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猫魔ケットシーと異世界ダンジョン ~最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか~  作者: 深海のレモン
第1章  猫たちの非日常的ダンジョンライフ
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第4話 ロイヤルガード






 猫魔ケットシーのファイヴは猫獣人ワーキャット族の少女ミーシャと共にダンジョンの最下層を目指して潜っていた。


 自分が召喚されたダンジョンはこの国で最も深いダンジョンらしい。


 地中にむかって伸びる螺旋階段の様な塔で、その名もずばり螺旋魔塔ヘルタースケルターと呼ばれているそうな。



 そして此処のダンジョンマスターは鋼の鎧をまとった女召喚士マチルダ。

 うら若き乙女で金髪のツインテール。


 しかし常に鋼の鎧をまとっている姿と、冷酷非道な性格から鋼鉄の令嬢とも呼ばれているらしい。


 ファイヴは自分を召喚してくれたダンジョンマスターに挨拶に行かねばならないと思っていたが、このダンジョンがとてつもなく深い。


 地下100階以上あるらしい……。



「エレベーターもないのにそんなに降りるのは無理です」



 ファイヴは地下5階で音を上げた。



「なに言ってるの?

 そんなものあったら冒険者たちが一瞬で、

 ダンジョンマスター様の部屋に到達しちゃうでしょ?」



 冗談で言ったのにミーシャに怒られた。



「ちょっと疑問なんですが、他のダンジョンもこんなに深いんですか?」



 ファイブがへとへとになりながら疑問を口にした。



「まあ当然の疑問よね。

 ダンジョンを拡張するにはより多くのDP(ダンジョンポイント)が必要なの」



「そのDP(ダンジョンポイント)てなんですか?」



 聞きなれない言葉にファイヴは首をひねった。



「DPとはダンジョンコアに蓄積ちくせきされる魔力の根源こんげんよ。

 これを消費してダンジョンマスター様は魔物を召喚したり、

 様々な武器や防具、魔法、トラップを生成したり、

 ダンジョン拡張で通路や部屋、階層を増やしたりできるの」



「なるほど。

 オリンピック選手達が愛用してる筋肉増強剤みたいな物ですね」



「うん。よく分かんないけど、ぜんぜん違う」



「え? じゃあヤクザが裏で取り引きしてる様なもっとヤバイ薬に近いですか?」



「あのね、なんていうか酸素みたいなものよ。

 DPてのは、それがないと何もできなくなる。

 ダンジョンマスターにとって必要不可欠なものなの」



「思ったんですけど、自分達もダンジョンマスターになれますか?」



「それは無理よ。

 だってダンジョンマスターは各ダンジョンに一人しかなれないんだから」



「あの真に受けないで下さいね。もしもですよ。

 もしも僕がダンジョンマスター様を倒したら、

 自分がここのダンジョンマスターに成れるんですか?」



「それはどうかしらね。

 召喚主が倒れたら、当然その配下のモンスターも消滅するんじゃない」



「なるほど。つまり僕らは一つ屋根の下で暮らす運命共同体なんですね」



 ファイヴが納得して手を叩いた。



「そのとおりよ。

 ダンジョンには冒険者イントルーダーたちが押し寄せてくるから、

 がんばって守備しよう!」



 ミーシャが言った。



「え、なんですか? そのイントルーダーて?」



「侵入者を意味する言葉よ。

 冒険者たちのことを私らはそう呼んでるの。

 アイツらはダンジョンに潜って宝を漁ったり、

 レベルアップのためにモンスターを狩ったり、

 えげつない連中よ。ファイヴも気をつけてね」



 冒険者……イントルーダーか……。

 いづれは自分もソレと戦わなければならないのでしょうか。



「でも心配しないでいいわ。

 うちのダンジョンマスター様は聡明なお方だから。

 冒険者イントルーダーを倒すための秘策をたくさん持ってるわ」



「そうなんですか。めっちゃ凄いんですね。

 僕らのダンジョンマスター様は!」



 そうこうふたりで話してる間に、この階層の最後の部屋に来ていた。この先に下の階に続く階段がある。


 話に夢中で気がつかなかったが、そこには何やらただならぬ殺気を放つ大きな影がいた。


 目の前に白色の美しい毛並みをした大きな狼がいた。

 ついにダンジョンの中ボスが現れましたね。

 戦闘コマンドを展開します。






 【バトルメニュー】


 ・たたかう

 ・防御

 ・固有スキル

 ・アイテム使用

 ・撤退する






 華麗にバトルメニューを開いた。

 さて普通に戦っても勝てる自信がありません。

 一発逆転を狙って固有スキルを見てみましょう。






 【固有スキル】


 ・ネコパンチ

 対象の敵一体に物理的ダメージを与える。

 ごく稀にクリティカルヒット〈攻撃力の100倍のダメージ〉が出る。


 ・鑑定

 対象の敵一体の情報を見る。






 と表示される。

 自分は二つの固有スキルを持っているようだ。ネコパンチは却下である。


 常にクリティカルヒットならいいが、ごく稀にクリティカルヒットでは期待できない。


 成功する時と成功しない時の格差が激しく、貴重なターンを無駄にロスしてしまう。


 そんなのは素人がFXに全財産を次ぎ込むようなものである。

 とりあえずは【鑑定】スキルでこの狼の詳細を知ろう。

 そう思い至って、ファイヴは片手を正面に突き出した。

 【鑑定】スキルを発動した。






 名前 セレナ


 種族 フェンリル


 召喚コスト 283DP


 属性 狼・神獣・レジェンド・ネームドモンスター・ロイヤルガード


 ランク SS


 HP 867


 MP 693


 攻撃力 776


 防御力 590


 魔力 904


 俊敏性 789


 固有スキル 【ダイヤモンドダスト召喚】、【雷魔法全取得】

       【魔法攻撃無効シールドLV3】、【高速移動】

       【状態異常魔法無効】、【冷気系魔法無効】






 全てが桁違いです。

 思わず鼻水が垂れてしまいました。



「あなたはロイヤルガードのひとり、フェンリルのセレナさん!」



 そう言ってワーキャットのミーシャが丁寧にお辞儀する。


 どうやらロイヤルガードとは、ダンジョンマスターを警備する直属の親衛隊のことらしい。


 そしてこの神魔狼フェンリルはセレナというネームドモンスターらしい。


 なんだか自動車っぽい名前の響きですが、その名前から察するにこの狼さんは女性ではないでしょうか?



「おや、新米ケットシーにはさっそく恋人ができたのか?」



 想像していた通り、凛として透き通った女性の声でした。声優は誰でしょうか?



「やだな~もう~。

 私はただこの新人にダンジョンの中を案内してるだけですよ~」



 と照れ笑いするミーシャであった。



「そういうことなら、私も一緒に道案内しよう。

 しばしのあいだ、暇を持て余してるのでな」



 フェンリルがそう返した。



「そりゃーもう喜んで」



 ミーシャが言った。

 本当に大丈夫でしょうか?

 背後からいきなり襲ってきて食べられたりしないでしょうか?

 ここに来て緊張感マックスです。







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