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猫魔ケットシーと異世界ダンジョン ~最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか~  作者: 深海のレモン
第2章  最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか
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第27話 オークから学ぶモンスター召喚






 【鑑定】スキルの結果が表示される。



 名前 ハンゾー


 種族 グリーンオーク


 召喚コスト 1DP


 属性 オーク・魔物・ネームドモンスター


 ランク F


 HP 15


 MP 0


 攻撃力 8


 防御力 5


 魔力 0


 俊敏性 7


 固有スキル 【無銘刀初期装備】、【居合切りLV1】



 グリーンオークと言うのは森に生息している一般的魔物ウッドオークのワンランク下にあたるモンスターのようです。そして自分と同じFランクです。


 ケットシーのファイヴは冷たい麦茶を飲みながら立体映像を眺めていた。

 この麦茶はハンゾーさんが持参した物だ。快く分けてくれた。



「拙者を採用してくれたあかつきには、ファイヴ殿の為に猫缶10個を贈呈するでござる」



「なんですって?」



「拙者は裏ルートを使って物品の取り引きをしてるでござる。

 猫缶を手に入れるなど容易いでござる。

 なんなら10個といわず20個お送り致そう」



 なんと気高い侍であろう。

 見た目はただの薄汚い緑色の豚なのに。


 まあ、ただでモンスターを召喚できたと思えば安い物だ。



「ところでファイヴ殿はいつからダンジョンマスターになったでござるか?」



「最近です」



「左様か。拙者も半人前だがそれなりにダンジョン運営のノウハウを知ってる

 でござるよ。よろしければ拙者がアドバイス致すぞ」



「かたじけないです」



 ではさっそく【モンスター召喚】と【ダンジョントラップ】についてアイデアを頂きましょう。


 彼が言うにはダンジョンマスターのレベルに応じて高ランクのモンスターを召喚できるようになるそうです。


 つまりレベル1の自分ではせいぜいFランクモンスターしか召喚できないということです。


 これはダンジョントラップも同様でレベルに応じてより強力なトラップが作成できるようになるらしいです。


 レベル1で作成できるトラップは限られています。



「レベル1の代表的なトラップは【見えない壁】でござる。

 スイッチ起動で見えない壁が出現。作成に必要なコストは8DP。

 いかなる物理攻撃も魔法攻撃も通用しないが、3分したら消えるでござる。

 嫌がらせ程度の効果しかないでござるよ」



 ハンゾーさんが得意げに話してくれた。

 ファイヴは「なるほど」とうなずいた。



「モンスターを召喚するなら飛行系がお薦めでござる。

 空から一方的に攻撃できるので戦闘で有利でござるよ。

 他にも防御力の高いモンスターを召喚して通路を塞ぎ、

 後方に魔法使い系モンスターを配置する。

 そうすれば魔法で一方的に攻撃できるから、これもお薦めでござる」



 ここまで知識が豊富なのは様々なダンジョンで雇われてきたからだろう。

 その知識の量には驚かせられる。



「詳しいですね」



 ファイヴは素直に感心した。



「それで拙者を雇ってくれるでござるか?」



 やはりそこが気になる様だ。ダンジョンモンスターである以上はDPは必須だから必死なのだろう。


 残りの麦茶をぐいっと飲み干した。



「分かりました。あなたを雇います」



 ファイヴは短く返した。



「本当でござるか? 有難き幸せでござる。

 実はDP供給できず10時間くらい過ぎて死の瀬戸際だったでござるよ」



 と緑色のオークがほっと胸を撫で下ろしていった。



「それどころかあなたの望む物を与えても構いません」



 とファイヴがにこやかな顔でいった。



「それは光栄ですな。拙者にはもったいない御言葉でござるよ」



 とハンゾーが笑った。



「ただし条件があります」



 とファイヴはにこやかな顔で続ける。



「ほう? 条件とはなんぞや?」



 とハンゾーが苦笑いする。

 不意にファイヴの顔から笑みが消えた。まっすぐの目でハンゾーを睨む。



「僕のために死んでください」



「えっ!?」



 それまでの和やかな雰囲気が一転して急に冷たい空気が満ちる。



「だはははっ! ファイヴ殿も人が悪いでござるな~。

 そういう冗談は笑えないでござる。

 いきなり死ねと申されても、まったく何が何やら……」



とハンゾーが笑い出した。しかしファイヴは笑っていない。



「どうしても果たしたい相手がいます。

 それも並大抵の力では敵わない相手です。

 だからこそ地獄の底を練り歩くような凄惨な戦いが、

 この先に必ず待ち受けていると思います。

 生半可な覚悟ではやっていけませんよ。

 だからもう一度聞きます。

 僕と共に地獄に堕ちる覚悟はありますか?」



 その小さな猫魔ケットシーが吐いた言葉にハンゾーは戦慄した。

 血も凍るような冷たい空気が周囲を取り巻いていく。


 目の前の小さな猫が人間喰らいの魔獣(マンイーター)のように巨大で恐ろしく映る。



「主君に忠義を尽くすのが武士の務めと心得ている」



 ハンゾーの口から自然に漏れた言葉。

 ファイヴは静かにうなずいた。



「ありがとうございます。

 ではハンゾーさんを見込んでもう一つ教えて欲しい事があります」



 ファイヴがわずかに笑った。冷たい空気が解れていく。



「な、なんでござるか……?」



 これ以上にどんな恐ろしい事をいうつもりかとハンゾーは身構えた。



「ダンジョンマスター同士の決闘の仕方について教えて下さい」



 その言葉を聞いてハンゾーはごくりと唾を飲んだ。



「まさか……ファイヴ殿の果たしたい相手というのは……、

 同じダンジョンマスターでござるか?」



 ハンゾーが恐る恐るたずねる。



「そうです。螺旋魔塔の召喚士ダンジョンマスターマチルダ様です」



 ファイヴが再びまっすぐな目でオークを睨む。



「マチルダ殿を!? そんな無茶でござる……!

 彼女は魔王殿が率いる召喚士評議会の中でもトップクラスの実力をもつ召喚士でござるよ……!」



 ハンゾーが目を丸くしながら答えた。



「それでもです」



 ファイヴは恐れずにいった。

 その場を沈黙が支配した。

 やがてハンゾーが静かに語りだした。



「ダンジョンマスター同士の決闘の仕方はないでござる。

 敢えて言うならどちらかが侵入者として、

 もう一人のダンジョンに挑戦することでござるか。

 だがファイヴ殿の力ではとても螺旋魔塔を攻略することは不可能……。

 ならば、相手をこちらのダンジョンにおびき寄せるしかあるまい」



 ハンゾーがぼそりといった。

 ファイヴは思った。

 マチルダ様をこのアポカリプス迷宮庭園におびき寄せる。

 なんとしてもその方法を見つけなければ……。







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