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猫魔ケットシーと異世界ダンジョン ~最弱なケモノは如何にしてダンジョンマスターになれたか~  作者: 深海のレモン
第1章  猫たちの非日常的ダンジョンライフ
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第11話 猫vs猪 対ジャイアントボア戦






 草を踏み土を蹴って、猫魔ケットシーは走った。

 その後ろを巨大な猪が追いかけてくる。



「ブヒイイイイイ!」



 ズドドドドド!


 ケットシーの身に着けている赤いマントのせいである。


 ジャイアントボアは闘牛のように赤い物を見ると、激怒して追いかけてくるのだ。


 ではマントを捨てればいいのではないか?

 そう思うかもしれないが、このマントはケットシーの標準的装備である。

 つまりケットシーのアイデンティティーであり誇りなのだ。

 したがってこのまま猪と鬼ごっこを続けていくしかない。



「困りましたね。これではお使いミッションがクリアできません。

 なんとか奴を倒さないと町にはたどり着けないでしょう」



 ケットシーのファイヴは独り言をもらした。



「……ところでさっきから気になっているのですが?」



 ファイヴは周囲を見渡した。

 薬草を採取に来たであろう冒険者たちをちらほら見かける。

 気温が高く28度くらいある。

 さらに肥沃な大地で多種多様な薬草が咲いている。

 マンドレイクっぽい葉っぱも見かける。

 人型の根っこが草むらの中を走っている。



「薬草採取の依頼を受けたレベルの低い素人冒険者達でしょうか?

 このあたりは薬草の採取ポイントも多そうですからね。

 でも一つだけ許せないことがあります」



 後ろから突進してきたジャイアントボアを側転して避けた。


 自分はこんなにも危機的状況なのに、「きゃー猫ちゃんかわいい! がんばれー!」などと勝手なことをぬかしてます。



「見てないで助けてください」



 とファイヴは言ったつもりだったが、人間たちに魔物の言葉は通じない。


 ケットシーが「にゃあにゃあ!」と鳴いている風にしか見えてないようだ。



「薬草採取クエストに来た冒険者さんですから、

 レベル3以下の初心者達でしょう。

 そういう人たちにジャイアントボアを倒してもらおう、

 と期待してはいけませんね」



 ファイヴは猪の目を盗んで大きな岩の陰に隠れた。

 得物を見失ったジャイアントボアが興奮して走り回っている。



「やはり正面から戦っても奴には勝てませんね。

 攻撃力1しかない僕では、

 バックスタブやジャンプキルをやっても、

 あまりダメージを与えられないでしょう……」



 ため息をついた。

 Fランクの最弱モンスターの自分には荷が重すぎる相手だ。

 ふとそこでフェンリルのセレナさんが言ってた言葉を思い出した。



「たとえFランクの魔物でもうまく頭を使えば勝てる」



 そうだ!

 こんな時こそアイデアで勝負だ!

 ジャイアントボアも所詮は体が大きなだけの猪である。

 炎を恐れるはずである。



「しかしマッチくらいの火では怯まないでしょうね。

 ヴァールが使っていた【灼熱の竜巻(ファイアートルネード)】でもなければ

 追い払えないですよ……」



 火がダメなら……そうだ!

 なにかアイテムを調合して作れば……。

 周囲の薬草に【鑑定】スキルを発動!




 【緑色のハーブ】

 どこにでも生えている薬草。HPを少しだけ回復する。

 薬剤師スキルを所持しているとこの薬草を二つ調合して、

 さらに治癒効果の高い回復薬を作成できる。


 【黄色のハーブ】

 あまり見かけない薬草。MPを少しだけ回復する。

 錬金術師スキルを所持しているとこの薬草を二つ調合して、

 さらに治癒効果の高い魔力薬を作成できる。




「なるほど。これは使えそうですね。

 薬を買った帰りにこの緑色のハーブも採取していきましょう」



 そうすればアルバレンさんも喜ぶだろう。


 なんといっても自分の住んでいるダンジョンは超有名で、冒険者達が毎日のように押し寄せてくるのだから。


 しかし今はあの猪を倒すのが先である。

 薬草の他にも何か役に立つ物はないだろうか?

 さらに他の植物にも【鑑定】スキルを発動しよう!




 【たんぽぽ】

 どこにでも生えている雑草。


 【シロツメクサ】

 どこにでも生えている雑草。


 【葛】

 どこにでも生えている雑草。


 【ブート・ジョロキア】

 トウガラシ属の植物。

 獅子唐のような赤い実はトウガラシの10倍の辛味があるという。




「おや、雑草に混じって何かありますね!

 トウガラシの10倍の辛味ですか。

 もしかしたらこれは凄い宝物かもしれません」



 距離にして10メートル。

 ジャイアントボアをファイヴを見失ってきょろきょろしている。

 岩の方に向かってきたので見つかったかとヒヤヒヤした。

 しかしすぐに方向転換して戻って行った。



「今しかありませね!」



 ファイヴは猫のように静かにすばやく、その植物に接近した。

 赤い実を3、4つむしり取りそのまま木の陰に隠れる。

 見つかっていない。

 石を使ってその赤い実をすり潰す。

 なるべく細かく潰した。

 粉末状にはならなかったが、とても細かくなったので良しとしよう。

 これを投げれば催涙スプレーのかわりになる。

 問題は投げるタイミングである。

 うまく奴に近づかなければならない。

 しかし現実はそううまくいかないものである。

 ジャイアントボアに見つかってしまった。

 こうなったらもう戦うしかない。

 ジャイアントボアは何度も突進してきた。

 それを跳び箱の要領でジャンプして避ける。

 そのうちに石につまづいて猪がよろめいた。



「この瞬間を待ってました」



 猪の大きな鼻にめがけてブート・ジョロキアの粉をぶん投げた。


 バシュ!


 鼻の敏感な猪だけあって効果は絶大だ。

 もの凄い悲鳴をあげながら退散した。



「ふう、なんとか追い払うことができました……」



 しかし油断してはならない。

 これで終わりではないのだ。

 町で回復薬を買ってこなければならない。






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