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部活動始めました

今日はここまでです。明日、3話投稿する予定です。

 ある日、俺と雨は神崎に呼びたされた。なんでも、集まる場所が決まったとのことである。


「ここか……?」


 海沿いの第3倉庫。うん、昭和の映画で出てきそうだ。その辺にゴロツキとか居ないよな……?


「貰った地図によると、ここで間違いないみたいだね」

「だよなぁ……」


 地図を受け取った瞬間から、何となく倉庫だということは分かっていたのだが、まさか本当に倉庫だとは思わなかった。


「確かに予想外ではあるけどね。姫が何も無く僕らをこんな所に呼ぶとは思えない」

「それもそうだな……」


 雨は非常に純心である。こんなやつを騙している、と考えると少し心が痛くなる。


「ほら、入口はあそこみたいだよ」


 閉め切られた大きなシャッターのそばに、引き戸がある。一応、ノックをしてみる。すると、神崎が戸を開ける。


「お二人共、ようこそ。とりあえず、中へどうぞ」

「はい、それでは失礼します」


 倉庫の中は広かった。もちろん、こんな所にあるのだから広いというのは当たり前なのだが、ほとんど何も置かれていない状態で、隅の方にいくつかのソファーや机が置かれているだけだった。その側には本棚もおいてあり、仕切りは存在していないが、ドアに近いその一角だけ部屋になっている、といってもおかしくない表現であろう。


「姫、失礼ですがここは……?」

「ここは、私の家、いいえ、今は私が所有する倉庫です」

「は……? 神崎の所有物……?」


 何を言ってるんだ。こんな倉庫と言っても、この広さだ。ひとつを所有なんて、いくらかかるか分からないぞ。


「はい。この辺り一体はうちの所有する倉庫で、ひとつを譲ってもらっていたのです。集まれる場所、と考えると、やはりここが良いのではないかと思いまして」 


 確かにここなら、誰に盗み見されることもないだろう。だが、理解はできても納得出来ない俺がいる。


「おいおい、うちの倉庫って……お前ん家、そんなに金持ちなのかよ」

「ええ……あまり、言いたくはなかったのですが、私は神崎財閥会長の娘です」


 小さなため息をついて、彼女は言う。


「へえ……あの神崎財閥のねぇ……」

「思ったより驚かないんですね」

「まぁ、な」


 雨から顔だけでなく、姫と疑われるほどの振る舞いをどこで習得したのか、と疑問が残っていたのではあるが、むしろ納得である。つまり、神崎財閥の教育の賜物ということだろう。


「とりあえず、座ってください。お茶を入れますから」


 言われるがまま、ソファーに座り、そばにある本棚に目をやる。本棚には――なるほど、中二病関連のものか……もしかすると、神崎はここで1人中二病に明け暮れていたのかもしれない。そう考えると、涙が出てきそうになった。


「どうしたんだい? そんな、悲しそうな目をして」


 そんな俺の様子に気がついたのか、雨は俺に話しかけてくる。


「ああ、いや気にするな。あいつも不憫だと思ってな」

「不憫?」


 おっと、本音がポロリしてしまっていたようだ。


「いやな、誰にも言えない秘密をもって、こんな所で一人でいたと考えるとな」

「そうだね。僕には涼也という理解者がいたから、そういう苦しみはなかったからね……本当に、君には感謝してもしきれないよ」


 なんか、誤魔化すために言ったつもりなのに、勇者の勘違いのせいで、とてもは気恥ずかしくなってしまう。


「今度は僕の番だね」


 そう言って彼は微笑む。

 これが勇者クオリティと言うやつなのか。モテる理由がわかる気がする。俺には到底真似できないだろう。


「どうぞ、紅茶です。お二人共、何をお話されていたのですか?」

「男同士の話ってやつだよ。それより、これからどうするつもりだ?」


 テーブルに置かれた紅茶に砂糖を入れてから啜る。これがなかなかに美味い。こういうものの味については、あまり詳しくはないけれど、美味しいということだけは理解することが出来た。


「方針については、以前話した通りです。他に転生者がいたならば、こちらに引入れるつもりです」

「その転生者が乗り気じゃなかったら?」

「涼也、それはどういう意味だい?」

「他意はない。例えば、だ。神崎と雨が善とするなら、悪の転生者がいてもおかしくはないはずだろ? その場合はどうするつもりだ?」


 転生者の全員が全員、善とは限らないはずだ。人に恨みを持つような転生者だった場合どうするかを考えなければならない。


「そうだね。転生は何も人間限定のものじゃない。魔族も出来るはず。魔王に限っては敵対するような事は無いと思うけど、他はわからないね」

「魔王は? 何故です?」


 神崎は疑問に思ったのか、雨に質問をする。


「そうですね……今だから言えることですが、僕と魔王は交友関係にありました」

「勇者と魔王が……?」


 神崎は目を見開く。どんなお伽噺でも、勇者と魔王が友人であったというものはないのだ。勇者は狩る側で、魔王は狩られる側。それが、物語の摂理である。


「はい。はじめは言われるがまま、魔王を討伐しようとしていました。ですが、魔王と話し、戦い、そして、僕は魔王の夢と同じ夢を見るようになりました」

「魔王と同じ夢? なんですか、それは?」

「――人間と魔族の恒久平和……」


 気がつくと、思ったことが口から零れていた。


「あれ、涼也。話したことがあったっけ?」


 雨は驚いていた。話してもいなかったことだったから、それもそうだろう。


「いや、なんとなくだ。魔王の夢が人間の全滅なら勇者が賛同するはずないだろ? 勇者が賛同するなら、それくらいだと思ったんだよ」

「なるほどね。そう、魔王は平和を望んでいたんだ」


 魔王というのは、ものを滅ぼすべき存在であるというのに、なんとも特殊な魔王である。


「ですが、人間と魔物は戦争状態にあったのは……?」


 当然うまれてくる理由である。魔王が平和を望んでいるというのに、戦争をする理由なんてないだろう。


「戦争をしていたのは、魔王の反乱分子。つまり、一部の人間を嫌う魔族です。本来、魔王は関係がなかったんです。人間は魔物の一部との戦争を魔物全部との戦争と思い込んでしまっていたんです」


 ここで明かされる事実。勇者にしてみると、懐かしい思い出のようなものなのだろう。


「では、魔王は大丈夫だとして、その反乱分子が転生していた場合、どうするかという話ですね」

「そういうことになりますね。実際のところ、魔族自体はこの世界に存在しています」

「魔族がいる……?」


 そんな話は初めて聞いた。もしそうなら、今までどこかで出会っているだろうし、ニュースにもなっているはずだ。だけど、そんなものには出会ったことがないし、ニュースにもこれといって出ていない。


「魔族、と言っても下級魔族、魔物だけどね。ドラ○エでいうところの、スライムと思ってもらっていい。話は通じないから、交渉の余地はないね」


 なるほど。そういう類のものがこの世界に来ているというのか。しかし、この世界にあちらの世界にから来ている、という表現は怪しいだろう。もしかすると、初めからこの世界にいた、ということも考えられなくもない。


「なるほどな。その魔物はどうしてるんだ?」

「人的に無害なら放置、有害なら排除しているよ」

「排除って……」


 この世界では、ほとんど魔法というものが使えない。武器だってそう簡単には持ち運ぶことは出来ない。


「魔法の類がほとんど使えないという条件はほとんど向こうも同じだからね。徒手でなんとかなってるよ」


 雨は苦笑しながら言う。


「とは言ってもな……まさかお前、たまに怪我してたけど……」


 雨はたまに、体中にガーゼを貼っていたり、包帯をまいたりして学校に来ていたこともあった。そのときは、転んだだったり、階段からおちただったりと理由をつけていたのを覚えている。


「うん、まあ、そういうことだね……すまない、巻き込みたくはなかったんだ」


 こういうところだ。最近は幾分かマシなのではあるが、こいつは勇者であったがゆえなのか、人を頼らない。1人でなんでも解決しようとする。巻き込んで欲しい、とは言わないが相談のひとつでも出来たろうに。


「分かってるって。気にするな。しかし、よく魔物がこの世界にいるって分かったな」


 そこで疑問である。なぜ、こいつはこの世界で魔物を見つけられたのか。それも1度ではなく何度も。


「どうも、魔物には敏感なようでね。前世に得た勘に近いものだと思う」

「なるほど。そういうもんか」

「そういうものだよ」


 とりあえずは、それで納得するしかなさそうである。


「とりあえず、これからは言え。なにか手伝えることがあるかもしれない」

「分かった。そうするよ」


 とりあえず、魔物についてはこれくらいでいいだろう。それにしても、先程から神崎が静かである。何かを考え込んでいるようであるが、どうしたのだろうか。魔物に会ってみたいとか考えてなければいいのだが……


「姫様……?」


 雨も気になったのか、上の空の神崎を呼ぶ。


「――はい!? ……すみません、少し考え事をしていました。魔物の件については、毎回報告をお願いします」

「分かりました」

「そして、転生者の件についてですが、正直に言うと、良い策が思いつきません。相手から自分は転生者だ、と言ってもらえればそれに越したことはないですが、そんなことは無いでしょう。こちらから見つけなければならないとなると、慎重にならねばなりません。下手をすると一般人を巻き込んでしまう可能性がありますから」


 その巻き込まれた一般人第一号が貴方ですけどね、とは口が裂けても言えなかった。


「愚策ですが、魔物を追っていれば他の転生者と遭遇することもあるかもしれません。雨さんのように魔物を感知できる転生者なら魔物を追うでしょうから」

「そうですね。それしか、現状方法はなさそうです。涼也はどう思う?」

「実際それしかないだろうな」


 とりあえず、転生者についてはこれで話は終わりとなった。


「それと、雨さん。私に魔法を教えて貰いたいのです」


 いきなり何を言い出すかと思えば、神崎は魔法の教えを乞う。これが、この誰の人目にもつかず、そして広い場所を確保出来る倉庫に俺たちを読んだ一番の理由だろう。ここなら、基本何をしてもバレない。


「魔法を? ですが、この世界で魔法はほとんど使えないですし、そもそも、姫は魔法の使い方を知っているはずでは?」


「ええ、そうなのですが、あちらとこちらではどうも魔力の運用が微妙に違うらしいのです。ですから、少しでも使えている雨さんに教えてもらうのが良いかと思ったのです」


 いかにも、らしい理由をこじつけている。堂々と教えてもらおうとしているが、内心ヒヤヒヤしていることだろう。


「そうですか。分かりました。でしたら、僭越ながら、お教え致します」


 そんなこんなで、元勇者による魔法講座が幕を開けたのだった。

今明かされる、勇者と魔王の関係。魔王は転生しているのでしょうか。

そして、さっそく魔法を学び始める神崎さん。魔法適性やいかにっ!?


次回は魔法について語っていきます。


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