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猫魔ケットシーと異世界ダンジョン ~最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか~  作者: 深海のレモン
第1章  猫たちの非日常的ダンジョンライフ
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第18話 Aランクナンバーズ





 見慣れた螺旋魔塔マイホームの入り口……のはずだが何か様子がおかしい。


 ダンジョンの入り口から周囲5メートルにかけて、草木が燃えている。黒い煙があがっている。


 ダンジョンの中もきな臭い。

 誰かが外からダンジョンの中に向かって火を放ったようだ。


 これはいったいどういうことでしょうか?


 ガサガサガサ……。


 そのとき草むらで何かが動いた。

 ファイヴは本能的に身を低くして木の陰に隠れた。

 黒い犬のような怪物が藪の中から現れた。



「ガルルルル……」



 うなり声をあげて口からメラメラと火を噴いた。なぜかダンジョンの入り口にむかって噴射している。


 奴の詳細を知るために【鑑定】スキルを発動します。






 種族 ヘルハウンド


 召喚コスト 85DP


 属性 獣・炎・不死者・レア


 ランク A


 HP 150


 MP 98


 攻撃力 85


 防御力 75


 魔力 100


 俊敏性 55


 固有スキル 【炎のブレス】、【高速移動】






 Aランクのかなり強力な相手だ。

 まともにやりあったら死んでしまう。


 奴は特定のルートを巡回しているようで、隠れながらダンジョンの中に忍び込んだ。


 ダンジョンの中にも黒い煙が立ち込めて視界が悪い。

 先ほどのヘルハウンドだがダンジョンの入り口を見張っていたように思える。ダンジョンから逃げ出す者を阻止するために。


 ファイヴは急に皆のことが心配になった。



「ミーシャさん! メルちゃん! アルベルトさん!」



 ファイヴは暗い通路を走り回った。ところどころ火の手があがり、進路を遮られた。


 各階層には鎮火する為の道具やゴブリンの消防隊が配置されている。炎を操る魔術師が侵入したときの対策としてだ。それがどこにもない。


 鉄さびた臭いが充満している。ファイヴにもその理由がすぐに分かった。おびただしいゴブリンやオーク達の死体だ。


 出口付近ではガーゴイルが倒れて動かなくなっている。きっとヘルハウンドに奇襲されたのだろう。でもこれはアルベルトさんではないようだ。翼の形が違う。


 アルベルトさんは無事でしょうか?

 ワーキャットのミーシャさんは?

 グリーンスライムのメルちゃんは?



「うにゃ!?」



 煙の向こうから誰かがこっちに来る!


 幾多の影が近づいてくる。鱗に覆われた手足、板金の鎧にサーベル。あれはリザードマンの兵士だ。



「見つけたか?」



「いや、まだだ……」



「早く探し出せ!」



 これは一体どういうことでしょうか?


 彼らは何かを探しているようだ。

 しかし彼らの禍々しい雰囲気に、声をかけることができない。


 それにケットシーの自分はダンジョンの地下2階までの警備をしていたが、リザードマンは見たことがない。


 おそらくもっと下層を守護しているモンスター達だ。それがなぜここにいるのだろうか?


 宝箱や木箱の陰に隠れながら、さらに奥へと潜っていった。



「ミーシャさん、アルベルトさん、誰か……返事してください」



 リザードマン達に見つからない様に隠れながら、彼女達を探し回った。だがどこにもいなかった。


 もしかしたらミーシャさんとアルベルトは、スライムのメルちゃんを連れて安全な場所に逃げたかもしれない。そう願いたい。


 とそのとき、物陰からかすかな音がした!



「誰ですか?」



「ひいっ!」



 誰かが物陰から飛び出した。地下へ続く階段に向かっている。ファイヴもその後をすばやく追った。



「あなたは……!?」



「おまえはFランクの……」



 やっと追いついた。そしてその顔を見て驚いた。


 かつて自分をいじめていたEランクのモンスターで、レッドゴブリンのゴンザレスだった。


 彼はあたりを警戒していた。



「お、おまえ生きてたのか?

 奴らに殺されたと思ったぜ……。

 まあいい。お前みたいな雑魚が生き延びてたということは、

 絶対に奴らに見つからない隠れ家があるんだな?

 どこだ。教えろ!」



 ゴンザレスがファイヴの胸倉を掴んでゆすった。



「く、苦しいです。やめてください……」



 ケットシーのファイヴは首を絞められて喘いだ。その声につられてリザードマンが2体こちらにやってきた。



「いまここで話し声がしなかったか?」



 その中の一体が怪訝そうな顔でこっちを見ている。



「気のせいだろう。それより出口付近を見張ろう。

 奴に逃げられたらまずい」



 もう一体がそう言って出口の方に戻って行った。



「いったいあれは何者ですか?

 なぜゴブリン達を殺しているのですか?」



 ケットシーのファイヴがたずねた。



「そんなの俺が知るかよ。

 ゴブリンだけじゃねえ。オーク達や他の連中も……、

 地下1階から地下2階までのモンスター達を殺しまわってやがる!」



「あいつらはどこから来たのですか?」



「このダンジョンの下層からだよ。

 いきなり現れて襲い掛かってきたんだ。

 なにか……いや誰かを……探してるみたいだった」



「そんな……ミーシャさんは無事ですか?」



「他の連中なんて知らねえよ。俺もずっとトイレに隠れてたから。

 でも奴らに見つかって……やっとここまで逃げてきたんだ。

 それより早く安全な隠れ家を教えろよ」



 そういってゴンザレスはまたファイヴの首を絞めた。



「ぼ、僕は外から来たんですよ。買い物を頼まれて、

 それで戻ってきたらこんな状況に……」



「嘘つくな。外にはあの怪物犬が見張っているだろうがよォ!」



 そう言ってゴンザレスは一瞬だけ緩めた手にまた力を込めた。



「あいつは決まったルートを巡回してますから、

 それさえ分かれば、見つからずに脱出できますよ……」



「……なに、そうか。へへへへ。

 なるほどな。よし、もうお前に用はないぜ、Fランク。

 あとは俺が逃げる為の時間稼ぎになれ!」



 ゴンザレスはそう言うとファイヴを思いっきり壁に向かって投げた。ファイヴは木箱にぶつかり、盛大な音を上げながら地面に倒れた。ゴンザレスはどこかに消えてしまった。


 タッタッタッタッタッ!


 リザードマン・ソルジャーの走ってくる音がする!


 まずい。このままでは見つかって殺されてしまう。

 ファイヴは立ち上がるとよろよろと走り出した。

 地下へ続く階段の隣にヒーリングルームがある。そこに隠れようと思った。


 そのとき悲鳴が聞こえた。女の声だ!


 それもヒーリングルームの方からだ。

 この声は……間違いない!

 ワーキャットのミーシャさんの声だ!


 彼女は何かから必死に逃げ回っている様だ。同時に鋭い刃物でテーブルや椅子を叩き切る音が響いた。その声が次第に追い詰められていき、絶望に変わっていく。



「ミーシャさん!」



 ファイヴはヒーリングルームの扉を勢いよく開けた。

 部屋の片隅で追い詰められ尻もちをついているワーキャットの女の子。


 その前にはロングソードを大きく振りかぶったリザードマンが立っている。そいつが振り向いた。



「お前は!」



 リザードマンがファイヴを見て叫んだ。



標的ケットシーを見つけた。至急応援を……!」



 そのリザードマンの兵士はファイヴに詰め寄りながら怒鳴る。



「ファイヴ、逃げて! こいつらの目的はアナタなの……!」



「えっ!?」



 ファイヴは硬直して動けなかった。

 リザードマンがすぐ目の前まで迫ってきている。

 そして持っていたロングソードをファイヴにめがけて振り下ろした。


 ガキィィィィン!


 そのとき白い影がリザードマンに飛び掛かった。

 鋭い爪でリザードマンを貫いた。そのまま蜥蜴人間は息絶えた。

 ファイヴは唖然としながらもその白い影に向かって言った。



「あなたは……フェンリルのセレナさん!?」



 リザードマンが死んだのを確認すると、白い狼はファイヴの所に歩いてきた。






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