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猫魔ケットシーと異世界ダンジョン ~最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか~  作者: 深海のレモン
第1章  猫たちの非日常的ダンジョンライフ
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第8話 ディフェンスゲーム






 ダンジョンマスターの秘儀【空間再構築】をり行うという連絡が、各階層に届いた。


 猫魔ケットシーのファイヴが防衛を任されている、地下1階から地下2階までのセクターAにもその連絡がきた。


 なんでもダンジョンマスターのマチルダ様が住むコアルームが、地下5階に転送されるそうだ。


 それはつまり地下100階を誇る巨大ダンジョン螺旋魔塔ヘルタースケルターが、地下5階の小規模ダンジョンになるも同然である。


 その噂を聞いてダンジョン内のモンスター達が騒然とした。



「どういうことだ!」



「いったいダンジョンマスター様は何を考えておられる……!?」



 とモンスター達が口々に言った。



「静まれ。これはマチルダ様の御意思だ。

 マチルダ様はスリルを求めて、

 ひと時だけ地下5階のダンジョンに編成されたのだ。

 皆の衆、今日だけは祭日と思い、浮かれ騒いで良い」



 とロイヤルガードのひとり、地の魔竜(ファフニール)のヴァルディオンがいった。



「マチルダ様のひと時の御遊戯であるが、

 冒険者イントルーダーが侵入してくる可能性は高い。

 もしも侵入された場合は先日大量に召喚したゴブリン軍団と、

 オーク戦士隊、そしてケットシーのファイヴに任せると仰せられた。

 これは我がダンジョンマスター様のじきじきの命令である」



 とロイヤルガードのひとり、神魔狼(フェンリル)のセレナがいった。



「えっ!?」



 ファイヴは自分の名前が出たことに驚きを隠せなかった。



「マチルダ様はあなたの実力を見込んで頼んだのよ」



 とワーキャットの少女ミーシャが褒めてくれた。

 はたして本当にそうでしょうか。

 自分はたいして実力がないので不安です。



「マチルダ様から皆に激励のお言葉がある。心して聞くように」



 ふたたび、地の魔竜(ファフニール)のヴァルディオンがいった。

 彼の後ろにいたダンジョンマスター様が前に歩みだした。

 ファイヴは思った。

 初めて見たが実に麗しく聡明なお顔をされている。

 全身を覆う鋼の鎧もカッコイイ。



「皆の活躍に期待している。

 私を楽しませてもらおう」



 ダンジョンマスターのマチルダ様は美しいが寡黙な性格のようである。

 短い挨拶で終わった。

 まあ終業式の校長先生のように長々と演説をされても困る。

 マチルダはその美しく青い瞳で配下のモンスター達を眺めた。

 そのときファイヴはマチルダ様と目が合ったように感じた。



「ミーシャさん、今の見ましたか?」



「え、なにが?」



「マチルダ様が僕と目が合った瞬間、微笑んでウィンクしました!」



「え? してないわよ。あんたの気のせいでしょ」



「気のせいではありません。

 絶対に僕の顔を見て微笑みましたから。

 今夜一緒に食事でもどう、て僕のこと誘ってるんですよ!

 これはきっとデートのお誘いに違いありません」



「そうかな……。ただ皆の顔を見回してただけに見えるけど……」



「なんだか勇気が湧いてきました。

 マチルダ様のために頑張ります!」



 とケットシーのファイヴは喜び勇んだ。











 かくして不安は現実のものとなった!

 冒険者イントルーダーたちがダンジョンに侵入してきたのだ。

 今はマチルダ様は地下5階のコアルームにいる。

 なんとしても地下1階を突破されるわけにはいかない。

 ゴブリンの戦士20人と魔術師15人で地下1階を防衛している。

 ケットシーのファイヴは地下2階の入り口付近を防衛している。

 とそのときゴブリンのゴンザレスが凄い勢いで階段を駆け下りてきた!


 タッタッタッタッタッ!



「今回の奴らはマジでやべえぞ!

 上の連中がまたたく間にられちまった……!」



 それを聞いてファイヴはひたいに冷たい汗が流れるのを感じた。



「奴らはすぐそこまで来てる!

 ひいい、助けてくれぇぇぇぇ!」



「ちょ、ちょっとゴンザレスさん!」



 彼は敵前逃亡した。



「ど、どうやら今回に限って本当にヤバイ奴らが現れたようですね」



 ファイヴは思わず後ずさりした。



「怯むな! なんとしても冒険者どもをここで食い止めるんだ。

 絶対にこの下に行かせるな!」



 地下2階を任されたゴブリン防衛隊のリーダーが怒鳴った。

 階段の上から雄たけびと共にたくさんの足音が響いてくる。



「行くぞおおお! 突撃だああああ!」



 ダッダッダッダッダッ!


 革製の鎧を身に着けた人間族の男達が一斉に駆け下りてきた。

 数は5人ほど。全員が量産型のロングソードを得物にしてる。



「槍兵、前に進め!」



 ゴブリンリーダーの掛け声によって、大きな盾を持った大柄のゴブリンが3人前に出た。


 大型の盾でがっちりと通路を塞いだ。

 5人の冒険者イントルーダーたちが突っ込んだ。


 ドンッ!

 カキーン!

 ドシュッ!


 しかし盾はびくともしなかった。

 ゴブリン達は盾の隙間から槍を出して男の太ももを突き刺した。



「ぐああああああああ!」



 悲鳴があがった。



「くそ、このままじゃやられるぞ!」



 人間のひとりが叫んだ。

 すかさず槍が飛び出して、そいつの肩を突き刺した。

 また悲鳴があがり、冒険者イントルーダーたちは怖気おじけづいた。



「こ、こいつらァ! ゴブリンのくせに生意気だァ……!」



 せた冒険者の男がえた。


 ロングソードを大きく振りかぶって威嚇いかくしてるが、情けないことに腰がふるえている。


 ケットシーのファイヴはほっと胸をなでおろした。

 小物くさいセリフを吐いてます。

 思ったより弱そうです。

 きっと上の連中は油断してやられてしまったのでしょう。

 実は自分も腰が震えていたのは内緒です。






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