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地球の時間11

私は久しぶりに咲ちゃんの木の世話をする為、学校を訪れると、ついこの間まで小さかった木が、頭を上げてみなければ木の先まで見えないほど高く成長していた。私は思わずそれを見て「咲ちゃんずいぶん大きくなったね」と木に向かって声をかけた。時折木の枝が風に揺れ、咲ちゃんが微笑んでいるように見えた。それから私は高くなった木の先端に目を向けていると、その横にある校舎の窓から生徒達が顔を出し

「ハルさん、ハルさん、こっちへ上がって来て、上がって来て」と声を上げ手招きしていた。私は生徒達の呼びかけに答える為、校舎の階段を上り始めました。すると生徒達が二階から降りて来て、階段を上っている私の手を取り支えてくれた。

「有難う、私もあなた達の頃は元気だったんだけど・・・」と子供達にお礼を言った。やっとの思いで上がって来た校舎の窓からの眺めは、ほんとうに最高だった。窓の前には高くなった咲ちゃんの木の先端部分が目に入り、その前には、生徒達が遊んでいる校庭、その向こうには近代的で平和になった咲ちゃんと私がかつて住んでいた長崎の街が広がっていた。私は戦争から復興し緑に囲まれた山々、眩しい太陽の光、教会の鐘の音、路面電車の汽笛、それらを掻き消すように校庭から聞こえる子供達の声、すり鉢状になった街にはいろんな声が響き渡る。そこには、戦争中のあの暗く元気な子供達の声まで押しつぶされそうな心、あちこちで悲鳴や泣き声が聞こえる光景とはまるで違っていた。私はその時、時間という物の不思議さを感じた。地球の歴史から比べるとほんの何十年かの違いで、人間のある行動によってこうも環境が変わることの重大さをその時感じていた。

 季節は夏を迎え、校長先生からある一本の電話がかかって来た。校長先生は、

「ハルさん近々大きい台風が学校を直撃しそうなので、咲子さんの木が台風で倒れないように、木に支えをしても良いですか?」との了解の電話であった。私は、わざわざ私に連絡して下さった校長先生に対して、

「もちろんです。あの木が花を咲かせる前に枯れないように、どうかよろしくお願いします」と先生に伝えた。次の日私が木の事が気になり学校へ行くと、咲子の木の前では多くの生徒が先生と協力して木の周りに囲いなどをする作業をしていた。その作業中、ひとりの生徒がある物を見つけこう言った。

「これ、これ、これよ見て、見て面白い」付き添って作業していた先生が、

「どれどれ、どうかしたのか?」すると生徒は

「先生これです。この木です。なんか咲子の木を支えているように見えるんですけど・・・」

「あ、そうだね、そう見えるよ」私はその言葉を聞いてその木に近より目を凝らして見て見ると、それは咲子の木のすぐ後ろにある木が、まるで大きくなった咲子の木を後から斜めにの伸び、咲子の木を風で倒れないように支えているように見える。それを見て私は、この木だけは、原爆に被爆しやっと花が咲く時を迎えているので風で枯れることが無いよう守っているのだ、植物にもきっと心があるとその時思った。

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