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家出してきた王女さまを[かくまう]ことになりました。  作者: くろめ
第二章『Magic Nightmare.(まじないとまれ。)』
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【短編】王女さまに教育を。《掃除機編》

 王女さまというのはあまりにも世間知らずなものだと思う。


 このレイルという王女もその例に漏れず、一般人が所有しているべき知識の一部が欠落してしまっている。ご飯の作り方から家事全般までの方法や物に関するものが主だろうか。


 この内、特に家具の知識は皆無に等しいだろう。


 例えば掃除機は何をするものか、常識の下で生きている人々ならば当たり前のように知っているし、扱うことができる。

 しかし彼女は違う。

 胴体部分の電源コードをなんとか探し出してコンセントに挿すまでは良いのだが、その先は頓珍漢だ。

 電源を点けるなり剣の構えを取り気持ちいっぱいにブン回す。


「武器とは違いますか?」


 ええ、違います。掃除機です。

 確かにノズルの部分を利用すれば相手に些細なダメージを与えることは容易だろうが、何十発も与えられるほど強固ではない。プラスチックだから、プラスチックですから。

 それに力いっぱいぶん回したらノズルの行く先の胴体がガタンガタン揺れる。滅茶苦茶邪魔だ。武器として使うには甘い部分が多すぎる。


 少し詰めが甘い答えだったが、それなりに面白い回答を得られたと思う。


 次に彼女は電源を点けた後、床にノズルの先をあてがった。

 お、正解来たか? と思ったが流石は世間知らずだ。そう甘くはない。


 その後持ち手を両方の手で掴んで床と垂直になるように持ってしまう。


「……工事現場の視察で見た気がします」


 それコンクリート砕く奴だよね!?

 仮に合ってたとしたら砕きに砕いて家ぶっ壊れる点を考慮してほしかったけど……というか儀礼に工事現場の視察なんてあるの!? 何でそんな些細な所にまで着目してんの王族視野広っ!!

 しかもよりによって砕く部分見てたこと覚えてるってなかなかニッチな所攻めてるな! 普通交通整理かブルドーザー辺りなもんでしょう!? 無いの!? ライフェリスにブルドーザーないの、ねぇえ!!


 ……という思いを精一杯眼力で伝えたら通じてしまったようで、再び長考が始まる。


 やがて機械のノズルが放つ吸引力とノズルを取り外せることの二つに気がついたのだが、それを見て「搾乳機では?」などと衝撃的な一言を発したのはここだけの話に留めておこう。


 そうして何度か間違えている内にようやく掃除用具という事実に気付いてくれたので安心と言えば安心することができた。だがはっきり言って掃除機を知らなくても雰囲気で何となく分かるものだと思うのだが、彼女にとっては相当な難題だったらしい。


 お姫さまって大体こんなんなのかな。いや、多分偏見だろう。そうであってくれ。

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