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猫魔ケットシーと異世界ダンジョン ~最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか~  作者: 深海のレモン
第2章  最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか
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第21話 ダンジョン漁り






「Fランクの最弱魔物なんて、うちはいらないよ」



 またダンジョンマスターさんに断られてしまいました。

 これで何軒目でしょうか。


 自分を召喚してくれたダンジョンマスターに、裏切られ捨てられたFランクの最弱な猫型魔物ケットシーのファイヴは「自分を雇ってくれ」と、他のダンジョンを回っていた。


 そのうちにはっきりと分かったことがあります。ケットシーはレベルが低くて誰も雇ってくれないのです。


 ダンジョンマスターと冒険者はレベルアップして全能力値が増えていくが、ダンジョンモンスターはレベルが固定されており、決してそれ以上レベルアップすることはありません。


 召喚直後ならランクに応じたスキルを組み替えることができるようですが、しかしそれも手遅れです。


 そもそもFランクのモンスターが使えるスキルなんてたかが知れてるでしょう。


 気が付けば、僕はハッピースマイルタウンに来てました。

 路地裏で因縁つけきた不良少年達と一緒にドラム缶の火を囲んでいます。



「そうか。ダンジョンマスターに捨てられたのか。かわいそうにな」



 不良少年のひとりが同情してくれました。

 ですが同情するならDPをくれと言いたいです。



「話は全て聞かせてもらったわ。これからどうするの?」



 そう言ったのは半獣人ライカンの女性レジーナさんでした。

 彼女とは一度カロール運河でお世話になっています。

 レジーナさんは隣でしんみりと聞いていたが急に立ち上がりました。



「ねえ、だったらアタシの盗賊団に入らない?」



 とびっくりするような事をレジーナさんは言いました。

 どうやら彼女は例の運び屋の仕事が成功してメアリーから独立して、盗賊団を結成したようです。



「闇市場でDPが取り引きされてるのを見たことがある。

 確か5DPで30000ペラだったような……」



 と金髪ツンツンの不良兄ちゃんが教えてくれました。



「5DPで30000ペラですか。高額ですね……」



 自分は大きなため息をつきました。

 そんな大金は持っていないからです。



「だからアタシの盗賊団と一緒にダンジョンに潜って、

 宝箱を漁ればいいのよ。そうすれば30000ペラなんて、

 あっという間に稼げるよ」



 盗賊団というのは一緒にドラム缶の火を囲んでいる不良少年達のことである。


 やはりダンジョンに潜って宝漁りするしかないのでしょうか?


 ダンジョンモンスターの自分がよそのダンジョンに潜って宝漁りとはなんとも不思議な話です。


 しかし迷っている時間はありません。太陽が傾いています。

 あと5時間以内に1DPを集めなければ自分は消滅します……。



「分かりました。僕もレジーナ盗賊団に入ります」



 とういわけで近くのダンジョンに来ました。


 土魔法塔アースマナタワーと呼ばれるダンジョンで、レガリア国を代表するダンジョンマスターの一人が支配する巨大な塔です。


 他にも炎、水、闇の属性を秘めた魔法塔マナタワーが存在する。

 これらは召喚士評議会の創始者であるダンジョンマスター達が支配しているそうです。


 僕がいた螺旋魔塔ヘルタースケルターと同じくらい高難易度かつ広大なダンジョンで、出てくるモンスターは強力だが、手に入るお宝も凄い物ばかりだそうです。



 入り口にはトロールと呼ばれる毛むくじゃらの大きな猿が2体立っています。

 こっそりと【鑑定】スキルを発動しましょう。






 種族 トロール


 召喚コスト 55DP


 属性 巨人・土属性・魔物・アンコモン


 ランク C


 HP 120


 MP 0


 攻撃力 78


 防御力 80


 魔力 0


 俊敏性 20


 固有スキル 【踏みつぶし】、【岩投げ】






 このように強力なモンスターに門番をやらせるのは、召喚士たちの常套手段なんでしょう。


 ケットシーの自分が行って勝てる相手ではありません。

 レジーナさんが行っても無理でしょう。


 そこで不良たちの出番です。


 塔の裏側にスプレーで落書きでもしてトロール達の気を引いてもらいます。


 トロール達が入り口から離れたのを見計らって侵入しました。


 ダンジョン内部にはウッドオーク・ウォーリアー達が10体ほど待ち構えていました。



「多勢に無勢です。どうしますか?」



「秘密兵器があるから大丈夫よ。

 さあ、オークども、これでも食らいなさい!」



 そういってレジーナさんが黒い粉の入った瓶をぶん投げました。

 オーク達の真ん中で瓶が割れて、粉塵が煙のように舞い上がりました。

 煙幕のようです。

 この隙に自分達はダンジョンの奥に入りました。



「狙うのはこの階層だけの宝箱よ。

 あと開ける時は慎重にね。

 警報トラップが仕掛けられてるかもしれないから……!」



「そういうことはもっと早く言ってください……」



 宝箱にトラップが仕掛けられているなんて知りませんでした。

 警報が鳴って上の階層から続々とモンスター達が押し寄せてきました。



「しかたない、撤収するわ……!」



 自分は50ポンドクロスボウで応戦しながら後退しました。

 クロスボウの扱いにもだいぶ慣れてきました。

 オーク達の足を狙って次々に転倒されていきます。

 ダンジョンの出口が見えてきました!



「あんた、こういうの慣れているでしょ?」



 突然、レジーナさんがそんなことをいってきました。



「えっ、何がですか?」



 僕はきょとんとして思わず聞き返してしまいました。



「ダンジョン強盗のことよ。

 以前にもどこかでやったことないの?

 例えば銀行強盗とかさ……」



 レジーナさんがそういって微笑を浮かべました。



「僕がそんなことするわけないでしょう」



 即答です。でもレジーナさんは何か言いたそうな顔をしてます。



「あんたを見てたら、ある伝説を思い出したの。

 世界で初めてダンジョンコアを造った人間の伝説を……。

 その伝説によるとダンジョンコアを完成されるために、

 ある男を犠牲にしたの。

 つまりダンジョンコア研究の実験材料にされたってこと。

 そいつは金欲しさに銀行強盗をするサイコパスで、

 警官も撃ち殺す殺人鬼だっていう話よ。

 それでね。その男の名前ってのが……」



 とレジーナさんが意味ありげな顔で話を続けます。



「そんなことより早くダンジョンから脱出しましょう!」



 自分はそういってレジーナさんを急かしました。

 なんだか彼女の話を聞いてると嫌な感じがするのです。



「その男の名前が皐月アキラていうの。

 皐月て陰暦で5月を意味する言葉よ。

 そういえばあんたの首輪にも5の数字が刻まれているでしょ?

 もしかしたらあんたは皐月アキラの生まれ変わりかもね」



 たとえ冗談でもサイコパスの生まれ変わりなんて言わないで下さい。

 全然笑えないです。


 なぜなら以前に迷い込んだ謎のダンジョン【アポカリプス迷宮庭園】にて、そこのダンジョンコアが僕のことを「サツキアキラ様」と呼んだのですから……。



「それに……森の中でオーク達に追い詰められた時、

 あんたは崖っぷちで白い幽霊を見た、ていったわよね。

 そっくりなのよ。黒髪でメガネをかけたインテリ風の優男ていう顔の特徴がさ」



 レジーナの言葉を聞いてファイヴは黙り込んだ。

 禁断の墓標の森ワールドグレイブフォレストでオーク達に追われたのを思い出した。


 そのとき崖っぷちに立つ白い幽霊を見ました。

 あれは皐月アキラの幽霊?

 それとも自分の潜在意識が生み出した幻影?

 やはり僕はサイコパス殺人鬼の生まれ変わりなのでしょうか?






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