1-8
その日の夕方、yukitoはまた店に戻ってくる。
自分は一からやり直すと決めたが、でもこのまま一人で何も目標もないままここにいると、
きっとまた元に戻ってしまう気もするからだ。
そのつもりがなくても夜中はそんなに甘くないことも若いながらに知っている。
家族もいないし頼れる親戚もいない、
ましてや今までパシリをさせられていたとはいえ、
裏社会とつながりを持った以上簡単には抜け出せない。
でももう後には戻りたくないのだ。
「こんちは。。すみません。。もう帰ってますか?」
店へと入り奥のほうに向けて声をかける。
「待たせたな、孫からは聞いたよ。わしになんのようじゃ。」
yukitoは目の前に現れた老婆の目をしっかりとした目で見つめ
「約束を守りたい。でもこのままここに居たら俺は絶対にまた裏に戻されるか殺される。
もう戻りたくない、俺はもうこの世界に頼れる人もいない。
甘い考えだということはわかってる。
でもまっとうに生きたい。約束を守るために力を貸してほしい。」
そういうと90度に腰をおり頭を下げた。
「覚悟はわかったが、、、
我にそんなことできるとどうして思ったんじゃ?
たかがおいぼれになんでそこまでできると思いなんだ?」
「わかんない。。けれど喝を入れてもらって
あ、、でも本当になんでかわからないけれど。。
甘えてるっていうのもわかってるんだけれど、、
それにあそこまでしっかり叱ってもらったこと、、ないから。。
怖かったけど、、今はうれしかった。。」
そういいながら頭をかいて老婆のほうを見る。
「そうか、、じゃがのう。。この世界でやっていく前に修行でもさせてみようかのう
それで合格じゃった場合は我が面倒見てやろう。
もし修行に断念した場合は我はお前をもう見ることはないがそれでもいいか?
そして厳しいぞ、」
yukitoは修業とはなんだろうと思って聞こうとしたが、
聞いたところで自分には受けないという選択肢はないと理解していた、
大きく深呼吸してから意を決して
「お願いします。修行受けさせてください。やるだけやりたい。。」
老婆の目を見てしっかりと答えた。
老婆は嬉しそうに目を細め、
「じゃあまず身の回りのものはすべて捨ててこい。
この世界とのすべてのかかわりを切ってくるのじゃ。
アパートなどはすべて解約して迷惑が掛からないようにして荷物の処分などしてくることじゃ。
この世にお前の証は残す出ないぞ。
修行に必要なものは我が用意しておくからお前は何もいらない。」
一瞬恐怖を感じた。。この世から抹殺されてしまうということは
命を消されるという意味とも取れてしまうからだ。
でももう逃げられない。。
「。。。わかった・・これからすぐにとりかかる。
すべて終わったらすぐに戻る。よろしくお願いします。」
そういうと大きく一礼をしてから店を後にした。
その後すぐに銀行などを解約して、アパートも引き払い
荷物の処分は大家がしてくれるというので手数料として金を渡した。
そこまでで夜になってしまったため次の朝一に学校に行き退学届けを出し
その足で老婆のもとに向かった。
「ずいぶん早かったじゃないか。その覚悟しかと受け取ったぞ。
じゃあこれからお前に修行という試練を与える。
目を閉じるのじゃ。いいというまで開けてはならんぞ」
言われた通り目を閉じて老婆の次の言葉を待とうと耳に神経を集中していると、
一瞬空気が変わり温度もなぜがわからないがどこか違う場所に移動したような感覚がした。
「目を開けてよいぞ、今日からお前はここで暮らすのじゃ。
悪事に手を染めるでないぞ
他人のために生きてみるのじゃ。
生きていくための殺生は許す。
お前の本質を見つめる試練じゃぞ。」
そういうと一つの鞄を渡された。
「必要最低限のものが中にある。
この世界では前の身分証が使えないので代わりのものを入れてある。
それと鞄は無限に物を収納することができる。
この世界は便利でもあるが不便なところでもあってな
家電などないかわりに保存ができるようになっておる。
氷だって水だってそのまま入れられるが混ざり合うこともないので安心せい。
取り出すときは必要なものを思い浮かべれば出てくる。
入っていないものを思い浮かべても無理じゃがな。
おまけでもしほかの奴に盗まれても戻ってくるようにしてあるから安心せい。
何か質問はあるか?」
「あの、、いったいここはどこでしょう?」
目の前には自然豊かな森があり、草原があり。。
文明が現代よりかなり遅れた世界にきてしまったというのがいいのかもしれない。
横には一軒家がぽつりと置かれている状態である。
高台のようになっている場所のため道の先のほうに街のようなものが見えた。
「異世界じゃな、だがお前はしっかり生きとるぞ。
あの世ではないから安心せい。
まあ現代っ子じゃったらゲームというものが普及していただろう
あんな世界に近いといえばいいじゃろう。」
「剣と魔法の世界ってやつか?中二房が現実に。。
え、、でもおれ何して生きていけば。。
ギルトとかあったりするんですか??」
「もちろんほら、あそこの街にあるぞ。
まああとはステータスは念じれば目の前に出てくる。
お前にはギフトをやろう。チートとでもいうかな
ただしここでやってもらいたいことがある。
孫娘の集めるものを探し、または作り出すことがお前の仕事じゃ。
そのためにお前には錬金の能力だけは最高値にしておいた。
それと魔眼能力としてすべての成分やステータスを見れるようにしてやる。
そして嘘偽りなどもわかる。
錬金と鑑定スキルは対になっているので普通のものでは見えるのじゃが
鑑定スキルでも見えないものも見えてしまうため発言には気を付けるのじゃ。
決して二つが最高値であることは教えるでないぞ。
それも修行の一つじゃ。
偽りのステータスをまず見せてやろう。」
そういうとyukitoの目の前に文字が現われた。
ゲームでよく見ていた表によく似ている。
名前:
年齢:20
レベル:10/20
HP:100/D
MP:100/D
運動:C
知性:E
運:D
職業:錬金士 レベルC
特殊スキル:【鑑定】 レベルC 【回復魔法】 レベルD
レベルとしては普通でどこにいてもおかしくないようなものに思えた。
レベルの表示は10が現在で20が限界値を表していて
HPやMPは体の状態で100%を表し実際のHPとMPのレベルはDというものらしい。
比べる相手がいないのでわからないがゲーム感覚では村人だろう。。
だがなぜか名前がない。年も違う。。
「名前がないんですけれど。。」
「名前は好きな名前に変えてもいいし、そのままでもいい。
こっちは貴族以外はファーストネームしかないからのう」
少し考えてみた。ここからスタートではある。。だが・・
「名前はyukitoのままでいい。変えちゃいけない気がする。
今までのことも忘れないように、繰り返さないように」
老婆はにやりとして
「よかろう。年齢はまあきりがいいから20にした。
元の世界の成年である方が動きやすいじゃろう。
まあこっちでは18からが成年じゃがな。
それと本物のお前のステータスを自分で見てみるがよい。」
そういわれステータスと念じてみると目の前に先ほどと全く違う内容のものが現われた。
名前:yukito
年齢:20
レベル:99/∞
HP:100/S
MP:100/EX
運動:C
知性:EX
運:EX
職業:錬金士 レベルEX
特殊スキル: 【HP・MP自動回復】レベルEX 【魔眼】レベルEX 【聖・光魔法】レベルEX 【危険察知】レベルEX 【?】【?】
完全にチートだった。これは他人に知られては使われるというのがよくわかる。
そして名声を得ようとすればできるということも理解した。
これもまた試練なのだということも・・・
表示されないスキルは今後の生き方で取得するものが変わるらしく
今は使えないということである。
その後老婆は能力の使い方を一日かけて伝授をした。
とても面倒見がいい老婆である。
修行なのにもかかわらずすぐに能力の暴走でばれるとそれは厄介だということだったが、
それにしてもここまでしてもらえるのだからしっかり生きていこうとyukitoは老婆の指導をされながら心に誓った。
「言い忘れたが、お前は戦闘には一切向いとらん。
だがこのさき仲間をができるじゃろう。
そいつらのために知恵を絞れそして力を使え。
お前のために力を使うでない」
そう言い残すと老婆は一瞬のうちに姿を消してしまった。