第一話 一面の灰色と一つの光
「これから、どうする?」
壊れた世界の中。
少女が声を上げる。
ぴとり、屋根から雫が落ちた。
地面の水たまりが大きい。
じめっとした空気。
ふと、空を見た。
一面の黒に近い灰色。
――雨の匂い。
――そろそろ、雨が降りそう。
はぁ、と少年はため息をつく。
そして、消沈した気持ちを振り払うように、問いかけてきた少女を振り返る。
「どうするって、どうするんだ?」
どこか俯き気味に、そう返事。
「…………さぁ?」
少女はぐるりと周囲を見渡し、肩を竦める。
――情報量、多すぎる。
途方に暮れる少女をよそに、何かに気付いた少年は歩き出す。
まだ壊れ方が優しいの建物に歩いて行って、壁をぺたぺた触った。
――これは、いけるかもしれない。
「取り敢えず、探索しよっか」
ここなら多分安全だろ、と呟く。
「大丈夫? 危険じゃない?」
半目の少女。
少しだけ眉を寄せた。
――気持ちは、分からないでもないけど。
「動かなかったら死ぬだけだって」
野垂れ死ぬよりは、マシだ。
やってみて、無理だったら諦めればいい。
「……それもそっか」
――食料も、水も、限られているんだし。
少しでも可能性があるなら、確保しておきたい。
最終的には、
「落ち着いて暮らせるようになりたいな」
遠い空を――どこか遠い過去を――眺めて、少年はこぼす。
――あの頃みたいに。
「そこまでできたら、完璧なんだけどね」
あはは、と少女は笑う。
ひょい、と瓦礫に乗っかり、微笑む。
――でも、安全第一だからね?
気を付けてよ? と少女。
「分かってるよ。だから、とりあえず安全そうなここの探索でどう?」
少年が指さしたのは先ほど触っていた建物。
「うん。いいよ。それがくろとの決めたことなら。私はついていく」
表面の塗装こそ剥げているものの、形はしっかりと残っている。
建物としての形が残っていて、壊れた住居というより、廃墟のような形状。
「あはは、ありがと。じゃあ、とりあえず試しにここ入って、それからは成果見て考えよっか」
言って、少年は金属製のドアを引いて開けて中に入っていく。
「ん。りょうかい」
足取りは、だいぶ軽くなっていた。