様」
そして、少し恥ずかしそうな微笑みを見せた。
「はい、アリア様、完璧です」
「こんなのでいいの、エリ」
「はい、それでいいのです。わかってもらえましたか」
「あまりに美しい男の方なのでドキドキしてしまったけれど、なんとか笑えたわ。
いままでわたし、どうしよう、何を答えようと思って、怖い顔を作っていたんだってわかったわ。とにかく、どんなことをいうかより、ちゃんと微笑む方がずっと大切なのね」
うなずいて、エリは「素晴らしい笑顔でした」と答えた。
キラキラは眼福ですよね!
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