クエスト1.少女を救出せよ!
なんとなーくの思いつき作品です。
ゆるーくお楽しみください。
「総理、どうやらここは異世界のようです」
そう言ったのは沙羅舞花。総理大臣秘書官だ。現在29歳。日本初の女性秘書官であり、最年少でもある。
上下はフォーマルなスーツを着込み、長い髪をポニーテールに結んでいる。かなりの美人だが、口調は冷淡で可愛げもなく、ザ、出来る女と言った所だろう。
「沙羅。異世界って、ライトノベルなどの舞台になるあれか?」
河部雅人。31歳という異例の若さで総理大臣の地位に登り詰めた天才だ。驚異的な頭脳とカリスマ性を持ち、国民の信頼は厚い。
「そうとしか考えられません。街の雰囲気を見てください」
河部は周囲を見渡す。建物は全て西洋風。街を歩く住人は、頭に猫耳を生やしていたり、尻尾を生やしていたりと、人間以外の者も多く存在する。
「確かに現実ではなさそうだ。とりあえず情報収集をしよう。日本語は使えそうだ」
河部の提案に沙羅も同意し、2人は街の人に声をかけ始めた。
いきなり異世界に連れ込まれた割に、沙羅と河部に動揺の色はなかった。さすが、総理大臣とその秘書官だけのことはある。
「きゃぁぁぁあ!!!」
突如、近くで女の叫び声が聞こえた。
「なんだ?行ってみよう!」
「そうですね」
2人は駆け足で現場に向かう。
大通りから1本道を外れた、薄暗い路地。1人の可愛らしい少女が、目つきの悪い3人の男達に囲まれている。
「おい!有り金、全部置いてけよぉ」
「ついでにー、俺らのアジトに来いよー」
「楽しいことしてやっからよォ!」
男達は剣を振りかざし、恐ろしい形相で少女を睨みつける。
「いやぁ!お願いだから許して!!」
少女は必死に懇願した。
沙羅と河部はそれを遠目で見ていた。
「総理、助けますか?」
「ああ。ここは僕に任せてくれ!」
河部は自信に満ちた表情で、チンピラ達の元へ向かった。
「君たち、止めたまえ!」
河部は大声で言った。
「あぁ?」
「誰だテメェ??」
河部は道の端に置かれていた木箱の上に上り、語り始めた。
「僕は日本国首相、河部雅人だ!君達は法律というものを知っているかい?君達が今してることは恐喝罪、窃盗罪、更にその剣は銃刀法違反だ。これは日本国では重大な犯罪なんだよ。いいかい君たち、人間というのはお互いが助け合い、支え合うからこそ豊かな生活を送ることが出来るんだ。自分の小さな利益や欲望のために、他人を傷つけ、不幸にすることは結果的に自分を不幸にする。分かるかい?君達はまだ若い。君達は他人を傷つけることを覚え、そうやって生きることしか出来ない人間にはなって欲しくないんだ。だから.....」
「首相、首相!!!もう誰もいませんよ」
沙羅が、河部の演説に終止符を打った。
「なに?僕の名演説にみな涙してたんじゃないのか!?」
「いえ、首相の長ったらしい.....ではなく名演説は、途中から誰も聞いてませんでした」
「.......ん?今『長ったらしい』とか言わなかった??」
「いえ、『ナガッタラシ』。私の地元の方言で、素晴らしいという意味です」
「そうか!やはり僕の演説はバ○ク・オバマ級だという事だ」
河部は満足気に笑った。
「ところで、チンピラ達はどこへ行った?」
「それなら、通りすがりの少年が追い払ってしまいました」
「少年?」
「はい。沢山の美少女達を引き連れた少年が、チンピラ達を蹴散らし、襲われていた少女も連れ去りました」
「誘拐犯か!」
「恐らくそうでしょう。でもなぜだか、少女達は皆訳もなく、少年に惚れ込んでいるようでした」
「.....どういう事だ?」
河部は首を傾げた。
「恐らく、何かしらの魔法を使用したと考えられます。追いかけますか?」
「当たり前だ!」
沙羅と河部は、急ぎ、誘拐犯を追いかけた。
クエスト1.少女を救出せよ!【失敗】




