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クエスト3.冒険者登録をせよ!

「分かった。冒険者になろう」


 河部と沙羅は冒険者登録をすることにした。



「はい!ありがとうございます。1人1万イェンになります」

 青髪の女性、ジニーは、ニコッと営業スマイルを見せる。



 それを聞いて、河部と沙羅は困惑した。


「イェン.....この世界の通貨のこと?」

「ネーミングセンスを疑いますね。円と大して変わらないです」

「日本円....でいけないかな?」


 河部は財布から、諭吉を2枚取り出した。


「これでどう?」

「なんですか?その変なおじさんが描かれた紙切れは」

 ジニーは万札の端をつかみ、不思議そうに見つめる。


「ジニー。そのオジサンはな、『女性100人に聞いた好きな男性ランキング』で常に上位に君臨している男だぞ。それを変なおじさん呼ばわりとは!」

「なるほど、この顔で結構モテるんですね」

「いや、そういう訳じゃないが......とにかくこれでどうにかならないか?たのむ!」


 河部はジニーの前で手を合わせ、お願いする。

 


「まぁお困りのようですし、今回はタダにしてあげましょう」

「本当!?」

「その代わり、今度クエストの報酬で返してくださいね」

「分かった。ありがとう」

「ではこのガラス玉に、人差し指をそっと乗せてください」


 ジニーはそう言って、カウンターの隅にあったガラス玉を、河部の前に置いた。



「異世界版の指紋認証か。首相時代はよくやったな」

「このガラス玉は、触れた人の潜在能力を数値化してくれるんです」

「潜在能力.....。きっと僕には素晴らしい能力が備わっているに違いない」


 河部はガラス玉にそっと人差し指を乗せた。



 ピカー!!!!


 すると、ガラス玉が黄金に光り出す。


「おお!物凄い輝きだ」

 河部は期待に胸を踊らせる。



 光が収まると、四角い画面が河部の前に表示された。


「それがあなたのステータスプレートです」


「どれどれ?」

 河部はその画面をまじまじと見る。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 河部雅人 Eランク


 体力1 筋力1 魔力0 速さ1 スキルなし


 備考: 冒険者辞めて、農家になったら?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 河部はそれを見て目を見開く。

「Eランク.....エレガントランクということか!」

「いえ、最低ランクという事だと思います」


 沙羅は淡白な口調で言う。



「この備考ってやつもなんかムカつくな......。さっきの大袈裟な光エフェクトはなんだったんだ......」

「ああ、それなら誰にでも発生しますよ」

「紛らわしな!」

「それにしても.....ここまで低いステータスプレートは初めて見ました」


 ジニーは、必死に笑いを堪えながら言う。



 河部は耐えきれなくなったのか、沙羅に言った。


「......沙羅!今度は沙羅がやってみてよ」

「分かりました」


 今度は沙羅がガラス玉に指を乗せた。



 ピカー!!!!!


 先程と同様に、ガラス玉が黄金に輝く。


 光が収まると、沙羅の前にも画面が表示された。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 沙羅舞花 Sランク


 体力8655 筋力6984 魔力9039 速さ9963


 スキル 万能


 備考: やべぇ....マジパネェっす!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 河部は脇からそれを見て、唖然とする。


「なんだよこのデタラメな数値は.....」

「どうやらこのガラス玉、壊れてしまったようです」

「.....そうだな。スキル万能とか、公式設定にしては適当すぎる」


 河部と沙羅は顔を見合わせ、小さく頷く。


「いえ、このガラス玉は壊れてません。沙羅さんそのものの能力ですよ。凄い潜在能力です!」

 ジニーは目を輝かせて驚いた。



「Eラン...ではなく総理、どうやら私は本当にSランクのようです」

「今なんか貶さなかった!?」

「気のせいです」


 沙羅は相変わらずのすまし顔だ。



「.....ところでさ、この備考って誰が言ってるの?」

「ガラス玉が言ってるんですかね」

 河部と沙羅は首を傾げた。


「いえ、それは私の個人的な感想です」

 ジニーは2人に向かって、ニッコリと笑った。



「あんたか!!!」




  クエスト3.冒険者登録をせよ!【達成】


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