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15.自白

 目の前に現れた神(自称)による説明は小難しくて全てはわからないが、荷物を取り寄せることが出来ないことだけは明確に理解できた。まったく当てが外れてガッカリである。しかしここでなぜかジョアンナが神へと食って掛かる。


「ちょっと神様? うみんちゅはなんで世界をまたいで移動してしまったの?

 元の世界で馬車にはねられたらしいけど、こっちで車にはねられてもピンピンしてるのよ?

 この男が馬車にはねられて死んじゃうなんてどう考えてもおかしいじゃないの。

 それにわざわざこんなところまで呼びだしたのも不自然よね。

 事情があるなら地球に現れてすぐに説明してあげれば良かったんじゃない?

 それなのに私の目の前で自転車に当て逃げされちゃってさ。

 よく考えてみればあの時も突然湧いて出て来てはねられたように思えるわ。

 神様、あなたなにか隠してるんでしょ?

 おかしな物言いではぐらかさないできちんと説明しなさいっての!」


「こ、この小娘が、神をなんだと思ってるのだ。

 まったくけしからん世の中になってしまったもんじゃ」


 まあ俺にしてみればどっちもどっちと言ったところだ。だが、わざわざ出て来たにもかかわらず何もしてくれない神と、神と言う超常的な存在へまくしたてる少女なんてそうそう見られる見世物ではない。


「一体どんな事情があってうみんちゅがこっちの世界にやってきたのよ!

 ちゃんとわかるように説明してよね。

 急に知らない場所へ放り出されてかわいそうじゃないの!

 アタシは友達が出来たみたいで嬉しいけどさ」


「ま、まあお前の言い分はもっともだがな?

 ワシは神じゃぞ? 人に何でも話せるはずがないだろうて」


「ではなぜ俺の前に現れたのだ?

 何も話さず何も寄こさないならわざわざ顔を見せる必要はなかろう。

 しかもこんな回りくどい方法を取るのは確かに裏があるとしか思えん」


「いやいや、全てを話すことはできないと言っただけで何も言わんわけではない。

 お前には伝えなければならないことがあるのじゃ。

 一部の記憶が欠落していることは認識しておるな?

 これは世界をまたぐときにおこる避けられない現象じゃ。

 そして一番知りたいであろうことだが、お主は元の世界では確かに死んでしまった。

 馬車にはねられた際に後頭部の急所を城壁の角へぶつけてしまってな。

 本当に不運だったのと今までの功績を考慮して異世界でよみがえらせたのじゃ」


「ふむ、そんなことが出来るならその場で生き返らせてくれても良かったのではないか?

 わざわざ手の込んだ真似をした理由がわからぬ。

 しかもこんな子供になったのはなぜだ?」


「それは―― 詳しくは言えん。

 神による奇跡にも制限があると言うことじゃよ。

 だからあまり深く考えずこの世界で生きていくがよい。

 それと固有能力章は持たせた学生証の後ろのほうに表示されるようにしておいたからの。

 あとこの平和な世界で武具はいらぬと思うが何もないと不安じゃろうから剣だけ授けよう。

 自分の剣を思い浮かべ念じることでその手に実体化出来る優れものじゃ、感謝せよ」


「そうか、神も多少は役に立つのだな。

 ついでに財産を与えてくれても良いのだぞ?」


「こら、調子に乗るでない。

 世界が違うので出来ることも限られる中、精いっぱいしてやったのじゃぞ?

 どうも貴様らは敬意や感謝の気持ちが足りんのう……」


「ねえンダバーの神様さぁ、アタシにはなんかないの?

 うみんちゅが一人でいる時じゃなくてわざわざアタシがいる時に出て来たんだしー

 なにか特別な事情とかご褒美みたいなのがあってもいいじゃん?」


「いやいや別に何もないぞ?

 姿を現すことには多少問題はあったが、お主が居なければこやつはたどり着けなかったしのう。

 ワシが姿を現せるのはこの神殿をはじめとして数か所しかないのじゃ」


 所詮別世界の神、制限が多いと言うことなのだろう。それにしても武器が手に入ったのは幸いだ。まあ使う機会はなさそうだがもしもの時には頼りになり心強い。


 神などと言う、普段生きていくためには居ても居なくても何ら影響のない存在であるが、まさかこうして出会うと言う稀有なことがあってもなお役立たずであったとは落胆するほかない。それはジョアンナも同じことらしく、なにやらブツブツと不満を垂れている。


「なんかガッカリだわ。

 神様に会えるなんて今まで考えたこともなかったのにさ。

 なにも特別なことがないなんて信じられない。

 偉そうに振舞ってるけど敬うべきポイントが何もないわね」


「うんうん、姉ちゃんの言うことはもっともだよ。

 まったく使えない神だよ、困っちゃうよねぇ」


「あら、ちゃんとわかってくれる人がいるんじゃない……

 ―― って君は誰!?」


「なんだ、今度は別の神か?

 さすがこちらの世界は八百万も神がいるだけのことはあってよく出てくるなぁ」


「僕は地球の、というか日本の神のうちの一人だよ。

 ちなみに本当は八百万人もいないからね。

 八百万やおよろずの神ってのは、万物には神の力が宿っているって意味なんだ」


「えええ…… 本当にまた神様なの?

 ちょっと大安売りしすぎじゃない?」


「いやあ僕も出てきたくは無かったんだけどさ。

 ンダバーの神があんまりにも勝手な事するんだもん。

 ここは僕の管轄世界だって言うことわかってるでしょ?」


「う、いや、それは…… もちろんわかっておる、が……

 事情があるのだから仕方あるまい……」


「事情ってなに? この子をうっかり殺しちゃったこと?

 それとも間違えて転生させてしまったこと?

 それとも――」


「わーわあー、それ以上暴露するのはやめぃ!

 って…… もう手遅れか……」


 どうやら先ほど聞かされたよりも深い事情がありそうだ。首根っこ捕まえてじっくりと聞きたいところだが、実態は無いようでどちらの神も半透明な姿が浮かんでいるだけだ。


「それじゃ洗いざらい吐いてもらいましょうか。

 その上でこれからどうすべきか考えましょ」


「うむ……

 この男、グライブと言うんじゃがンダバーでおそらく一番強い戦士なんじゃ。

 ワシは御前試合を見ようと予選が行われる街へと出向いた。

 その時そこらの子供に乗り移って行動してたのだが、人ごみに蹴り出されてしまっての」


「まさかそれを助けたのがうみんちゅなの?

 やることがいちいちカッコいいわねぇ」


「まあそれでワシは傷一つなく済んだのだが、グライブは後頭部を打ちつけて死んでしまった。

 慌てて時間を戻して無かったことにしようとしたんじゃがなぁ……

 しpp…… 誤って転生させてしまったんじゃよ」


「今アンタ失敗って言いかけたでしょ!

 ちょっと適当すぎない?

 ンダバーはこんなんで平気なわけ?」


「俺も心配になってきたが、だからこそ神への信仰が一般的ではないのだろうよ。

 そう考えるとすっと納得できないか?」


「たしかにー」

「まさにその通りだねー」


「みんなしてワシをいたぶるでないわ。

 しかも地球の神までそんな……」


「だってさ、ヤバすぎでしょ。

 殺しちゃうだけで相当不味いのに、生き返らせようとしてさ、しかも失敗。

 んでルール無視して転生させておいてその後の面倒もみないなんてさぁ。

 統率神が知ったらメッチャ怒ると思うよ?」


「だからそれだけは勘弁してくれって。

 出来る限りのことはするから」


 それは神同士の話し合いだったはずなのだが、なぜかジョアンナはにやりと不敵な笑みを浮かべたのだった。


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