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家出してきた王女さまを[かくまう]ことになりました。  作者: くろめ
第二章『Magic Nightmare.(まじないとまれ。)』
21/55

0 ナイトメア

    ☆★☆


 ――力をください。


 貴方がどこの誰なのかは存じません。けれど、貴方が一つだけ願いを叶えてくださるのなら……。


 あの憎きまじない師を討つ術を。

 一度だけでもいい、寿命を削ったっていい。

 初めて感じたこの屈辱を晴らすために、そして何よりレイル様を守るために。

 あてくしに出来ることはただ一つ。


 ――力を得ること。


 今貴方がここに居るのは何かの縁。

 まるで魔法のような力を持った貴方が願いを叶えてくださるなら……。


 きっとレイル様に安息の時間をもたらすことができるのです。


 どうか、どうかお願いします。


「馬鹿ね。貴方は……」


 銀髪の少女の持つ巨大な槍。

 命を削ぎ落とさんとするその鋭さに、思わず逃げ出したくなってしまう。


 けれどここでは身体が動かない。

 まるで宇宙のような空間で泳いでいるかのような場所。


 どうして自分がここにいるのか、どうして見知らぬ少女に願っているのか。

 そして、何故自分に矛先が向いているのか。


 分からない。何も判らない。

 全ては無意識で無感情。

 自分の身体なのに、第三者のものであるかのような不可思議がここにある。


 為す術など無い。やがて槍は私の胸を貫いた。

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