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家出してきた王女さまを[かくまう]ことになりました。  作者: くろめ
第三章第一編『未知との遭遇(いろんな意味で)』
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11 魔術と科学。

「……ぬぅ」


 数多な飛行隊からの攻撃を逃れることは容易ではない。回避行動を取るなど以ての外。

 見えただけでも五、六体。こやつら全てがやれ爆発物だとか、火炎放射やら、爆弾やらをワシに浴びせにかかったのだから堪ったものではない。


 しかし、計算が甘いというもの。


 このような直接的な攻撃であれば、魔術障壁を作れば対応も容易というもの。一切触れられた感覚すらないほどに守り切ったわい。

 自分が魔力を練られる身でよかった。


 ……しかし、この男はなんなのじゃ。

 レイル様が目的か? それともここの蔵書か?


 ……視えぬ。

 あってはならぬ存在であるがゆえ、か……。


「何をそんなに焦っているんだい?」

「ぬ……」

「君らしくないじゃないか。話に聞いた限り、予言を扱う魔術師とか」

「予言だけがワシの戦術ではない。少々不意を突かれただけというもの」


 強がりを見せたが……油断すればワシでも無事では済まされん。

 相手のペースに呑まれてしまえば、いくら有利な相性であっても敗北も考えられる。


 特に、己が今まで武器としてきていた予言が使えない状況なのだ。

 注意して戦わねばならん。


「貴様の目的はなんじゃ」

「目的? それを話すためには、君には魔術武装の一切を解除してもらわなきゃなあ。身の安全が保証されないことには話すわけにもいかない」

「ならば、おぬしも飛行隊とやらを止めてもらおうか。というか、障壁ぐらいは付けていても構わんじゃろて」


 あ、確かに。と言いたそうな顔をするでない。こちとて命がけぞ。


「ああ、うん。僕も身を守るバリアは張ってるし、おあいこかな?」

「はぁ……おぬし、結構面倒と言われんか?」

「友達はちょっとならいるけど?」

「そういうこと言っとるんじゃないわい!! やっぱり面倒くさいじゃないかアホ!!」


 完全に相手のペースに呑まれておるな……いかんいかん。

 じゃが飛行隊は止まった。とりあえず攻撃される心配はなくなったと考えよう。


「僕も蔵書を傷つけたくはないからねえ。折角別の世界から来たんだから」

「やはりこの世の存在ではなかったか……いや待て。どうやって来たというのじゃ」

「どうにかなるものだよ。科学ならね」


 やはり只者ではない。

 科学も魔法学も底が知れている。

 各々が足りない部分を補うことが出来るという意味で、それぞれに強みがある。

 戦いにおいては魔術のが有利に働く局面は多いので少し油断しておった。


 恐らくこやつは類稀な天才じゃ。

 何十年、何百年、あるいは何千年かに一度急速にその分野を発展させることができる逸材。

 王の側近の祖父……フォリエル=ヴァルターニュや、地球学を学んだ際に見たアルベルト・アインシュタインのような、あんな天才と見て間違いはない。


 世界の壁をさらりと抜けられるような人間なぞ、何千年かに一度の逸材じゃ。

 魔術でそこまで成し遂げた者を聞いたことはない。

 見たところワシよりも年下なのではないか? 12、13……?


 更に小さくも捉えられるが、考えたくはない。

 そも、年齢についての認知や寿命も異なっている可能性はあるじゃろうが……。


「ほんで、何故こんな世界に」

「ちょっぴり頼まれごとがあってねぇ。それと、僕の世界が少しピンチだから資材集めも兼ねて」


 ふむ。こやつが元々生きていた世界は一体どんな場所だったのか。世界そのものが大変な状態となると、何が起きたのかが気になるところではあるが。


「頼まれごと……他にも誰かが来ているということかいな」


「どういう訳だか、僕が必要なことがあるみたいでね。具体的でないことを話すことはできないけれど、今はまだ君たちには関係ないことさ。そして頼まれている以上、依頼人が居るという事に間違いはないね」


 むぅ。釈然とせんな。

 納得がいくほど明確な解ではないが、影響がないことであるなら障害にもならぬ……か――。


 ――待て。それなら……。


「ワシらが戦う理由など微塵もなかったわけじゃな」

「そういうことさ。君が全部勝手に焦るから起きたこと」

「じゃが、明らかに殺そうとしたじゃろ」

「甘いね。ホログラムだよ」

「なっ……」


 飛行体がない!?

 それどころか、焦げ跡や燃え残りも……。


「――なるほど、まやかしだったとは」

「悪役になるならとことん演じるよ。面白いから。本気でなったりはしないけれどもね」


 『さようなら』などと妙に気取った言い方をしたが、それにも合点がいったわい。

 本気ではなくて、彼としては演技をして遊んでいたと。そういうことか。

 一本取られたわ。少し腹が立つが仕方ない。


「この地下に何故潜んでいたのじゃ?」

「潜んでいたというより、僕もさっき来たんだけどね。マンホール伝って」

「汚水男め……ばっちいぞ。後で風呂でも借りい」

「何も下水とは言ってないだろう!? まあいいや、家主の星野君に借りるとしようか」


 ひっそりと減臭の魔術を使わせてもらおうぞ。

 近づかれては鼻が曲がる可能性もあるじゃろうからな。


「お主にはまだ聞きたいことが山ほどあるからの。上へ行こうぞ」


 さらりと「構わないよ」と返事をされたが、ワシが勝手に決めていいことやら……。

 まあ、ルオンなら許してくれるじゃろ。


 ――……ああ、呆れておるな。まあいいわい。

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