第14話 野生のオークに遭遇しました!
ガシャーン!
運河の検問所は細い木製の格子でいかにも貧弱そうに見えた。
しかし密輸団のイカダの怒涛の突撃を食い止めた。
「なんだあのイカダは! バリケードに突っ込んだぞ!」
そういって兵士たちが慌てふためいている。
「さては麻薬の密輸業者だな!」
兵士の一人が叫んだ。
「密輸業者だ。あのイカダを沈めろ!」
他の兵士たちも口々に怒鳴った。
「まずいですね。ばれちゃいました」
とケットシーのファイヴが他人事のようにいった。
「そこのアンタ、バリケードをノコギリで切り倒しなさい。
他のみんなは防御態勢よ」
と半獣人のレジーナが命令した。
イカダに乗り込んきた兵士を護衛の一人が、クロスボウで撃ち抜いた。
兵士はイカダから転落して、運河の激流に呑み込まれた。
「攻撃されたぞ。総員戦闘態勢をとれ」
ヒュン!
ヒュン!
バシュン!
兵士たちも長弓や投槍で攻撃してきた。
「早くして!」
レジーナが叫んだ。
「もう少しです」
護衛の男が返答した。すでに木製の格子を何本か切り落としている。
「投石機を用意しろ。密輸団の船を沈めろ」
と兵士の一人が叫んだ。すぐに大型の投石機が検問所の奥から現れた。
「まずいですよレジーナさん。あれを見てください」
とファイヴがいった。
投石機に幅150センチほどの大きな岩のボールがセットされた。
「あんなものを食らったら一巻の終わりです」
護衛の一人が叫んだ。
「しかたないね。ブツの入ったカバンを持って。
イカダを乗り捨てるわ!」
ブツの入った二つのカバンのうち、一つをレジーナが持って、検問所の桟橋に飛び乗った。
「死ねええええええ!」
兵士が戦斧を振り上げて走ってきた。
スパァァァン!
ザパアアアン!
レジーナは左手で短剣を引き抜いて、兵士に突撃した。その兵士は川の中に転落した。
「みんな急いで!」
ケットシーのファイヴも残りのカバンを持って桟橋に飛び移った。
ドシュッ!
ノコギリで格子を切っていた護衛の男は、長弓の矢を受けて倒れた。
護衛の最後の一人も落ちていた投槍を拾って、兵士達に突撃した。
ガキーン、ドサッ!
戦斧のなぎ払い攻撃を受けて、地面に勢いよく転んだ。
そのまま兵士達に身柄を拘束された。
ファイヴはその様子を呆気にとられて見ていた。
「捕まえろ。あの猫魔も密輸団のメンバーだ」
兵士の一人がファイヴを指さして叫んだ。
「ファイヴ、はやくこっちに!」
レジーナが叫んだ。
彼女はうっそうと生い茂る森の中にむかって逃走していた。
スタタタッ!
ケットシーは逃げ足は速いので、すぐレジーナに追いついた。
「生き残ったのは私達だけみたいだね」
「そのようですね」
「いたぞ! こっちだ!」
背後では兵士達の怒号が飛び交っている。
「この崖を飛び降りましょう。
目的地の町まで遠回りになるけど追っ手を撒けるわ!」
とレジーナがいった。
ファイヴとレジーナは深い森の中へと入って行った。
ふたりとも獣属性なので人間の兵士達よりも森の中をすばやく走れた。
さて森の中に入って来ましたがここはどこでしょうか?
なんとなく螺旋魔塔の付近のような気がします。
【鑑定】スキルで場所の詳細を調べてみましょう。スキルを発動した。
【禁断の墓標の森】
あれ、確か禁断の墓標の森て……、フェンリルのセレナさんから危険だから入るなと言われた場所では?
この中にはいったい何があるのでしょうか?
ふいにレジーナの足が止まった。
左手を上下に動かして、身をかがめとジェスチャーしている。
それに従い、身を低くして藪の中に隠れた。
その後すぐに数人の影が横を通り過ぎた。
ずんぐりむっくりで豚のような顔をした凶暴なモンスターだ。
「この森にはウッドオークの集落があると聞く。
おそらく今のは連中の斥候部隊だろう。
気をつけろ。あいつらは気性が荒い。
見つかれば襲ってくるわ」
とレジーナが説明してくれた。
だまってファイヴもうなずいた。
ウッドオークの斥候部隊は一つではなかった。
集落が近い様で、進むたびに何人かのウッドオークい出くわした。
だがこっちはクロスボウで矢もそれぞれ10本しか持ってない。
すべてを相手にするのは無理だし、戦う必要もない。
自分達はこのブツの入ったカバンを町に届けるのが任務だ。
とりあえず敵を知るために【鑑定】スキルを発動します。
種族 ウッドオーク・ウォーリアー
召喚コスト 13DP
属性 オーク・戦士
ランク C
HP 45
MP 5
攻撃力 30
防御力 25
魔力 10
俊敏性 15
固有スキル 特になし
なるほど。
ウォーリアーということは他の職種のオークもいるのでしょうか。
ファイヴとレジーナは彼らに見つからない様に藪に隠れながら前に進んだ。
ガサガサガサ……。
藪の中には殺人脚長蜂やオオムカデなどが、隠れているので油断はできない。
知らず知らずのうちにファイヴ達はウッドオークの集落に行き着いた。
そこの広場には大きな祭壇があって、コウモリの死骸が吊るされている。
祭壇の前に黒い法衣をまとったウッドオークがいた。
「皆の衆よ。今年も太陽に生贄をささげる時期がやってきた。
人間でもモンスターでもよい。生きた獲物を攫ってくるのだ」
とウッドオークの呪術師が声も高らかに言い放った。
「生贄の儀式? まずいわね。捕まったら私たちが生贄にされるわ」
とレジーナがつぶやいた。
「奴らに見つからない様に森を出ないといけませんね」
とファイヴが返した。
ところが背後の方から怒鳴り声がした。
「そこに誰かいるグル! 確認しろグル!」
ウッドオークの斥候部隊が詰め寄ってきた。
「まずい、見つかったわ!」
レジーナが叫んだ。
「逃げましょう」
ファイヴとレジーナは藪から飛び出して一目散に駆け出した。




