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家出してきた王女さまを[かくまう]ことになりました。  作者: くろめ
第三章第一編『未知との遭遇(いろんな意味で)』
47/55

否。誰より「個」としてのあなたを

    ☆★☆


 ライフェリス。

 ライフェリシア。


 レイル。

 レイリア。


 レイリア=L=ライフェリシア。


 ワタシは王女様ではなく『レイリア=L=ライフェリシアを』見ている。


 あなたは何故そんなに愛しいの。

 何故、ワタシをここまで引き寄せる。


 吸い込まれるようなその瞳。

 民を引き寄せるその言葉を発する唇。

 それでいて時折出る適当な言葉。ええ、ワタシは知っています。

 脱衣の音だけでなくお風呂で背中を擦っている音は特にお気に入りで、レコーダーで毎日聴いていますよ。設置と取り外しにはだいぶ手間取りましたが。

 公開食事の際に残された食品に付いた唾液を取り込もうかと思ったんですが、残念ながら、お残しすることも全くないようで。それに、回収されてしまいますし。仕方ないので落ちた髪を集めてワタシの食事に混ぜる程度に留めています。先日小瓶では収まらなくなったので使うのも良いでしょう。

 あなたが望むことは全てお見通しです。あなたは大衆からの眼差しを好んでいませんね? レイリア=エル=ライフェリシアを見ているのではなく、あくまで『王女』というレッテルだけを尊び愛しているその視線を、好むはずがない。

 幼い頃からずっとずっと貴方だけを見てきましたが貴方の個性を尊重する者は誰もいなかった。大衆と呼ばれるクズ共は皆レイリア=エル=ライフェリシアの気持ちなど度外視して「王女の言葉」のみを大切に扱った。

 それが私にとっては苦痛で仕方がなかったんです。


 だけど、今は違うみたい?

 レイル。貴方は今、王室には居ませんね。そうでしょう?


 分かりますよ。ワタシには。

 あなたの部屋にもレコーダーを仕込んでいましたが、あなたの独り言を最後に音声は途絶えていましたから。


 王様は『病のためしばらく自室にて過ごしている』なんて公に発信していたけれど、それも大嘘だって直ぐわかった。


 レイル。


 あなたは今、この地上のどこにもいない。

 声の一つも聞き取れなければ、匂いの一つもない。


 一体、どこへ行ったというの?


 ワタシを置いて。

 ワタシに目もくれず。

 ワタシに一言の相談もなしに。


 この星を巡り巡ってみたけれど、影も形も一切有りはしない。


「この国より平和な星があるのなら」


 あなたのその独り言が真なのだとしたら、別の星に居るのが答えなのでしょう。


 この星が居心地の悪い場所だとするなら、今、ワタシがやるべきことは何でしょうか。


 それは、この星を――。


「……! メグリ=フォン=スピリアータ……お前!」


 さて、レイル。

 あなたのための支配を始めましょう。

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