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店の奥の部屋では未だに無くして絶望と途方に暮れているayaがいた。
泣きつかれたのもあり力が出ない。とふと部屋の扉が開いた。
そこには女の人が立っていた。先ほど部屋に隠れるように言ってくれた女性だ。
顔を見る余裕がなかったが、絶世の美女ってこういう人を言うのだろうと見とれてしまうくらいの人だった。
20代半ばくらいなのか女性の自分からしても憧れるというよりドキドキしてしまう。
「もう大丈夫よ、ソファに座って、お茶でも飲む?
名前聞いてなかった、なんて呼んだらいいのかしら?」
とても優しく癒されるその声に一瞬ほっこりしたのだが、
自分がカギをなくして探し床にぺたんとお尻をついた状態で呆然としていたことを思い出し我に返った。
「私探さなくちゃ、逃げなくちゃ」
慌ててその場から立ち去ろうとするayaを女性は制してソファに座らせる。
「大丈夫よ。あなたはまず落ち着きましょう。あなたの状況は理解してるつもりよ。
それに悪い方向にはいかないわ。
あなたが探しているものはこれでしょ。」
そういうと女性はayaにロッカーキーを渡した。
ayaはそれを見てやっと落ち着いたと同時に涙があふれてきた。
「怖かったね、つらかったね。あなたは初めて自分の意志で行動できた。
頑張ったじゃないの。そんなあなたに少しだけお手伝いしてあげるから
安心して頂戴ね。」
女性は泣きじゃくるayaの背中に手をまわし抱きしめ頭をなでながらそうやさしく告げた。
なぜか安堵感がわいてきた。なぜなんだろう。初めて会う人なのに何も知らないはずで何の根拠もない言葉に助かるんだと思えたayaだった。
「今日はここに泊っていきなさい。
おうちの人には友達のところに泊ると連絡してね。心配させないようにしないとね。
ここのものは好きなように使っていいからね。
私はこれから外出するからお留守番しててほしいのよ。
私が帰ってくるまでお店のほうにも行かないで外にも出ないでね。
人が声かけても無視して扉にカギをかけておいてね。
約束してほしい。魔がさしたりしないでね。
後悔するし、私をがっかりさせないでね。」
女性のその言葉に大きく一つ頷いた。
なぜかこれで助かる気がしてくるのは不思議だった。
すぐにポケットからスマホを取り出し母親に外泊のことを伝えると
迷惑かけないようにするのよと言われるだけで反対されることもそれ以上聞かれることもなかった。
「それじゃあ私は出かけるわね。
冷蔵庫の中身は遠慮なく食べてもらっていいし、シャワーもって
細かく言わなくてもいいわね、とにかく我が家のように使ってちょうだい。
じゃあ行ってくるわね、ayaちゃん。」
軽く手を振られ振替してから
(あれ、私名前教えたっけ?さっき家に電話したときに名前を聞いてたからかな。
まあいいか、でも私のほうがおねえさんの名前きいてないや。。
帰ったら聞いてみよう)
そう思うとお腹の音がなり空腹だと気付き冷蔵庫に向かうのでした。