地球の時間1
どこまで行っても暗く、とこまで行っても終わりがない宇宙。誰もいない。何も見えない。今ただ見えるのは、遠くにある無数の小さな星の光だけ。私は寂しくてたまらず何とかその光があるところまで辿り着けないかと思っているが、このままでは何時になるのわからない。だって、いま自分が居るところがどこで、今という時間がいったい何時なのかさえもわからないから・・・・・・
そう感じるのは、私にとっての今が現在と思う時間であっても、周りが何ひとつも変わらないので、私はまるで時間が止まったパノラマ写真の中にいる。
私が以前住んでいた星では、あらゆるものが時間という軸よって変化し、特別に私自身で時の変化に気づこうとしなくても、周りには多くの生命が宿り、その中で私は育まれ、時間の中で生きているとわかっていた。
しかし、ここはどうだろう。何も無い、何も聞こえない。ここへ来るまで何千という星へ立ち寄ったことだけは覚えているが、どの星も遠くから見るとまるで宝石のように綺麗だった。しかし実際にそこへ行って見ると、どの星も、ここと同じく生き物の声は聞こえず、時間は止まっていた。
それからどれだけ時間が経ったのかわからないが、なぜか私がいるところの時間軸が動き始めた。その時間軸に乗って次第に正面から眩いほどの大きな光が見えて来た。その光に包まれ大小の星が輝いている。私はこのような光景は何度も見て来た。いままで、大きな光に包まれ輝いていた星はいくつもあった。ある星は、その光に近すぎて何もかもが溶けてしまいそうで、そこには生物などいなかった。またある星は光から遠すぎ凍ったような星で、やはりそこにも命の芽生えはなかった。どこを訪ねても、何も無くどの星も時間は止まっていた。やっぱりこの宇宙には生命が宿る星などないのだろうか? そう思っていると、今まで見たことも無いほど青く輝いている星を見つけた。いったい、いったいこの暗闇だらけの宇宙に、こんな綺麗な星があるとは考えられない。早く、早く、そこへそこへ行ってみよう。私の強い思いが宇宙に通じたのか、私の体はいつの間にかその星の中に吸い込まれていた。
その星は、地球という名の星だった。こんな暗闇の中に高温過ぎず低温すぎず大きな星の光の届く微妙な位置にある。そのお蔭で、多くの生命が宿っている。その美しい星からは、いろんな生き物の声が聞こえる。緑豊かな植物。海という水の中、川という水の中にも魚などいろんな生き物がいる。大地を駆け抜ける動物達。青い空を元気に飛び回る鳥達。この星の中では、空気というものが存在しているお蔭で多くの命が育まれている。こんな暗闇だらけの宇宙の中で、まさにこの星は奇跡に包まれた星だ。ここは、確かに時間とともに命が宿りいろんな生き物がいる。やっと時間が動いている星を見つけた。何もかもが本当に素晴らしい。
しかしこの星がどんなに時間が動き素晴らしい星であっても、ここで生きて居られる命はたった一つだけ、もしもその命が何らかの形で失われてしまうと、その瞬間時間は止まり、どんな生き物であっても、時間を逆戻りすることはできず、この星にいる全ての命は地球から消えて無くなる。
だからこそ、この星では、みんなその大切な命を絶やすまいと協力し合い生きている。あらゆる生物が互いに連鎖し、これらも微妙な感覚で地球の生態系を維持している。しかしそんな地球を作っているのは、俺たちなんだと、人間という動物が幅を利かせこの星を支配している。自分達だけでは決して、空気だって、食べ物だって、水だって作れないその動物が、生態系の連鎖を乱し、あろうことか人間同士二つと無い命の時間を止め合い、地球という生命宿る奇跡星をやがてその争いで、時間が止まった星にするつもりなのか?
まさに私はあの日あの時、原爆で、この星がまるで時間が止まり死んだ星になってしまった大地を友人と二人歩いていた。