0 ナイトメア
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――力をください。
貴方がどこの誰なのかは存じません。けれど、貴方が一つだけ願いを叶えてくださるのなら……。
あの憎きまじない師を討つ術を。
一度だけでもいい、寿命を削ったっていい。
初めて感じたこの屈辱を晴らすために、そして何よりレイル様を守るために。
あてくしに出来ることはただ一つ。
――力を得ること。
今貴方がここに居るのは何かの縁。
まるで魔法のような力を持った貴方が願いを叶えてくださるなら……。
きっとレイル様に安息の時間をもたらすことができるのです。
どうか、どうかお願いします。
「馬鹿ね。貴方は……」
銀髪の少女の持つ巨大な槍。
命を削ぎ落とさんとするその鋭さに、思わず逃げ出したくなってしまう。
けれどここでは身体が動かない。
まるで宇宙のような空間で泳いでいるかのような場所。
どうして自分がここにいるのか、どうして見知らぬ少女に願っているのか。
そして、何故自分に矛先が向いているのか。
分からない。何も判らない。
全ては無意識で無感情。
自分の身体なのに、第三者のものであるかのような不可思議がここにある。
為す術など無い。やがて槍は私の胸を貫いた。




