アルダ・ラズムの兵士
大都市イルモニカから離れた
外れ町スエル・ドバード
そこにある酒場
"ボルカ"は、
夜を向かえるとその場所に荒くれ者たちが集まって来る。
まるでお決まりのごとのように..
そこに集まった者たちは、酒を飲み、愚痴を叩き、
または、賭けをして遊び、昼間のストレスを発散させるかのように、ため息がてらにまた酒を飲む。
そして最後に眠る時間を探すのである。
そんないつもの酒場で独りで飲んでいた来客の老人が気づいたように口を開いた。
来客「おい! 店主や
今日は、あの紅い毛のべっぴんさんはいないのかい?」
ニズル(店主)「すまないね。
それがまだ戻って来てないんだ。
あの女...何処で道草を食ってるんだ?
全く...それにそんな心配など不要じゃよ
あの女に休みなどありはせぬからな..
戻って来てたらあんたのその飲み干しかけたジョッキに酒を注がすさね?」
来客「そうかい? そいつは嬉しいね...
ところで店主よ...今日は、その紅い毛のねーちゃんの空いてる時間は..あるのかい?」
ニズル「すまないね? 今日は既に予約が入ってるんだ..」
来客「なに...空いたらで構わんよ?
遅い深夜でも構わんのだがね?...」
ニズル「本当にすまないね...
今日はあの女、あるお方の貸し切りなんだよ?」
来客「ほーそいつは元気なこったね?
..で、そんな貸し切る元気な奴とは誰なんだね?」
ニズル「ほれ? あそこに座っている...ズバル様ですぜ?」
そう言って店主ニズルは酒場の隅っこのテーブル席で飲む5人のアルダ・ラズムの兵士に目を遣った。
来客「ほー...これはこれは、ズバル様のお相手と来たか...それでは今夜は、
ワシでは役不足じゃな?...カッカッカッカ..」
ニズル「まあ、そういうことですな...また次の機会にとっといて下され...」
ニズルがそう言い終えると酒場の後ろにある路地に繋がる扉を乱暴に開け、カウンター席に向かって来る足音とともに大きな声で
セシリア「...すまないね! 少し遅れちまったよ..」
ニズル「貴様! 何処で道草を食っていた!
もう既にズバル様たちはお越しだぞ!」
セシリア「まあそうカッカすんなよ?
えー酒は? どれだい?」
ニズル「これじゃ! とっとと運んでこい!
お詫びも忘れるなよ!」
セシリア「はいはい..
分かってるよ。
...てめぇの声だけで充分に向こうまで届いてるって..全く..」
そうニズルの言葉をかわしながらアルダ・ラズムの兵士が座るテーブル席の前まで来ると
セシリアは、皮肉を交えて
セシリア「大変遅くなりました。アルダ・ラムズの皆さま、お詫びの印としてラム酒をお持ちしました?」
ズバル(団長)「ラムズではない...
ラズムだ。
貴様...それが面白いとでも思っているのか?」
セシリア「いいえ...
ただ言いたかっただけですわ...
ズバル様..?」
兵士A「キサマ!...誰に向かって口を利いている!?」
そのセシリアの挑発的な言葉に対して1人の兵士が鼻息を荒くして立ち上がるとセシリアの胸元の襟を強引に掴み、揺すった。